新宿区議会「21年第2回定例会」本会議の代表質問(6月10日)で、羽田新ルートに関して、三雲崇正議員(立憲民主党・無所属クラブ)の質疑応答があった。
ブログ読者がツイッターで公開していた区議会ライブ中継の録画を もとに、テキスト化(約3千500文字)しておいた。
※区議会中継録画は、区議会HPで会議終了後概ね7日後公開される。
※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
三雲崇正 議員(立憲民主)
三雲崇正 議員(立憲民主党、区議2期、東大法・英国エディンバラ大学大学院卒、44歳)
次に、羽田空港新飛行経路の運用状況について伺います。
昨年3月29日から羽田空港における新飛行経路の運用が開始され、1年以上が経過しました。この間、本区にもエンジン音の騒音や低空を飛行することに恐怖心を覚える、落下物等による事故等の安全対策についての苦情や不安の声が区民から多数寄せられました。
こうしたことを受け、区長は昨年6月3日に当時の国土交通大臣宛に5項目にわたる新飛行経路運用に伴う騒音対策及び安全対策等についての要望書を提出しました。
この間、昨年12月4日には那覇空港発日本航空のボーイング777型機が左側エンジンに不具合が発生したため、同空港に引き返すという事案が発生し、さらに本年2月21日には、アメリカでユナイテッド航空ボーイング777型機がデンバー国際空港から離陸直後に右側エンジンから火災が発生し、同空港に引き返す際に機体の一部の大型部品が郊外の住宅地等に落下するという極めて重大な事故につながったと予想される事案が続けて発生しました。これまでも羽田空港において同様のエンジンを搭載したボーイング777型機が運航されていた状況があり、今回のことは今後、新飛行経路等において人命にかかわる重大な事故が発生するのではないかという不安を多くの方々に与えました。
やはり飛行ルートの下は危険であるということが改めて明らかになりましたが、このような事案を受けて、本区としては、まず電話で原因の究明、再発防止策の徹底と情報提供、情報公開について申し入れをし、その後、国の担当官に対面で同様の要請をしたということです。
港区では、こうした事案を受けて国土交通省に対し、区民への丁寧な説明や情報提供を行うこと、他形式のエンジンを搭載した航空機についても同様のことがないよう、安全・安心の確保に万全を期すこと、落下物防止対策基準の確実な運用や評価を行い落下物事故に対する罰則を含めた航空会社への指導強化など、実行性の高い落下物防止対策の検討、今後の航空技術の進展に伴う新たな取り組み、地方空港の活用等による飛行経路の分散化、海上経路の活用など、羽田空港の新飛行経路に係る様々な運用の早急かつ具体的な検討などを文書にて要請しました。
また、新飛行経路については、本格的な運航前から低空飛行直下の地方議会からも容認することはできないとして、これに対する反対の意見書や決議が提出されてきましたが、残念ながら現在のような都心部上空を飛行経路とする形で本格的に運航が開始となりました。しかし昨年6月には新飛行経路直下の住民が国に新飛行経路の運用停止を求めて東京地裁に提訴しました。また、国会においては、羽田新飛行経路見直しに向けて提案をしていくとして、超党派の国会議員による羽田空港飛行見直しのための議員連盟が昨年末に立ち上げられるなど、新飛行経路の見直しを求める声は引き続き上がっています。
現在は新型コロナウイルス感染症の影響で便数の少ない状況ですが、これが収束し、現在の状況から脱した後には便数が増え、区民にどのような影響が出るか分かりません。落下物による事故も同様です。
以下、質問いたします。
問1:要望書、国による回答は?
1点目に、昨年区長が要望書を提出してから1年が経過しましたが、国による回答はどのようになされているのでしょうか。
昨年の環境建設委員会では「必ずしも回答を求めているわけではない」という趣旨の答弁がありましたが、要望したことがどのように検討され、現在はどのようになっているのか、国としての考え方をきちんと示すよう求めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
問2:2件の重大な事故が発生、区民に対して説明するよう求めるべき
2点目に、2件の重大な事故が発生する恐れがあった事案を受け区としては口頭により原因の究明、再発防止の徹底、情報公開を要望したと聞いていますが、人命にかかわる重大な事故につながる可能性があったことから、このような事案への丁寧な説明や、更なる安全対策について、国としてどのように対応するのか、しっかりと区民に対して説明するよう求めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
問3:海上上空を飛行し、離発着する経路へと戻すべき
3点目に、この新飛行経路での運航が開始され、住民の危険度と不安は確実に高まりました。
現在では感染症の影響等により大幅な減便が行われている状況ですが、今後、これが収束したのち、便数が増えれば、区民の不安はさらに増大します。以前のように海上上空を飛行し、離発着する経路へと戻すべきです。
区民の命に対する危険を減らす努力と安全と安心を守るために飛行経路について見直しを求める声を本区から国に対して上げるべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
問4:様々な要望等については、近隣自治体とも連携をして取り組むべき
4点目に、このような様々な要望等については、近隣自治体とも連携をして取り組むべきと思いますが、どのようにお考えでしょうか。以上をご答弁願います。
吉住区長
吉住健一 新宿区長(2期、日大卒、49歳)
答1:区は文書による回答を求めている、現時点ではなされていない
羽田空港新飛行経路の運用状況についてのお尋ねです。
はじめに、区が提出した要望書に対する国の回答についてです。区は、昨年6月に国土交通大臣宛に提出した要望書において、実機飛行確認時の騒音の実測値の平均が大型機、中型機、小型機のいずれも推計平均値を上回っている要因分析とその解決、更なる安全対策の推進、丁寧な説明と分かりやすい情報提供、航空機需要を把握した飛行便数の配慮、新飛行経路の固定化回避の検討の5つの事項について要望をしたところです。
騒音については、昨年5月以降、小型機は推計平均値内ですが、大型機、中型機は上回る月があるため、その要因について、引き続き調査がなされています。
また、更なる安全対策では、過去の落下物事案等を踏まえた落下物防止対策の強化が行われました。
情報提供については、新飛行経路の運用状況をコンパクトにまとめたポスティング広告が1月に配布されたほか、最新の情報が国土交通省の特設ホームページで公開・更新されています。
飛行便数については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う旅客数の減に応じた便数となっており、新飛行経路の固定化回避の検討も継続的に行われていることから、一定程度の対応がされているものと考えています。
なお、区は文書による回答を求めているところですが、現時点ではなされていない状況です。そのため今後も引き続き要望してまいります。
答2:区民に一層の説明責任を果たすよう重ねて要望してまいります
次に、2件の重大インシデントを受け、国に対し、区民への丁寧な説明を求めることについてのお尋ねです。
ご指摘のように区は、昨年12月と本年2月に発生した大型のボーイング777型機のエンジン損傷による重大インシデント受け、いずれの事案についても、直ちに国に対し原因究明、再発防止の徹底、情報の公開について強く要望いたしました。
また、騒音軽減の観点も含め、同系列のエンジンを搭載したこの航空機の早期退役についても粘り強く要望を続けてまいりました。国は安全確保に万全を期すため、同系列のエンジンを搭載した航空機について、現在も運航停止の指示を継続して出しています。
そうしたなか、日本航空が2021年度中に退役予定であった7機を2020年度中に退役させるなど、一定の対応が図られたものと考えています。
国は重大インシデントが発生した際は発生直後に第一報を、その後に対応状況等が分かり次第、随時、プレスリリースによる情報提供を行っています。区もこうした情報をホームページに掲載するなどの対応を行っているところですが、国に対し、区民に一層の説明責任を果たすよう重ねて要望してまいります。
答3:国の判断と責任において進めていくべきもの
次に、新飛行経路の見直しを求めることについてのお尋ねです。
新飛行経路の運用開始以降、区民からは騒音に関する苦情、運用の見直しや周知に関するご意見、落下物等の安全対策に関するご要望をいただいているところです。新飛行経路の運用については、国の事業として、国の判断と責任において進めていくべきものと考えています。
答4:近接区や東京都とも連携しながら、引き続き強く要望してまいります
区としては、区民から寄せられたご意見やご要望について、近接区や東京都とも連携しながら、速やかに国に伝えるとともに、騒音対策や安全対策の徹底、新飛行経路の固定化回避の検討などについて、引き続き強く要望してまいります。
雑感
新宿区議会で羽田新ルートに係る質疑応答はあまり活発ではない。
新宿区議会会議録検索システムを使って、「羽田」&「新ルート」で検索した結果のうち、19年以降の実績を次表に示す。
定例会本会議や委員会に登壇するほとんどが共産党の議員で、それ以外は社民3回(かわの達男議員)、自民1回(渡辺みちたか議員)だけ。
そこへきて今回の三雲崇正 議員(立憲民主、2期)が定例会本会議で「立憲民主党・無所属クラブ」を代表して登壇したのである。いったいどういう風の吹き回しなのだろうか。内容的には2年前に質問してもよさそうなものである。原稿棒読み質問に対しては、吉住区長が物腰の柔らかい棒読みで的確に打ち返している。
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