9月29日に開催された「第7回 東京都都市再生分科会」において、大田区は年内に「民泊条例」を制定する方針を示した。
五輪向け 空き部屋で「民泊」の条例制定へ
(略)5年後のオリンピック・パラリンピックに向けて外国人旅行者の増加が見込まれる中、大田区のホテルなどでは去年、客室の稼働率が90%を超え、今後、宿泊施設の不足が懸念されることが説明されました。
そのうえで大田区は、特区の規制緩和を利用して民間のマンションや住宅の空き部屋を宿泊施設として活用するいわゆる「民泊」を一定の条件のもとで認める条例を年内に制定する方針を示しました。(略)
(NHKニュース 9月29日 12時32分)
- 大田区で「民泊」ができるのは民泊可能地域のみ
- 条例制定後は民泊不可能地域でのAirbnb登録物件はすべて違法になる
- 大田区よりもAirbnb登録物件数がはるかに多い渋谷区や新宿区はどうなるのか
- 大田区は「民泊条例」を厳格に適用できるか
大田区で「民泊」ができるのは民泊可能地域のみ
「第7回 東京都都市再生分科会」会議で配布された資料5(旅館業法の特例、医療機器における薬事承認の迅速化について_PDF:2MB)を読むと、少し具体的な内容が見えてくる。
大田区では今後、内閣府や東京都と調整しながら、旅館業法の特例の実施を定めた「区域計画」を作成。「最低宿泊日数」「特定認定に係る手数料」「立入権限」などを規定し、平成27年中の条例制定を目指すとしている。
(大田区が作成した資料5のP1より)
条例制定後は民泊不可能地域でのAirbnb登録物件はすべて違法になる
大田区内のどこでも「民泊」ができるというワケではなく、「民泊」が可能な地域が指定される。
「民泊」が実施できるのは、「ホテル・旅館」の建築が可能な用途地域に限られるようだ。
(大田区が作成した資料5のP1より)
だから、この条例が制定されると、「民泊」が実施可能な地域(次図の着色された地域)以外では「民泊」が実施できないことになる。
民泊不可能地域でAirbnbを活用した部屋の貸し出しは、すべて違法ということになる。
(大田区が作成した資料5のP2より)
大田区よりもAirbnb登録物件数がはるかに多い渋谷区や新宿区はどうなるのか
1か月前(9月1日)の23区のAirbnb登録物件数は次図のとおり。
大田区は101件(アパート56件、一軒家41件、その他4件)。23区では16番目。
どちらかといえば大田区は、Airbnb登録物件が少ない部類に入る。
Airbnb登録物件数が少ない大田区だけが「民泊条例」を制定し、Airbnb登録物件数が多い渋谷区や新宿区は何もしないというのでは、東京都の姿勢が問われる。
東京都は大田区の「民泊条例」の経緯を見据えながら、渋谷区や新宿区に条例化を働きかけるつもりなのか?
大田区は「民泊条例」を厳格に適用できるか
「宿泊施設の不足が見込まれる中、羽田空港を擁する『国際都市おおた』として、安全性や衛生面に配慮した滞在施設を提供する環境を整備するため」、「民泊」を条例化するという大田区の説明は一見分かりやすい。
(大田区が作成した資料5のP1より)
でも、大田区内の民泊不可能地域で違法営業しているAirbnb物件をキチンと取り締まれるのか?
さらにいえば、条例化していない区のAirbnb物件は黙認状態のままで、大田区だけが条例化を厳格に適用できるのか?
中途半端な条例化は形骸化する可能性が高い。
民泊不可能地域で違法営業しているAirbnb物件を調査・指導するためには結構な人手が必要だ。
条例の厳格な適用が困難であろうことは金沢市の事例をみれば想像できる(Airbnbへのモグラたたきが始まっている)。
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