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大家はどのように民泊と向き合っていけばいいのか

某ネットメディアの記者から、「大家は今後、どのように民泊と向き合っていけばいいのか?」といった趣旨の質問を頂戴したので、論点をザット整理してみた。

もくじ

 

民泊を類型化

法令違反の有無に係わらず、住人(周辺住民を含む)視点の評価が厳しい場所で民泊を行おうとするほど、住人からの反発が大きくなる(実録!Airbnbとタワーマンション住民との攻防)。
住人からの反発が大きくなるほど、大家さんにとっては民泊を運営しにくくなるリスクが高くなる。

そこで、まず、民泊を実施する「場所」と「タイプ」で類型化してみた(次表)。

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民泊を実施する「場所」としては、「都会」なのか「地方」なのか。「マンション」なのか「戸建て」なのか。
マンションであっても「一般的なマンション」なのか、それとも「民泊が可能なマンション」なのか(「民泊禁止」を謳った新築マンションが販売される )。

また、「タイプ」としては、「投資型民泊」と「ホームステイ型民泊」の2タイプ。それぞれの定義は次のとおりだ。

  • 投資型民泊】投資目的で購入あるいは借り上げたマンション・一軒家を旅行者に貸し出す民泊
  • ホームステイ型民泊】自宅の一部を開放し、旅行者とのコミュニケーションを図ることを重視した民泊

 

民泊の類型に応じた住人視点の評価

次に、民泊の類型(場所・タイプ)に応じた、 住人(周辺住民を含む)視点の評価を整理する(次表)。

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上表の内容を順に説明していこう。

「都会」の「マンション」で民泊を実施する場合には、投資型であるか否かに係わらず、住人の安心安全が確保できないとか、マンションの資産価値が毀損されるといった問題があるため、住人からの反発が最も大きくなる。

「都会」であっても、「民泊可(民泊が可能な賃貸マンションや、最初から民泊可能を謳っている分譲マンションなど)」であれば、住人からの反発は小さそうだ。

「都会」の「戸建て」「投資型」の場合には、特に家主が住んでいないとなると、周辺住民の安心安全が確保できない可能性が出てくるため、多少の反発があるかもしれない。
「都会」であっても、「戸建て」「ホームステイ型」の場合には、家主が常駐していることにより、周辺住民からの反発はないのではないか。

「地方」の場合も、上述の「都会」の場合とほぼ同様だ。

やや異なる点は、「地方」の「戸建て」「ホームステイ型」の場合には、地域の活性化に貢献し得ることだろう。

 

以上により、民泊の類型に応じた住人(周辺住民を含む)視点からの評価(≒民泊への反発の度合)が整理できた。

 

大家さんが民泊に向き合うスタンスは4択

現在の民泊の多くは旅館業法や消防法などに違反して運営されている。「現在の民泊は法的にグレー」という表現は、民泊推進派の言い方であり、実際には「現在の民泊の多くは法的にアウト」なのだ。

このことは筆者だけが言っているのではなく、多くの弁護士が指摘しているところ(法令違反リスクを負うのはホスト!Airbnbではない )。

現在の民泊の多くは法的にはアウトなのだが、役所が黙認しているに過ぎない。

今後、大阪府や大田区など戦略特区の民泊の条例化の進展だけでなく、非特区も含めた旅館業法の見直し(規制の緩和)によって、民泊をめぐる法令・条例が整備されてくると、従来のように役所が違法な民泊を黙認し続けることはできなくなるかもしれない(京都府警が悪質な民泊を摘発!京都市Airbnb登録件数の増加にブレーキは掛かるか?)。

民泊周りの法令・条令が明確になってくると、住人(周辺住民を含む)からのクレームを受けた保健所や警察は動かざるを得なくなるからだ。

 

したがって、大家さんは、住人からの反発が大きくなるほど民泊の運営がしにくくなるリスクが高くなることを念頭に、民泊と向き合っていく必要がある。

そこで今後、大家さんが民泊に向き合うスタンスとしては、次の4つの選択肢が考えられる。

<これから民泊を始めようとしている大家さんの場合>

  1. これから法を犯してまで民泊に新規参入しない
  2. 違法な状態で民泊を始める
  3. 違法な状態で民泊を始め、適法になるよう微調整していく
  4. 民泊条例を遵守(特区)または旅館業法の許可を取得(非特区)する


<すでに民泊を運営している大家さん>

  1. 民泊から撤退する
  2. 違法なまま民泊を継続する
  3. 適法になるよう微調整しながら民泊を継続する
  4. 民泊条例を遵守(特区)または旅館業法の許可を取得(非特区)する

 

これから民泊を始めるかどうか逡巡している大家さんも、すでに民泊を始めている大家さんも、民泊の規制緩和の動向を注視しながら、4択のなかから選んだスタンスで臨むことになるのではないだろうか。

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