来年6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)に向けて、東京23区内では、次の10つの区で民泊条例の骨子案などが示されたことが観測されている。
中野区の田中大輔区長(4期)は12月14日の記者会見で、民泊条例案を発表。
住宅地で月曜正午~金曜正午(祝日を除く)の営業を禁止する。素案では鉄道駅の近くは規制対象から除外していたが、住宅地は一律に規制することにした。
区長記者会見資料(PDF:13MB)から、気になる2点を解説した。
その前に、まずは民泊条例(案)の構成の確認。
民泊条例(案)の構成
素案は次のように、12項目から構成されている。
- 1 条例の目的
- 2 責務
- 3 事業の実施区域及び実施期間に係る特別の制限
- 4 届出の際の管理規約等の確認及び所有者等への通知
- 5 対面による本人確認等
- 6 近隣住民等への事前周知等
- 7 消防署への通知
- 8 廃棄物の適正処理
- 9 届出住宅の公表
- 10 届出施設における食事の提供
- 11 苦情等の対応記録
- 12 条例の見直し
次に、民泊条例制定の目的の確認。
条例の目的は、「事業の適正な運営」と「区民の安全及び安心を確保」
民泊条例制定の目的は、「事業の適正な運営」と「区民の安全及び安心を確保」とされている。
1 条例の目的
事業の実施に関して必要な事項を定め、事業の適正な運営を図るとともに、住環境の悪化を防止し、区民の安全及び安心を確保することを目的とする。
気になる点は、「3 事業の実施区域及び実施期間に係る特別の制限」と「5 対面による本人確認等」の二つ。以下に述べる。
住宅地域での平日の民泊禁止
住宅地域での平日の民泊が禁止されているのである。
3 事業の実施区域及び実施期間に係る特別の制限
住宅宿泊事業法第18条に基づき、住居専用地域においては、月曜日の正午から金曜日の正午までの期間(国民の祝日の正午から翌日の正午までの期間は除く。)は事業の実施を不可とする。
(金・土・日・祝日は実施可。年間160日~170日)
すでに民泊条例の骨子案を公表している10つの区(中野区を含む)のうち、5つの区(大田、練馬、杉並、世田谷、新宿)は住居専用地域での民泊を規制している。あとの4つの区はやや変則的。文京区は住居専用地域のほか、文教地区なども民泊規制エリアに加えている。千代田区は、文京区地区などが民泊規制エリア。目黒区は区内全域で、平日の民泊を禁止。江東区は「第一種中高層住居専用地域」でのみ平日の民泊を禁止している。
中野区の住居専用地域での平日の民泊禁止案は、先行6区のオーソドックスな内容に準じている。
対面による本人確認を義務づけ
中野区民泊条例案が他の9区と最も違っているのが、事業者等に「対面による本人確認」を義務づけていること。
5 対面による本人確認等
住居専用地域においては、事業者等は、宿泊者と対面により身分証明書等と照合して本人確認をするとともに、宿泊者が外国人旅行者(日本国内に住所を有する外国人を除く。)である場合には、旅券の写しを取り、宿泊者名簿とともに保管しなければならないものとする。
宿泊者との対面が義務化されるとなると、現在の大半の民泊は撤退せざるを得なくなるのではないか。
ただ、宿泊者との対面が義務づけられている事業者等の「等」が何を意味しているのか不明。
国交省と厚労省は8月にテレビ電話などで本人確認することを認めているし(民泊の本人確認はテレビ電話など3手法で決まり!?)、経産省は8月16日にICT化によってコンビニエンスストアなどで民泊にチェックインする方法を認めている(コンビニが民泊の窓口になる日も近い!?)。
もし、「等」のなかに、テレビ電話による本人確認が含まれていないとすれば(文章的には含まれていないと読むのが自然でないか)、国の流れに抗うことになる。
民泊条例の施行までの日程
民泊条例(案)のパブコメを経て、18年区議会第1回定例会において条例制定を目指すとされている。
- 17年12月21日~18年1月10日
民泊条例(案)に対するパブコメ受付 - 18年1月
閉会中の関連委員会にパブコメの結果報告 - 18年2月
中野区議会第1回定例会に条例案を提出