国土交通省は10月31日、「平成29年全国屋上・壁面緑化施工実績調査結果」を公表。
国交省は役所らしからぬ表現で屋上緑化を盛り上げているのだが……。
役所らしからぬ表現で屋上緑化を盛り上げる国交省
「東京ドーム5個分の屋上緑化が創出されました!」という国交省のプレスリリース(次図)。
「報道発表資料|国交省」より
「屋上緑化1件あたりの施工面積」は、平成24年をボトムに増加傾向にあるのは確かだ(次図)。
「同上」より
「東京ドーム5個分」といわれると、なんだか屋上緑化が盛んになってきたような印象を受ける。
でも――
違うだろぉぉぉっ!!(豊田真由子元衆院議員風に)
新築建物の屋上緑化の施工面積は減少傾向にあるし、同壁面緑化の面積は5万m2程度で頭打ちなのである(次図)。
国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室が毎年公表している調査結果の見出しをひも解くと、屋上緑化を盛り上げる役所らしからぬ表現が並んでいる。
- 14年:新たな屋上・壁面緑化空間が創出されています
- 15年:商業施設などで壁面緑化を用いた高質で魅力ある空間づくりが進んでいます
- 16年:共同住宅や商業施設において様々な種類の植物を用いた庭園型の屋上緑化が増加しています
- 17年:大規模な屋上緑化が近年増えてきています
- 18年:東京ドーム5個分の屋上緑化が創出されました!
マンションの屋上緑化ブームは終っている
公表資料に掲載されている建物用途別の「屋上緑化」の施工面積の推移を可視化したのが次図。
それまで施工面積の多くを占めていた「住宅/共同住宅」は08年をピークに激減しているのである。08年9月15日に発生したリーマンション・ショック以降、首都圏の新築マンションの着工戸数が激減し、マンションの屋上緑化ブームは終っているのだ。
ちなみに、壁面緑化のほうは、「商業施設」と「工場・倉庫・車庫」以外ではほとんど普及していない(次図)。
屋上・壁面緑化はマンション住人にメリットがあるのか
東京都は、ヒートアイランド現象の緩和、都市景観の向上など、屋上緑化を推進するため、01年4月、改正自然保護条例を施行し、敷地面積1,000m2以上の民間建築物(公共建築物は250m2以上)を新改築する際、利用可能な屋上面積の2割以上の緑化を義務づけている。
たとえ敷地面積が1,000m2以上であっても、「利用可能な屋上面積」がゼロであることを理由に、コストアップとなる屋上緑化を設けないことも可能だが、販促のためにあえて屋上緑化を施工するデベロッパーも少なくない。
分譲後の維持管理費用は住人の負担である。しかも、植栽が屋上にあるがゆえに、住人は常時緑を楽しめるわけではない。
施工された種類が維持管理の楽なセダムだったりすると、水分の蒸発量が少ないセダムにはヒートアイランド緩和効果は期待できない。
壁面緑化のほうは義務づけられていないが、広告のCGが映えるので採用されているようなところがある。