読者から、「いまマンションを買うべきか」とか「買うとしたらどのような点に気をつければいいのか」といったような問合せを受けたので、過去の記事も一部転用しながら、筆者の考えているところをザットまとめておいた。
1.いま、マンションを買うべきか?
結論から先に言えば、今はまったく買い時ではない。
その理由を以下に示そう。
1-1 不動産バブル期の価格水準に近づいている
過去30年間を振り返ってみると、首都圏の新築マンションの平均販売価格のピークは、不動産バブルの時期(1986年~1991年)の1990年度の6,214万円(次図)。
(不動産経済研究所データより作成)
2014年度の首都圏新築マンションの平均販売価格は5,088万円で、2015年の上半期が5,256万円。この調子でいけば数年後には不動産バブル期の価格水準に近づきそうだ。
バルブな価格はやがて弾ける。
数年後、もう少し具体的にいえば2020年の東京オリンピックの前後あたりに、ひょっとすると不動産バブルが弾けるのかもしれない。
これは筆者だけの意見ではなく、何人かの業界関係者もそれに近い話をしている(震災と不動産バブルの崩壊は忘れた頃にやってくる)。
でも、不動産バブルが弾けようが、弾けまいが庶民にとっては直接的にはあまり関係ないことかもしれない。
それよりも、「今は買い時ではない」ということをよく認識しておいたほうがいい。
1-2 今は買い時ではない!首都圏新築マンション
次図を見てほしい。先ほどのグラフに「平均専有面積」の折れ線を加えてみた。
(不動産経済研究所データより作成)
不動産バブルの時期(1986年~1991年)は平均販売価格が高騰したうえに、平均専有面積が小さかった。すなわち「狭くて高い」時期だったのだ。
この不動産バブルの当時と同じように、ここ数年も「狭くて高い」時期が続いている。だから買い時ではないのだ。
実は1999年~2005年あたりが、「広くて安い」買い時な時期だった(今ごろ気が付いても遅いのだが)。
1-3 今は買い時ではない!23区新築マンション
23区についても、同様のことが言える。
手元にある1997年以降の23区のデータを可視化してみよう。
(元データの都合上、前図と異なり、横軸は「年度」ではなく「年」となっている)
(不動産経済研究所データより作成)
「広くて安い」時期は、1999年~2005年頃。
ここ数年は「狭くて高い」時期が続いている。
2.それでも買うとしたら、どのような点に気をつければいいのか
上述のように、今はまったくもって買うべき時期ではないのだが、それでも、子供の学校の関係や、転勤のタイミングなどライフステージの変化に応じて、どうしても今マンションを買わなければならない人もおられよう。
では、マンションを買うとすれば、どのような点に気を付ければいいのか?
2-1 新築より中古
(マスコミが教えない、新築より中古より)
新築マンションには広告宣伝費のほか、売主の利ざやが多く乗っているうえに、必ずしも市場価格を反映していないところに問題がある。
だから、多くの新築マンションは、買った瞬間に値が下がる。
どのくらい値が下がるのか――
少しデータが古くなるが、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)がREINS TOPIC の中で毎年発表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」と不動産経済研究所が2014年1月22日に発表した「首都圏マンション市場動向(2013年のまとめ)」のデータをもとに、中古(築年別)と新築のm2単価を比べたのが次のグラフ。
「新築(65万円/m2)」に対して、「築0〜5年(55万円/m2)」で10万円/m2、「築6〜10年(50万円/m2)」で15万円/m2も安くなっている。
新築のm2単価を100としたときの、築年別の値を比べたのが次のグラフ。
新築に対して、「築0〜5年」で平均85%、すなわち15%も下落している。
「築6〜10年」で平均77%、「築11〜15年」で平均64%なので、下落幅からいうと「築0〜5年」がお買い得といったところか――。
新築マンションとの大きな違いは、先住者の生活の跡があるかないか。
先住者の生活の跡を気に掛けない人であれば、新築マンションよりも安価な中古マンションを選択しない手はないだろう。
価格以外にも中古マンションには、「現物を見て選べる」「即入居できる」「お隣さんを確認できる」などのメリットがある。
中古マンション購入の具体的な注意点については、「誰も教えてくれなかった!中古マンション購入の注意点 」ご参照。
では、新築マンションを選ぶ際の注意点は?
2-2 新築マンションを選ぶ際の注意点
できるだけ都心の駅チカ物件がいい。
ただ、駅にあまり近すぎると、周辺がざわつくので、駅徒歩数分といったところ。
郊外で、駅からバスを使わなければならないようなマンションはいくら安くてもNG。
少子高齢化の影響もあり、いまのマンションバブルが弾け、マンション余剰時代に入ると、ほとんど資産価値がなくなる。
資産価値がなくなるだけでなく、マンションが朽ち果てるまで、第三者に売却できない限り、毎月、管理費・修繕積立金を払い続けなければならない”ババ抜きマンション”になってしまう恐れがある(中古マンションの激安価格はババ抜きゲームの参加費 )。
新築マンションの具体的な選び方については、「新築マンション選び 失敗しない5つのステップ」をご参照。
2-3 想定外な状況を回避する
東日本大震災の前と後で、マンション選びが大きく変わった。
「マンション選びは立地選び」とはいうものの、震災前は、日当たりや交通騒音など、目の前の周辺環境に関心があった。
30年以内の発生確率が70%という、首都直下地震に対して、あまりリアルに受け止めていなかったのではないか。
約4分の3の地域が液状化の被害に見舞われた千葉県浦安市の惨状を目の当たりにして――首都直下地震が起こった場合のことを真剣に考えるようになったのではないか。
想定外な状況を回避するには、立地の吟味が必要だ。
どの地域が液状化しやすいのか?
大震災時の危険な地域はどこか?
「あなたの街の震災時の危険度を知る!厳選サイト」を参照されたし。
2-4 管理規約に「Airbnb禁止条項」があるマンションを選ぶ
見慣れない数名の外国人が大型のスーツケースを引きずりながら、大声で我が物顔にエントランスを出入りしている。
共用施設の温水プールやジムをルール無視で勝手気ままに使っている。気づいた時には遅い。そのマンションはすでにAirbnbに“感染”しているのだ。
これからは、AirBnB対策の規約の有無がマンションの資産価値を左右する。
管理規約に「Airbnb禁止条項」があるマンションを選ぼう!(マンション管理組合はAirBnB対策を急げ!)
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3.外国人が購入しているマンションの注意点
文化や習慣が大きく異なる外国人が増え過ぎると、マンション管理組合の運営が難しくなってくる。
修繕積立金の見直しのための合意形成が難しくなりスラム化する恐れがある。
必ずしも外国人とは限らないが、投資目的(転売目的)で”爆買い”された住戸がAirbnbで貸し出されると、不特定多数の外国人宿泊者が出入りするようになり、マンションのセキュリティが確保できないとか、共有設備である温水プールやジムがルール無視で使われる可能性がある(実録!Airbnbとタワーマンション住民との攻防)。
(本日、マンション広告1枚)