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羽田新ルート|新宿区議会「19年第3回定例会」質疑応答

新宿区議会「19年第3回定例会」本会議の代表質問(9月19日)で、羽田新ルートに関して、雨宮武彦議員(共産)の質疑応答があった。

議会中継(録画)をもとに、テキスト化(約4千文字)しておいた。

※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。

※投稿19年10月1日(追記23年6月21日:渡辺みちたか議員(自民))


質疑応答のポイント

雨宮武彦 議員(共産)

雨宮武彦議員(共産)
雨宮武彦議員(共産党、区議8期、甲府工業高校卒、71歳)

次に、羽田新飛行ルートについて質問します。

8月8日石井啓一国土交通大臣が、都心上空を低空飛行する羽田新飛行ルートを2020年3月29日から運用開始すると決定しました。新飛行ルートは騒音、落下物、大気汚染、資産価値の低下、墜落事故の危険性など、命と暮らし、生活環境を著しく脅かす計画であり、新聞、テレビで大きく報じられると、撤回を求める声が広がっています。

新宿区議会でも、この間、多くの会派が騒音や落下物から区民の安全を守る立場で質疑をしてきました。


2017年6月21日付「羽田空港飛行経路についての意見書」と10月16日付「羽田空港新ルート計画の環境・安全性の検証と討論型説明会の開催を求める意見書」と二度にわたって意見書を採択しました。


ようやく区や区議会の求めに応じて、今年の1月に柏木・角筈、5月に落合第一・第二の各地域センターの4か所で教室型説明会が開かれるに至り、計166名が参加しました。

説明会では発言希望者が多数のため、1人3分しか持ち時間を与えないなど、参加者には大変不満の残るものでしたが、「小学校上空を飛行機が通過することに反対」、「新飛行ルートは騒音や落下物の問題から反対」、「落合地区は閑静な住宅街。騒音が発生すれば不動産価格に影響がある」等、圧倒的反対の意見が出されたことは過去の説明会と同様でした。

問1:国交通の説明は地元自治体と住民の理解を得た?

これまで、国も都も地元自治体や住民の理解を得ることが新飛行ルートの前提条件だと明言してきました。その約束を投げ捨てて、方針決定したことは、断じて許されません。

国交省の説明は、地元自治体と住民の理解を得たと考えているのか。まず、区長の認識を伺い、以下質問します。

問2:「区民の意見や要望をしっかり伝える」とした約束を反故

第1は、区の対応についてです。

東京都は7月26日、東京都副知事、23区の副区長、隣接5市の副市長で構成する「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」(以下、「連絡会」)を7月30日に開催すると突如発表しました。


連絡会が新飛行ルートについて何らかの理解や容認の立場を示し、新ルートにお墨付きを与えるものになるのではないかと危惧したため、私ども区議団は急遽7月29日に、区に住民説明会などで、区民から出された中止や見直し、騒音・落下物対策を求める意見を発言するよう申し入れを行いました。

連絡会出席予定の副区長は、「しっかり伝えます」と応じましたが、実際には一言も発言しませんでした


私どもの8月7日の2度目の申し出の際、副区長は「他の発言者と同趣旨であったため、重ねて発言はしなかった」と言いましたが、品川区は「区民からは依然として不安の声が多く聞かれる」、豊島区は「教室型を含め説明会を複数開催するよう要望する」など、5区から発言がありました。

「区民の意見や要望をしっかり伝える」とした約束を反故にする背信行為ではないですか。区長のご所見を伺います。

問3:羽田新ルート推進の立場なのか否か

さらに驚くべきは、8月7日に開催された首都圏の都、県、23区の代表、国土交通省で構成される「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」(以下、「協議会」)に向けての対応です。


8月24日、日本共産党都議団が情報公開請求で開示された資料によると、都は実質的に羽田新ルートの推進を求める具体化協議会で、国に伝える東京都の意見骨子案(以下、「都の意見骨子案」)について、23区、5市に対して意見を求めており、新宿区は8月1日に、東京都の取りまとめに対し、「意見の追加なし」と回答していたということが分かりました。これは安心と安全を求める区民の要望とは正反対の立場です。


8月7日、副区長に2度目の申し入れを行った際、都の意見骨子案については、触れられませんでしたが、新宿区は一体、羽田新ルート推進の立場なのか否かを明確にお答えください。

問4:修正案、事故の危険性が増す

第2は、飛行高度を引き上げた修正案についてです。

国土交通省が7月30日に示した騒音対策は、降下角度を3度から3.5度に引き上げ、新宿区上空を当初案の約915mから約1040mに引き上げて騒音を軽減するというものでした。環境衛生学が専門の北海道大学教授の松井利仁氏は、「騒音効果は1デシベル程度で、住民には違いが分からない」と指摘しています。


8月30日から、実際のルートを大型旅客機の全長4分の1ほどの小型ジェット機が午前6時から8時の間飛ぶ「飛行検査」が行われています。環境対策課が貸し出す騒音測定器で計測したところ、北新宿で最大64.2デシベルありました。住民からは「音は思ったよりかは大きい」「これが、2分間に2回となると耐えられない」と。小型ジェット機でさえそう感じるのですから、大型機が飛ぶなんてとんでもありません。


さらに元日本航空機長、航空評論家の杉江弘氏は、「0.5度角度を上げることは世界のパイロットは経験しておらず、羽田は世界で最も着陸が難しい空港になり、尻餅事故などが多発しかねない」と危険性を指摘しています。

また、落下物対策として、情報提供を行うとの追加案も知らされましたが、航空機から落下物は国内の主な7空港だけで、年間447件、1日に1件以上起きています。人口が密集する都心で落下物による事故が起きてからでは遅いのです。


この修正案では騒音対策にもならないばかりか、事故の危険性が増すことになります。区民の安全を守る立場の区長として、きっぱり中止するよう国に要求すべきです。区長のご所見を聞かせお聞かせください。

吉住区長

吉住健一 新宿区長
吉住健一 新宿区長(2期、日大卒、47歳)

答1:国は丁寧な説明と正確な情報提供を着実に続けていくべき

次に、羽田新飛行ルートについてのお尋ねです。

はじめに、「国土交通省の説明は地元自治体と住民の理解を得たと考えているのか」についてです。国土交通省は、「騒音・落下物対策等を着実に実施し、丁寧な説明を今後も行っていくことを前提に、羽田空港の機能強化について、地元の理解を得られたと判断した」と説明をしています。


区では、羽田空港の機能強化について、不安や疑問の声など様々な意見があることは承知しており、国は丁寧な説明と正確な情報提供を着実に続けていくべきものと考えております。

答2:区民の意見や要望をしっかりと国に伝えたものと認識

次に、「区民の意見や要望をしっかりと伝えたか」とのお尋ねです。

ご指摘の通り7月30日に、第1回「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」が開催されました。区では、連絡会までに、19回にわたって開催された幹事会を通して、落下物対策などの安全対策・騒音対策の徹底、区民への丁寧な説明、騒音測定局の設置について、粘り強く要望を続けてまいりました。


また、区からの意見や要望に対しては、国の責任において、真摯かつ適切に対応するよう要望いたしました。連絡会は、こうした都および関係区市からの要望に対し、国から文書による回答を得ることを目的として開催されました。


区のこれまでの要望に対し、安全対策、騒音対策に関する追加対策の検討、区内への騒音測定局の設置など、一定の評価ができる回答を国から受け取ることができたと考えています。このことからも区民の意見や要望をしっかりと国に伝えたものと認識しています。

答3:国の責任において住民の理解を得ながら進めるべき

次に、「羽田新ルートに対する区の立場について」のお尋ねです。

ご指摘の都の意見骨子案は、羽田空港の機能強化は重要とする一方で、丁寧な情報提供や、安全対策、騒音対策の徹底を要望する内容となっています。

従来からの区の要望とも沿うものであったことから、意見がないものとして回答いたしました。「他区市においても骨子案への意見は1件もなかった」と都から聞いております。


区としては、羽田空港の機能強化の必要性については理解していますが、国の事業として国の責任において住民の理解を得ながら進めるべきものと認識しています。

答4:安全対策、騒音対策が着実に履行されるよう注視
次に、「飛行高度を引き上げた修正案について」です。

ご指摘の通り、区内では、引き上げ高度が約400フィートのため、これだけでは大きな効果は見込めないと考えています。しかしながら、騒音の要素を組み合わせた着陸料の料金体系の再見直しや区内への騒音測定局の設置などを含め、全体として騒音対策の効果はあるものと認識しています。


また、着陸時の降下角を0.5度引き上げ、3.5度にすることについては、「国際民間航空機関が定める国際的な安全基準に則したものであり、安全性は確保される」と国から説明を受けています。なお、「3.5度はあくまでも限度であり、気象条件等によっては降下角を下げるなど、安全を最優先にした対応を今後も続けていく」とのことです。


そのため、今回の修正案について、国に中止を求める考えはありませんが、国の実施する安全対策、騒音対策が着実に履行されるよう注視してまいります。


区では今後も区民の安全・安心を守るため、落下物対策などの安全対策・騒音対策の徹底、丁寧な説明と正確な情報提供について国に強く要望してまいります。

雨宮議員(共産)

意見:ぜひ反対という立場をとっていただきたい

雨宮武彦議員(共産)

本来でしたら再質問をしたいんですけれども、1つはやはりいまの新飛行経路のルートの問題も、もともとこの都心密集地の真上を飛ぶということ自体が危険なことであって、本来ならやはり区民の皆さんの安全・安心という立場から、やっぱり23区の、特に関連する区長さん達にはぜひ反対という立場をとっていただきたいなというふうに思います。また、それが必要だろうというふうに思うんですね。

渡辺みちたか議員(自民)

※追記23年6月21日

渡辺みちたか議員(自民)
渡辺みちたか 議員(自民党、区議1期、慶應卒、33歳)

問1:関係区等との連携行動?

次に、新宿区を初めとした都心の上空を通って羽田空港に発着する新たな飛行ルートについて伺います。


このことについては、新宿区の行動などもあって、「新宿駅周辺は高度約915mから1,040mに上がる」こととなったところですが、国土交通省は羽田新ルートは2020年3月29日から運用を始めると発表しました。区としては今後どのように対応していくのか、また本件に係る今後の関係区等との連携行動としてはどのような取り組みを考えているか伺います。

問2:(区長会の要望が)どのような効果をもたらしている?

また、区長会は、「令和2年度都の施策及び予算に関する要望書」において、「羽田空港の機能強化に係る対応」ということで、「騒音影響や安全管理など、懸念されている課題に対し、住民が納得することができる十分な検討及び説明を行うよう国へ働きかけること」の要望をされているところですが、これがどのような効果をもたらしていると区長会では認識されているのかお尋ねいたします。

問3:騒音測定局の増設、情報提供の方法等?

次に、プレス資料によれば、住民の不安の一つである騒音に対する対応として、騒音測定局の増設があり、新宿区内にも設置されることとなっていますが、その測定内容と区民や区に対する情報提供の方法等について伺います。

問4:(騒音や落下物)国の今後の進め方と新宿区の取り組み?

次に、依然として騒音や落下物の問題が残ることから、区民への周知と理解の促進が欠かせません。そして、このことは運用開始とその後においても引き続き欠かせないものと考えますが、これらのことに対する国の今後の進め方と新宿区の取り組みについて伺います。

吉住区長

吉住健一 新宿区長

吉住健一 新宿区長(2期、日大卒、47歳)

答1:都及び関係区市と情報交換や課題の共有を行っています

次に、羽田空港に発着する新たな飛行ルートについてのお尋ねです。
初めに、区の今後の対処と関係区等との連携についてです。
区は、これまで国に対し、地域説明会の開催や落下物対策などの安全対策・騒音対策の徹底、新飛行経路となる地域への騒音測定局の設置を要望してきました。

今後も一層の落下物対策などの安全対策、騒音対策の徹底、区民の不安を払拭するための丁寧な説明を引き続き国に強く求めてまいります。

関係区等との連携については、都及び関係区市の部長級職員を構成員とする「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」幹事会において、都及び関係区市と情報交換や課題の共有を行っています。

今後も、この会議体を活用するとともに、必要に応じて個別に関係区市と情報交換を図るなど、十分に連携してまいります。

答2:広域行政の立場から都の積極的な取り組みにつなげていきたい

次に、区長会の要望についてのお尋ねです。
御指摘のとおり、令和元年7月に特別区長会として東京都に対し、「令和2年度都の施策及び予算に関する要望」を行っております。

特別区長会では、羽田空港の機能強化に係る対応については、都区双方が緊密に連携・協力して解決すべき重要課題であると認識しており、こうした要望を行うことにより、広域行政の立場から都の積極的な取り組みにつなげていきたいと考えています。

答3:測定データを直接区に提供するよう調整を進めている

次に、騒音に対してのお尋ねです。
区では、区内への騒音測定局の設置について、国に対し強く要望を続けてまいりました。

その結果、新飛行経路に近い落合第二小学校の屋上に国が測定局を設置し、新飛行経路の運用開始とともに稼働する予定となっています。

測定内容としては、航空機騒音に係る環境基準と比較するための騒音測定となります。

国は、既設の騒音測定局の測定データについて東京航空局のホームページで一般公開しています。

区に設置される騒音測定局についても、今後、同様の扱いとなると聞いていますが、測定データを直接区に提供するよう調整を進めているところです。

今後、このホームページの周知と区ホームページにおいても情報提供できるよう、検討を進めてまいります。

答4:丁寧な説明と正確な情報提供について国に強く要望してまいります

次に、騒音や落下物に対してのお尋ねです。
国は、騒音対策の追加対策として、飛行高度の引き上げを行うとしています。区内では引き上げ高度が約400フィートのため、これだけでは大きな効果は見込めませんが、騒音の要素を組み合わせた着陸料の料金体系の再見直しや、区内への騒音測定局の設置などを含め、全体として効果はあるものと認識しています。


落下物対策については、国は平成30年3月に「落下物対策総合パッケージ」を策定し、未然防止策の徹底や事案発生時の対応強化を図っています。

「落下物対策総合パッケージ」では、新たに落下物防止対策基準を定め、平成31年1月から国内の航空会社、3月からは日本に乗り入れる外国の航空会社に、この基準を遵守することを義務づけています。

国からは、この基準は世界でも類を見ない厳しい内容となっていると聞いております。

このことから、落下物対策及び騒音対策は充実・強化されたものと考えていますが、御指摘のとおり区民への周知と理解の促進が重要であると考えています。

国は、ホームページとあわせ、電車広告や新聞広告、折り込みチラシ等を通じて周知を進めており、今後も続けていくとしていますが、一層の周知について国に要請してまいります。

区では、今後も区民の安全・安心を守るため安全対策・騒音対策の徹底、丁寧な説明と正確な情報提供について国に強く要望してまいります。

雑感(緊迫感が感じられない)

羽田新ルートが新宿区上空を通過することを認識している新宿区民はどのくらいいるのか。
筆者の独自調査によれば、羽田新ルートの騒音の影響を受ける可能性があるのは新宿区民の3割(9万人)。4か所で開催された教室型説明会の参加者は116名というのは、たったの0.13%でしかない。

10月29日には新宿文化センターで公聴会が開催される。

来年の3月29日から新宿区上空を大型旅客機が飛び始めるというのに、区議会での議論には緊迫感が感じられない。

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