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唐突な「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」

東京都が1月23日、「東京都LCP 住宅の登録・閲覧に係る基本方針」を公表。
東日本大震災の教訓を踏まえ、環境に与える影響や都民の経済的な負担などを考慮しつつ、停電時でも水の供給やエレベーターの運転に必要な最小限の電源を確保することで、都民が自宅での生活継続を可能とする住宅(以下、東京都LCP住宅)の登録・閲覧に係る基本方針をまとめたという。
LCP:Life Continuity Performance


たった1枚に記された基本方針は、「第1 目的」「第2 制度の仕組み」「第3 東京都LCP住宅の登録基準」「第4 その他」の4つの項目からなっている。
東京都LCP住宅は、水の供給及びエレベーターの運転に電源を必要とする集合住宅のうち、以下の5つの登録基準を満たさなければならない。

第3 東京都LCP住宅の登録基準

  • 一 建築基準法に規定する耐震性を有すること。

(筆者:これって言わずもがなではないのか)

  • 二 水の供給及び1基のエレベーターの運転を同時若しくは交互に行う発電能力があり、燃料が安定継続して供給可能で、住宅外からの電力供給が途絶した場合でも、運転可能な常用発電機が設置されていること。

(筆者:「燃料が安定継続して供給可能」って、いったいどんなシステムを想定しているのか?)

  • 三 二の常用発電機は、発電に伴い発生する熱の利用に努めることとし、熱の利用に必要な機能を備えること。


  • 四 東京都LCP住宅としての登録に必要となる設備の設置・運営にあたり、居往者・住宅所有者に、原則として新たな負担が生じないこと

(筆者:居往者・住宅所有者でないならば、誰が負担するのか?)

  • 五 二の設備の設置・運営を委託する場合、委託期間を15年以上とし、住宅所有者が、受託者の業務や納税・財務の状況、委託終了後の住宅の管理等を考慮の上、契約を締給していること。

この文章だけでは、「登録基準」が具体的に何を意味しているのかよく分からない。
ずいぶんと不親切な文書だと思いながら、都のホームページをググってみたら、都が1月30日に公表した「東京都住宅マスタープラン(素案)」にヒントがあった。
「LCP住宅のイメージ」として次図が掲載されているのだ。
住宅のイメージ(東京都住宅マスタープラン(素案))
この図から、都が想定している「燃料が安定継続して供給可能で、住宅外からの電力供給が途絶した場合でも、運転可能」なのは、都市ガスをエネルギー源としたCGSシステム(Co-Generation System:熱電併給発電システム)であることが分かる。
同システムであれば、発電に伴い発生する熱の利用も可能だ。


また、既存集合住宅(=中古マンション)については、次のような記載もあった。

既存集合住宅でのプロジェクトの実施促進

  • 既存のマンションや公社住宅等において、災害時でも、生活の継続に必要なエレベーターや給水ポンプの運転を可能とするコージェネレーション設備などの自立型発電設備と高圧一括受電による商用電源を併用したシステムを導入するプロジェクトの実施を促進します。


  • これらのプロジェクトを通じて、大きなコストを必要とせず、居住者の負担のないビジネスモデルを確立し、広く普及を図ります

この設備投資や運営費は業者負担(居住者負担増なし)という、ムチャな「基本方針」。
新築であれ、中古であれ、スケールメリットの得られない小規模なマンションでは、LCP住宅の基準を満たすのはかなり難しいだろう。
大規模マンションであっても、LCP住宅の基準のハードルは高そうだ。
穿った見方をするならば、この唐突感のある「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」の狙いは、高層難民大発生のリスクが高い超高層マンションの抑制にあるのではないだろうか。


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