目黒区議会「24年第3回定例会」本会議一般質問(9月4日)で、羽田新ルートに関して、斉藤優子議員(共産)の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、テキスト化(約2千500文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
斉藤優子議員(共産党、区議2期、会社経営、川村短大卒、55歳)
斉藤:国に対し「新ルート撤回せよ」と言うべき
大きな4点目、「区民の命と安心して暮らせる住環境を守るため、羽田新ルート撤回について」です。
今年7月29日、私は羽田低空飛行見直しのための議員連盟総会に参加をしました。議題は、固定化回避検討会が2年間一度も行われていないこと、検討会が開かれていない理由、新ルートによる増便の効果、以前から住民側が求めていた従来ルートでの運用による実績資料の提出などです。国交省航空局首都圏空港課の環境企画調整室長らも出席し、報告と質疑が行われました。
国交省が発行している「羽田空港のこれから」の資料には、海上ルートでは1時間にあたり82回が限界であるため、羽田新ルートが必要だと説明してきました。今回参加した総会では、羽田新ルートの時間帯と従来ルートでの1時間ごとの離発着の運用実績の資料が配られました(筆者注:次図)。海から入って海から出る従来ルートで1時間82回が限界だと説明を受けてきましたが、1時間あたり83回から95回まで運用できていることが分かりました。
「国交省ロジックに綻び!? 従来ルートでも離発着「90回/時」以上の運用あり」より
以上を踏まえて、2点質問します。
(1)落下物について、区は国交省に説明を求めたか、についてです。
国交省が作成した「羽田空港のこれから」の資料には「落下物はない」としてきましたが、今年3月27日に提出された我が党の宮本徹衆議院議員の質問主意書の答弁で、羽田空港において報告された着陸後の航空機の機体確認等で判明した部品欠落件数は、2021年から2024年までの4年間で1,798件あったことが明らかとなりました。
また、全国の落下物の中には1キロ以上の落下物が42件あり、一番重いものでは97.3キロもありました。1キロでも上空から部品が落ちてきたら大惨事となり、絶対あってはなりません。区は落下物について、国交省からの報告、または国交省に働きかけ、今回明らかとなった落下物の状況について説明を求めてきたのかについて伺います。
(2)国に対し「新ルート撤回せよ」と言うべきについてです。
青葉台4丁目の区民からは「今年3月下旬頃から羽田新ルートによる騒音が激しくなっている」という声、下目黒3丁目の区民からは「騒音で精神的におかしくなりそうだ」という声、目黒4丁目の区民は「事前に示されたルートとは違うルートを飛んでいてうるさい」と、様々な声が区議団に寄せられています。
視覚障害者のある方は、目の代わりである町に溢れる様々な音を聞き分けていることを奪われ、乳幼児は騒音によって精神的に不安定になります。落下物や騒音から区民の命と財産を守るため、「国に対し新ルートは撤回せよと言うべきではないか」について伺います。
以上、壇上からの質問を終わります。
区長:国に対して区が撤回を求めることは考えておりません
青木英二 目黒区長(6期、慶応経済卒、元区議⇒都議、69歳)
次に、第4点目、区民の命と安心して暮らせる住環境を守るため、羽田新ルートの撤回についての第1問、落下物対策について、区は国土交通省に説明を求めたかについてでございますが、区は国土交通省を交えた羽田空港に関する関係自治体の連絡会を始め、必要に応じて国土交通省と個別の会議を開いて、落下物対策等の徹底や必要な説明を求めたところでございます。
まず、国の報告による「部品欠落数」と「落下物」の違いをご説明いたします。
令和5年度の部品欠落数ですが、羽田空港を含む国内7空港で1,283個と報告されております。これは、落下した部品の数ではなく、空港到着後、航空機の点検において機体の部品がなくなっていることが確認された数指しております。
一方、落下物は空港を除く地上で発見された機体の部品または氷塊を指しております。こちらにつきましては、新飛行経路の運用を開始した令和2年3月以降、落下物として確認されたものはないとの報告を受けているところでございます。
航空機からの落下物対策につきましては、2018年に国が取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」に基づき、世界的にも類を見ない落下物防止対策基準を設定し、本邦の空港会社、航空会社及び日本に乗り入れる外国航空会社に対して落下物の防止対策を義務付けております。
こうした国の落下物対策に関して、区といたしましては一定の評価をしているところではございますが、基準や対策が適正に運用されているかが問題であると認識しております。このため、国からの報告を受ける際には、落下物対策の点検体制や再発防止策などを国としてどのようにチェックしているかを確認しているところでございます。
区といたしましては、航空機の落下物対策は、新飛行ルート直下となる目黒区にとっては極めて重要な問題であると認識しておりますので、今後も引き続き機会があるごとに国土交通省に対し、対策の徹底を求めてまいりたいと存じます。
次に、第2問、国に対し羽田空港の新飛行経路、いわゆる新ルートを撤回せよと言うべきについてでございますが、新飛行ルートの運用は将来的な航空需要の拡大を見据えた、我が国の国際競争力の強化を図るため、国の責任と判断で行われているものでございます。
新飛行ルートは、南風が吹いている日の15時から19時のうち3時間程度を上限として運用されており、目黒区上空を空路としております。従来、飛行ルートの拡大につきましては、国は安定した運用が困難であることから、新飛行ルートの活用が不可欠であるとの認識を示しております。
区では、区民生活の安全・安心の確保は全てに優先することと認識しており、区に寄せられた区民の声を国に伝えるとともに、これまでも落下物対策の徹底、騒音低減に向けた配慮、迅速で丁寧な関連情報の提供、新飛行ルートの固定化回避検討会や区民向け説明会の開催などを国に求めてきたところでございます。
今後も機会を捉えて、国に対して丁寧な情報提供と騒音・落下物防止対策の着実な実施を要望してまいります。
新飛行ルートの運用に関しましては、将来にわたり我が国が国際競争力を持ちながら持続的な発展を続けていくために、国の責任と判断によって行われているものであり、国に対して区が撤回を求めることは考えておりません。
以上、答えとさせていただきます。
雑感(原稿棒読みの耳タコ答弁)
目黒区議会定例会でこれまで、羽田新ルート問題を積極的に取り上げているのは斉藤優子議員(共産党)だけ。孤軍奮闘されていることに敬意を表したい。
※「20年第2回定例会」本会議一般質問(6月17日)で、鴨志田リエ議員(無所属)が取り上げている。
これに対して、区長からは今回もまた、役人が作成した文書を棒読みするだけ。
他の区議会でもよく聞く「我が国の国際競争力の強化を図るため、国の責任と判断で行われている」といった耳タコ答弁。
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