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現状の羽田新ルートに技術的選択肢を適用してみた

赤羽大臣肝いりの「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」第1回目が開催されたのは6月30日。あれから半年が経ち、ようやく第2回目が12月23日に開催された。

国交省HPで12月25日にコッソリと公開されていた技術的方策検討会の資料をひも解き、羽田新ルートに技術的選択肢(飛行方式)を適用してみると……。


もくじ

国交省、隠密作戦展開中…

国交省の12月11日の報道発表では23日開催の第2回羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会の「議事要旨等については、後日、国土交通省ホームページにて公開します」とされていたので、関係資料が公開されるのを待っていたところ、なんと25日に配布資料がコッソリと公開されていたのである。

普通の人はまずアクセスしない「羽田空港のこれから」のトップページの「お知らせ」欄に、12月11日の日付はそのままで、見出しの後ろに、カッコ書きで「 12/25配布資料を追加掲載しました」と追記されているのである(次図、赤下線部分)。これでは羽田新ルートに関心のある人でも、気づくことは難しい。

お知らせ

 

この情報は国交省HPの新着情報にも掲載されず、航空局のページに掲載されているだけなので(同局の新着情報にも掲載されていない)、羽田新ルートに関心の高い人でも「第2回 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」のページ(次図)にアクセスすることは難しいだろう。

羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会

12種類の飛行方式、米国3つの国際空港の運用事例

前置きが長くなった。

12月25日に公開された資料(PDF形式)は次の6つ。議事概要は、まだ公開されていない(12月27日現在)

  • 議事次第
  • 【資料1】飛行方式類型
  • 【資料2】技術的選択肢(飛行方式)
  • 【資料3】検証に必要となる論点
  • 【資料4】海外調査中間報告
  • 【資料5】今年度の進め方について

かなり専門的な内容が多いので、門外漢には分かりにくい。まだ議事概要が公開されていないので、会議資料から分かることを中心に一般の方にも理解できるよう、できるだけ分かりやすく説明しよう。

羽田新ルートの固定化回避に向けて、技術的な選択肢として12種類の飛行方式の掲げている(資料2)。その12種類の実現可能性を検討するため「検証に必要となる論点」が一覧表にまとめられている(資料3)。一方、海外調査(中間報告)では、米国の3つの国際空港(ロサンゼルス空港、ニューヨーク・JFK空港、ラガーディア空港)の運用事例が紹介されていて、12種類の飛行方式との関係も記されている(資料4)。

言葉だけでは分かりにくいだろうから、資料2を元に12種類の飛行方式と3つの国際空港との関係を整理したのが次図

ポイントは、どの飛行方式が曲線の飛行経路を取り得るかということ(現在の羽田新ルートの到着ルートに曲線を取り入れられる可能性を模索しているのである)

12種類の飛行方式(2)12種類の飛行方式(1)
(資料2をもとに筆者作成)


3つの国際空港では既に、到着ルートにおいて曲線経路の運用がなされている(次図、資料4に筆者がピンクを加筆)。

ロサンゼルス空港ニューヨーク・JFK空港ラガーディア空港

現状の羽田新ルートに技術的選択肢(飛行方式)を適用してみると…

上図で示した3つの国際空港で運用されている曲線経路につき、縮尺を合わせて、現在の羽田新ルートに機械的に重ねてみた(次図)。

「ニューヨーク・JFK空港」と「ラガーディア空港」で運用されているような曲線経路であれば、都心低空飛行を避けることは不可能ではないということになる

※下図の米国3ルートは、あくまでも曲線経路の可能性を示したのであって、米国3ルートのいずれかが実現するという意味ではないことに要留意。

羽田新ルート(現状)に海外事例を適用したイメージ

でも、その実現のハードルは極めて高そうだ

ニューヨーク・JFK空港で運用されているのは、12種類の飛行方式のうちの「⑨RNP進入方式+WPガイダンス付き」。パイロットは進入復行点(進入継続又はやり直しを判断する地点)までに滑走路を視認する必要がある

⑨RNP進入方式+WPガイダンス付き

  • 測位衛星からの信号により自機の位置を計算して飛行し、進入復行点以降は、WP(ウェイポイント)に沿ってパイロットが目視により滑走路に進入する方式。

また、ラガーディア空港で運用されているのは、12種類の飛行方式のうちの「⑪CVA(経路を指定した目視での進入)」。先行の航空機との間隔、地表や地上物件との間隔はパイロットが判断して適切な距離を確保しながら飛行する必要がある

⑪CVA(経路を指定した目視での進入)

  • パイロットが指定された地上物標を経由しながら、手動操縦で、目視により滑走路に進入する方式。

国際基準への適合手続き、パイロットや管制官の訓練のほか、関係自治体や住民への説明会の実施など、いまから始めても数年はかかりそうなことは素人にも分かる

なんだ、羽田新ルートの固定化回避に係る技術的方策検討会がやろうとしていることは、反対派に対するガス抜きだったのか、という疑念

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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