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不動産会社、広告にどの程度お金をかけているのか【中堅7社編】

不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。

大手5社については先日、分析結果を紹介した。

本日は中堅7社の分析結果を紹介しよう。


もくじ

東証1部上場の中堅7社

中堅の不動産会社は広告にどの程度のお金をかけているのか。

不動産経済研究所が21年2月24日に発表した「全国の20年事業主別の発売戸数トップ20」のうち、大手5社(野村、住友、三井、三菱、東急)を除いて、東証1部上場している次の7社について可視化分析することにした。

※順位は20年の全国発売戸数ランキング。( )内は同年発売戸数。

  • 1位:プレサンスコーポレーション(4,342戸)
    オープンハウス・グループのマンションデベロッパー

  • 5位:エスリード(2,151戸)
    森トラストの連結子会社。近畿圏を中心に、「エスリード」ブランドで分譲マンションの販売を行っている。

  • 6位:あなぶき興産(2,073戸)
    香川県高松市に本社を置く総合不動産会社。

  • 12位:タカラレーベン(1,382戸)
    マンションを中心とした不動産デベロッパー。

  • 17位:新日本建設(1,232戸)
    千葉市美浜区に本社を置く建設会社および不動産会社。

  • 19位:明和地所(774戸)
    マンション専門のデベロッパー

  • 20位:日本エスコン(760戸)
    不動産販売事業、不動産賃貸事業、不動産企画仲介コンサル事業。21年4月に中部電力の子会社に。

※20位のフージャースコーポレーション(フージャースホールディングス)も東証1部上場だが、広告宣伝費を公開していないので、検討対象から外した。

広告宣伝費率、日本エスコンの16年度4%が最も高かった

まずは、上記の中堅7社の有価証券報告書から「売上高」と「広告宣伝費」を拾い上げ、広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)を可視化してみる。


過去9年間(12~20年度)の7社の売上高の推移を可視化したのが次図。

プレサンスコーポレーションだけがうなぎ登り状態。20年度で2千500億円に迫るが、大手最下位の野村不動産HD(5千億円超)の半分。

不動産会社(中堅7社)「売上高」推移

【参考メモ】

  • あなぶき興産は6月末決算なので、上図では便宜的に前年度として描いた(たとえば、20年6月末決算は19年度データとして取り扱った)。
  • 日本エスコンは12月末決算なので、上図では便宜的に当該年度として描いた。
  • また、新日本建設は単体でしか広告宣伝費が公開されていないので(連結では公開されていない)、売上高・広告宣伝費ともに単体のデータを対象とした。
  • 以下、同様。

 

過去6年間(15~20年度)の5社の広告宣伝費の推移を可視化したのが次図。

タカラレーベンがダントツだが(20年度約40億円)、大手不動産最低の三菱地所(88億円)の半分にも満たない。

不動産会社(中堅7社)「広告宣伝費」推移
※広告宣伝費は、マンション分譲に限らない。

 

過去6年間(15~20年度)の5社の広告宣伝費率(=広告宣伝費÷売上高)の推移を可視化したのが次図。

日本エスコンの16年度4%が最も高かった。

不動産会社(中堅7社)「広告宣伝費率」推移

プレサンスC・エスリード、広告宣伝費率1%未満(20年度)

上記の広告宣伝費は、会社によってはマンション分譲だけに投下しているわけではない。各社の事業セグメントも念頭に、さらに詳しく分析してみよう。

20年度の中堅7社の事業セグメントをザックリとBtoB(鶯色)とBtoC(オレンジ色)に仕分けてみる(次表)。

不動産会社(中堅7社)の売上高、営業利益・率(20年度)
※あなぶき興産は6月末決算なので、20年度データは空白とした。

上表を元に振り分けたBtoB・BtoC別の売上高と、BtoC率(全売上高に占めるBtoCの割合)を次図に示す。新日本建設は、建設事業と開発事業等(不動産開発全般)の両輪であることから、BtoC率が最も低い(40.2%)。

売上高・BtoC率の比較(20年度)
※あなぶき興産は6月末決算なので、20年度データは空白とした。

 

さらに横軸を「BtoC率」、縦軸を「広告宣伝費率」としてグラフを描いてみた。

プレサンスコーポレーションとエスリードの広告宣伝費率の低さが目立つ(1%未満)

広告宣伝費率とBtoC率の関係(20年度)

 

以上は20年度のデータ。新型コロナの影響がどの程度あったのかも見極めるために、時間軸をもう少し広げて見てみよう。

「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化を可視化

過去6年間(15~20年度)の5社の「BtoC率」「広告宣伝費率」の変化を可視化したのが次図。

「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化 (15~20年度)

上図から以下が言えるのではないか。

  • 中堅7社の広告宣伝費は、売上高の0.1~4%程度とかなりのバラツキが見られる。
  • 大手不動産5社のようにBtoC率が高いほど広告宣伝費率が高くなる傾向があるように見えなくもない(ただし、プレサンスCとエスリードを除いた場合)。
  • プレサンスC
    広告宣伝費率は5社のなかでは極めて低い。しかも年々低下している(0.5⇒0.1%)。

  • エスリード
    広告宣伝費率の低下幅が最も大きい(2.8⇒0.8%)。

  • 日本エスコン
    広告宣伝費率は5社のなかでは大きい(4.0~2.6%)。
  • 明和地所・タカラレーベン
    広告宣伝費率は3%前後。
  • あなぶき興産
    広告宣伝費率は1.5~1.7%。BtoC率が低下傾向(人材サービス関連事業や介護医療関連事業などの多角化を図っている。ただし営業利益の大半は不動産関連事業)。
  • 新日本建設
    建設事業と開発事業等(不動産開発全般)の両輪なこともあり、広告宣伝費率は低い(1.3⇒1.0%)。

あわせて読みたい

大手5社の場合:

「BtoC率」「広告宣伝費率」の経年変化 (15~20年度)

不動産会社、広告にどの程度お金をかけているのか【大手5社編】」より

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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