赤羽大臣肝いりの「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」第4回目が昨日(8月25日)開催された。
同日夕刻、国交省HP「羽田空港のこれから」に同会議の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
※投稿21年8月26日(追記21年9月15日)
国交省、今回もこっそり公開
赤羽大臣肝いりの「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の第4回目が昨日(8月25日)開催された。同日夕刻(18時55分)、国交省HPに同検討会の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
普通の人はまずアクセスしない「羽田空港のこれから」のトップページの「お知らせ」欄に、8月20日の日付はそのままで、見出しの後ろに、カッコ書きで「 8/25 配布資料を追加掲載しました」と追記されているのである(次図、ピンク囲み)。これでは羽田新ルートに関心のある人でも、気づくことは難しい。
第4回検討会の情報は国交省HPの新着情報にも掲載されず、航空局のページに掲載されているだけなので(同局の新着情報にも掲載されていない)、羽田新ルートに関心の高い人でも「第4回 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」のページ(次図)にアクセスすることは難しいだろう。
技術的選択肢となり得る2種類の飛行方式
前置きが長くなった。
8月25日に公開された資料(PDF形式)は次の5つ。
※議事概要は、まだ公開されていない(8月25日現在)。
- 議事次第
- 【資料1】各飛行方式の検討について
- 【資料2】技術的検証の項目について
- 【資料3】出発における騒音軽減方策について
- 【資料4】今後取り組むべき課題について
かなり専門的な内容なので、門外漢には分かりにくい。まだ議事概要が公開されていないので、配布資料から分かることを中心に一般の方にも理解できるよう、できるだけ分かりやすく説明しよう。
キーになるのは、資料1(各飛行方式の検討について)に掲載されている「各飛行方式の対応策整理表」(P8)。
資料1には、羽田新ルートの固定化回避に向けた技術的な選択肢として、前回(第3回)の検討会で12種類から絞られた6種類の飛行方式が一枚の表にまとめられている。うち今回はさらに2種類に絞られたのである。
コンパクトにまとめられているが、専門用語が多いので門外漢が理解するのは難しい、というか難しい内容を難しく伝えて煙に巻こうとしているのではないのかと勘繰りたくなるほどだ。
極めて簡単にいうと、6種類の飛行方式のうち、固定化回避の実現に向けた技術的選択肢となり得る2種類の飛行方式が選定されたということなのだ。「羽田への導入可能性」として次の2種類が記されている。
⑤RNP-AR
- 適
対応率向上など中期対応⑨RNP + WP
- 適
短期で国内基準策定等が可
難しい内容を分かりやすく伝えるために、資料1に加筆してみた(次図)。
緑色の線で囲んだ部分は、固定化回避の実現に向けた技術的選択肢となり得ると判定された2種類の飛行方式だ。
(資料1に筆者が加筆)
2種類の飛行方式は、それぞれ米国の国際空港(ロサンゼルス空港、ニューヨーク・JFK空港)で運用実績があるとされている。
2種類の飛行方式を羽田新ルートとして適用するとどうなるのか?
2種類の飛行方式も少なくとも品川・大田区上空を通過することは免れない。第2回技術的方策検討会(20年12月23日開催)の公表資料をもとに筆者が20年12月28日にブログに投稿した記事「現状の羽田新ルートに技術的選択肢を適用してみた」をご覧いただきたい。以下、同記事を抜粋。
3つの国際空港で運用されている曲線経路につき、縮尺を合わせて、現在の羽田新ルートに機械的に重ねてみた(次図)。
「ニューヨーク・JFK空港」と「ラガーディア空港」で運用されているような曲線経路であれば、都心低空飛行を避けることは不可能ではないということになる。
※下図の米国3ルートは、あくまでも曲線経路の可能性を示したのであって、米国3ルートのいずれかが実現するという意味ではないことに要留意。
北風時の荒川沿い北上ルートは固定化!?
資料3(出発における騒音軽減方策について)からも重要な情報が読み取れる。
「出発における騒音軽減(騒音軽減出発方式)」として、3つの方式(①急上昇方式、②NADP1、③NADP2)につき、「今後、実績を元に分析・検証を実施し、最適な手法を選定する」とされている(次図)。
また、「出発における騒音軽減(高い航法精度等の指定)」として、「RFレグを用いた出発方式について、今後、技術的な課題等を検討する」とされている(次図)。
「出発における騒音軽減方策について」技術的に難しいことが記されているが、問題の本質はそこではない。重要なことは、北風時の荒川沿い北上ルートは固定化回避の対象になっていない可能性があること。
江戸川区民らが影響を受けている荒川沿い北上ルートは、南風時の都心低空飛行ルートの比ではないことはあまり認識されていないのではないか(次図)。
「羽田新ルート|国交省の「定期運用報告」を可視化」より
江戸川区民は、この荒川北上ルートだけでなく、従来の南風・悪天時の着陸ルートの飛行騒音の影響も受けている。
今後のスケジュールは?
資料4(今後取り組むべき課題について)によれば、2方式について、今後、羽田空港への導入に際して取り組むべき課題として、次の5項目が掲げられている(次図)。
- (1) 安全性評価における技術的検証の項目(RNP+WP、RNP-AR)
- (2) 同時進入に係る基準(RNP+WP)
- (3) 同時進入に係る基準(RNP-AR)
- (4) 運航ルールに係る海外事例を元にした検討(RNP+WP)
- (5) 機材・乗員対応率の向上(RNP-AR)
マニアックな技術論が掲げられているが、肝心のスケジュールを示す資料はどこにも見当たらない。これでは固定化回避に係る技術方策検討会は、単なる時間稼ぎであって、騒音などに苦しんでいる市民のための新ルート見直しの実現を目指すものでなはいと思われても仕方がないのではないか。
【追記】「議事概要」について
※9月15日追記
議事概要(A4判3枚)(PDF:245KB)(←リンク切れ)が9月14日19時、公開された。
特筆すべき内容は見当たらないが、あえて掲げるとすれば以下の2点。
1点目は、資料1(各飛行方式の検討について)の議論を踏まえ、今後は2方式について検証等が進められていくことが了承されたこと。
屋井座長より、⑤RNP-AR と⑨RNP+WP の2つを、羽田空港への導入へ向け具体的な検証等を進めていく方式として選定して良いかとの確認がなされ、一同了承。(P2)
2点目は、文章に校正ミスが含まれていること。
議論したていくことが必要。
配布資料が公開されたのが8月25日で、議事概要が公開されたのが9月14日。2週間近くを費やして議事概要に校正ミスが含まれているなんて。委員はともかく、最終的なチェックを担う国交省の担当者やその上司の目は節穴なのか。これでは文書全体の品質が疑われてしまうのではないか……。
※21年9月15日
誤字による正誤表が掲載された。
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