耐震強度偽造事件で、マンション業界は、揺れにゆれている。
姉歯秀次1級建築士の行いは、理由はどうあれ、マンション倒壊の恐れありという大変ショッキングな結果を生み出してしまっている。
建築士は、得意分野によって、意匠(デザイン)系、構造系、設備系に大別できる。
世に言う建築士とは、建物をデザインする意匠系を指していることが多い。
柱・梁など建物の骨組みを扱う構造系の建築士や、照明や空調・給排水など建物の臓物を扱う設備系の建築士は、どちらかというと地味な存在だ。
とりわけ構造系の建築士は、構造設計という地味な仕事をコツコツと忍耐強くこなす性格でなければ務まらない。
建物の骨組みを支えるという、人命にかかわる大変重要な職責を担っている割には、一部の高名な構造技術者を除き、あまり経済的に恵まれているとはいえない。
業界の構造が、金の流れと呼応する形で、デベロッパー>ゼネコン>設計事務所(意匠>構造・設備)という序列(力関係)があるからだ。
構造系の設計事務所は、下請けとして低賃金労働を強いられているということ。
でも、デベロッパーやゼネコンからの厳しい要求に耐えながらも、世の中のほとんどの構造技術者は、人命にかかわる大変重要な仕事に携わっているというプライドを持って、任務をまっとうしている。
高度な専門性を要し、ちゃらんぽらんな性格では務まらないであろう構造技術者に、構造計算書の偽造など起こりえないはずであった。
安全性を犠牲にしてコストを下げるという、技術者として超えてはならない一線を姉歯秀次1級建築士は超えてしまった。
(本日、マンション広告なし)