国交省東京航空局の発注案件のうち羽田新ルートに関連しそうな入札情報を随時ブログにアップしている。
なかには、おやっと思うような入札結果に出会うことが少なくない。
東京航空局の2020年度の発注案件190件(11月8日現在)をひも解いてみた。
3千500万円以上の案件の多くが落札率100%近傍に
東京航空局の2020年度の発注案件は全部で196件(11月8日現在)だが、「プロポーザル方式」5件(金額ではなく技術評価点数が最も高い業者が落札する)とリンク間違いのため詳細が不明な「物品製造・購入」1件を除いた全190件を分析の対象とした。
なお、190件の発注区分別の件数は次の通り。
- 工事:55件
- 建設コンサルタント等:51件
- 物品製造・購入:27件
- 役務の提供等:57件
全190件につき、横軸を「入札金額または見積成立額」、縦軸を「落札率」として描いたのが次のグラフ。
1億円を超える案件では、1社入札の案件(赤色)の多くが落札率100%近傍に張り付いているように見える。
メモ
- 「見積成立額」とは、最低入札金額が発注者が予定していた価格を下回らなかった場合に、発注者と最低入札金額者との間の見積もり交渉によって決定された金額のこと。
- 「2社」~「5社以上」には、「辞退」「不着」「無効」の参加者数も含む。
上図をもとに、「入札金額または見積成立額」を1億円未満(163件)に絞り込んだのが次のグラフ。
3千500万円以上の案件では、1社入札の案件(赤色)だけでなく、2社以上入札の案件も落札率100%近傍に張り付いているように見える。
逆に、3千500万円未満の案件では、複数社により熾烈な価格競争が行われているように見える。
興味深い事案
全190件のなかから、興味深い典型例を紹介しよう。
高額案件なのに1社入札
「新潟空港土木施設維持修繕工事」
1社入札で、福田道路が6億6千900万円(92.9%)で落札。
「総合評価落札方式(除算方式)」で評価値22.869(>基準評価値)。
東京航空局の20年度の発注案件で落札した金額が最も高い案件であるのに、なぜ、1社入札だったのか……。
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入札額が予定価格よりも高い
「東京国際空港ATIS端末更新その他工事実施設計」
3社入札で、うち2社が辞退。
テレコムC&Cの入札金額は1回目が290万円(127.7%)で、2回目が250万円(110.1%)。
2回目の入札金額でも発注者が予定していた価格を下回らなかったことから見積もり交渉フェーズに。3社のうち2社が辞退していることから、そもそも設定された予定価格に無理がなかったのか。
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入札参加者が多い
「仙台空港移転補償跡地維持管理作業」
入札参加者が最も多かった案件の一つ。
本件は7社入札で、エヌ・ティファシリティーズが585万円で落札(22.9%)。
地元6社の入札額1,235万円(48.2%)~1,880万円(73.4%)に対して、ガリバー企業であるエヌ・ティファシリティーズが低入札価格585万円(22.9%)で落札。
入札公告によれば、発注概要は草刈り(107,450m2)と排水溝の清掃(側溝3,500m、桝40個)となっているが、回数が明記されていない。エヌ・ティファシリティーズは、回数を見誤ったのか、あるいは地元業者はこれまでおいしい仕事を受けていたということなのか……。
発注概要:
本作業は、仙台空港の移転補償跡地における維持管理として、草刈工および排水溝清掃工を実施するものである。
【作業内容】
草刈工 1式(107,450m2)
排水溝清掃工 1式(側溝3,500m、桝40個)
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「辞退」が多い
「新千歳空港19(L)ILS双方向化整備の事後評価に関する調査」
7社入札。5社は2回目の入札を辞退、1社は不着。日本空港コンサルタンツが1回目690万円(104.3%)、2回目650万円(98.2%)で落札。
辞退した6社は、1回目で落札者が決定しなかったことから、予定価格の低さを嫌ったのか。本件もある意味で、予定価格に無理があったのではないか事案では……。
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「無効」が多い
「令和2年度許可承認事務補助業務への労働者派遣」
「無効」が最も多かった案件の一つ。
5社入札で2社が無効。社JPキャリアコンサルティングが12,689,460円(82.9%)で落札。
入札公告によれば、入札の無効とは、そもそも入札資格のない業者や入札条件に違反した業者が対象になる。
(5)入札の無効
2.に掲げる資格のない者のした入札、申請書又は資料に虚偽の記載をした者のした入札並びに入札説明書(仕様書等添付書類を含む。)及び国土交通省航空局競争契約入札者心得において示した条件等入札に関する条件に違反した者のした入札は無効とし、無効の入札を行った者を落札者としていた場合には落札者決定を取り消す。(以下略)
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「見積成立」までの回数が多い
「百里空港土木施設維持修繕工事」
190件のなかで「見積成立」に至るまでの回数が最も多かった案件。
1社入札で、内藤工務店が落札。
1回目の入札金額5,740万円(110.3%)。2回目の入札金額5,550万円(106.7%)。入札金額が発注者が予定していた価格を下回らなかったことから見積もり交渉フェーズに入り、8回の見積もりを経て決定。
内藤工務店がこれほどの粘り腰をみせているのは、毎年1回目の入札金額で決めていたことと関係があるのだろうか。
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雑感
東京航空局が20年度に発注した案件だけでも、これだけ興味深い案件があるのだから、国交省全体の案件をひも解けば、もっと興味深い案件があるのではないか――。
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