昨日の記事「東日本大震災から5年/地震・防災のお役立ち記事」を書くために、東京都が取り組んでいる防災関係情報を調べていて驚きの事実を発見!
「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」
登録たったの4件
東日本大震災が発生した翌年度、2012年4月20日に施行された「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」に登録された件数がたったの4件しかないのだ(次表)。
しかもうち1件の「トミンハイム横川一丁目」は、都が出資している東京都住宅供給公社の賃貸物件。
「東京都LCP住宅情報登録簿」より
4件が登録された時期を調べてみると、12・14年度にそれぞれ2件あっただけ(次図)。
登録するためのハードルが極めて高い東京都のLCP制度
そもそもこの制度は、都が東日本大震災の翌年12年1月23日に同制度の基本方針を公表し、「環境に与える影響や都民の経済的な負担などを考慮しつつ、停電時でもエレベーターや給水ポンプの運転に必要な最小限の電源を確保することで、都民がそれぞれの住宅内に留まり、生活の継続を可能とする性能を備えた住宅(LCP住宅)の普及促進を図る」ことを目的に創設されたもの。
- LCP:Life Continuity Performance
「(参考)東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度のイメージ(PDF12KB)」より
外部からの電力供給が途絶した場合でも、運転可能な常用発電機が設置されているや、発電に伴い発生する熱の利用に努めることなど、登録するためのハードルは極めて高いため、新築であれ、中古であれ、スケールメリットの得られない小規模なマンションでは、LCP住宅の基準を満たすのはかなり難しい、と筆者は考えていた(唐突な「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」)。
結果的に4件しか登録されていないのだが、都市整備局はこの状態を放置しておくのか……。
「大阪市防災力強化マンション認定制度」認定件数減少中
大阪市にも「大阪市防災力強化マンション認定制度」というマンションの防災力強化を目的として創設された制度がある。
東日本大震災が起きる2年前、09年5月19日に制定された制度だ。
防災性の向上と災害に強い良質なマンションの整備を誘導するため、耐震性や耐火性など建物の安全性に関する基準に適合することに加え、被災時の生活維持に求められる設備・施設等の整備、住民による日常的な防災活動等の実施など、ハードとソフトの両面での防災力が評価されている。
「大阪市防災力強化マンション認定制度 《ちらし》(PDF683KB)」より
これまでに認定されたマンションは、全部で44件(3,721戸)。
東日本大震災が発生した11年度の登録件数がピークで、その後件数、戸数とも減少傾向にある。
東京都LCP住宅よりも大阪市のほうが認定件数が多いのは、認定を受けた新築マンションは物件により住宅ローンの金利が引き下げられるという、東京都にはないメリットがあったことが一つの要因だと考えられるのだが――マイナス金利が導入された現在ではその効果は期待できない。
仙台市「杜の都 防災力向上マンション認定制度」低調
仙台市にも3年前(2013年4月)に運用を開始した「杜の都 防災力向上マンション認定制度」がある。建物性能と防災活動を認定する制度。
防災意識の高い宮城県(地震保険の世帯加入率が全国1位)でさえ、「杜の都 防災力向上マンション認定制度」で認定された件数は17件(3月5日現在)と低調である。
天災は忘れたころにやってくる
3都市(東京都・大阪市・仙台市)が創設したマンション防災性能評価制度は登録・認定件数が少なく、いずれも息切れ感が漂っている。
天災は忘れたころにやってくる(寺田寅彦)。
各自治体は創設した制度の実効性を高めるために、PDCAをシッカリ回す必要があるだろう。
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