東京五輪の延期・中止が現実味を帯びてきた。
選手村跡地に建つHARUMI FLAGの第1期(940戸)の購入者にとって、契約解除問題は気になるところだろう。
延期の場合の“補償”現状なし(サンスポ記事)
総戸数4,145戸の晴海フラッグのうち、第1期に販売された940戸を契約した人にとって、東京五輪の延期や中止は悲報でしかないだろう。
中止の場合は購入者への引き渡しが前倒し、延期の場合は契約解除はできないという不動産経済研究所の見立て。
選手村転用マンション、入居予定者が悲鳴か…延期の場合の“補償”現状なし
東京五輪の延期や中止が現実となった場合、選手村を活用する東京・中央区のマンション群「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」(18階建てなど)の購入者にも影響が出そうだ。
(中略)
不動産経済研究所(東京・新宿区)によると、五輪が中止になれば選手村としては使われないので、購入者への引き渡しが前倒しになる可能性はある。
問題は延期の場合。引き渡しもそれだけ遅くなる可能性が高い。「不動産契約は自然災害や今回のウイルス感染拡大など売り主の責任とは関係のない理由で入居が延期となる場合、契約解除はできない」と同研究所。(以下略)(サンスポ 3月14日)
東京五輪、今夏の開催は難しい!?
トランプ大統領の「東京五輪は1年間延期したほうがよい」やIOCバッハ会長「東京五輪の開催中止・延期の判断について、WHOの勧告に従う」(いずれも3月12日)の発言あとに、安倍首相が「東京五輪、予定通り開催したい」(3月14日記者会見)と言ってみても、今夏の開催の実現はかなり厳しそうだ。
仮に、日本のコロナ対策がうまくいったとしても、五輪開催で世界中からコロナ感染者が日本に出入りすることを許せば、日本国内だけでなく、世界中にコロナの感染者をバラまくことになってしまうから、WHOが東京五輪の今夏開催を認めるのは難しいのではないか。
弁護士の見方
東京五輪が延期になった場合、不動産経済研究所がいうように、購入者は(手付金を放棄することなしに)契約を解除することはできないのだろうか?
一般的には、契約書の引き渡し条項に「その他乙の責めに帰することのできない事由、または、乙の予見し得なかった事由」があれば、天災不可抗力の場合、乙(=売主)の帰責事由による契約解除のハードルは高い。
天災不可抗力条項のなかに、今回の新型コロナウイルスをズバリ列挙している契約書はないだろう。では、今回のコロナ禍は、天災不可抗力の範疇に含まれるのか?
弁護士は今回の新型コロナウイルスに係る契約不履行・履行遅延をどのようにとられているのか?
ネットをググってみると、弁護士ドットコムが運営しているBUSINESS LAWYERSというサイトに、猿倉 健司弁護士がとても参考になる情報を投稿している。
関係のありそうなところを抜粋してみよう。
不可抗力とはどのような場合をいうのか
新型コロナウイルスを理由とする契約の不履行は、基本的に不可抗力であるという指摘。
新型ウイルス等の感染症・疫病の大流行のケース
- (略)2020年に入り、新型コロナウイルス(COVID-19)の問題が日々大きく報道されておりますが、これまですでに死者数が3,000名を超え、非常事態宣言が出されるなど深刻な状況となっています(2020年3月初旬時点)。
- こういった状況を踏まえて、新型コロナウイルス(COVID-19)を理由とする契約の不履行は、基本的に不可抗力と考えられるとの指摘もなされています。
国際機関によって要請・指示・勧告された状況では、不可抗力と判断される可能性が高いという。
政府や自治体、その他国際機関等によって、広く経済活動等の制限が要請・指示・勧告されているような状況があれば、(要請・指示・勧告の内容や程度によるものの)不可抗力によるものであると判断される可能性が高くなると考えられます。
不可抗力の事象による契約当事者の責任(現行民法が適用される契約)
現行民法適用契約では、感染症大流行理由により契約の履行が期限までになされなかった場合、売主(受注側)に帰責性はないことを理由に、債務不履行責任を負わない可能性があるという。
(略)感染症・疫病の大流行その他の理由により契約の履行が期限までになされなかったり、履行そのものができなくなった場合には、不可抗力であり、売主(受注側)に帰責性はないことを理由に、債務不履行責任を負わない可能性があるということになります。
弁護士の解説では、五輪が延期になった場合、購入者は手付放棄なしで契約解除ができないと読めるのだが……。
富裕層は損切に走る!?
法的には購入者は手付放棄なしで契約解除ができなさそうだが、実際に売主がそこまで無慈悲な対応をするのかどうか。
売主が東京都からの延期要請受け入れを判断した段階で、売主事由による契約解除に当たると考える人たちがいると、紛糾するのかもしれない。
ヒョットすると、東京都が選手村の宿泊施設として借りている売主に違約金を支払い、売主はその違約金の一部をマンション購入者に還元することで、契約解除金をチャラにするというような対応があるのかもしれない。
いずれにしても、購入者としては、延期になった五輪が1年あるいは2年後に終わるまで、マンションの引き渡しを待つのかどうか。
もともと晴海フラッグを投資対象と考えていた富裕層であれば、マンション市況がどうなるか分からない1、2年先まで待たずに、損切りして契約解除を選択するのではないか。なぜならば、損切することで、次の投資機会を狙うことができるからだ。
契約解除に踏み切らない(踏み切れない)のは、プチ富裕層ということになるのか……。
富裕層がすでに損切に走っているかどうかは、3月下旬に発売開始が予定されているSUN VILLAGE(第1期)とSEA VILLAGE(第2期)の発売戸数の多寡で、ある程度想像できるのかもしれない。
※契約を解除するかしないか、最終的な判断は自己責任でお願いします。
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