元経産官僚 岸博幸氏(慶應義塾大学教授)著『オリンピック恐慌』幻冬舎新書 (18/1/30)を読了。
日本経済を本当に再生するために残された時間は、東京オリンピックまでのあと2年くらいしかないという。
”健全な危機感”を持って、将来不安を減らすため個人でできることも記されている。気になった点を抜粋し、雑感(朱書き)を加えておいた。
ダメ首長のいる地域に住むリスク
社会保障サービスが手厚い自治体に住むようにするという判断は、将来に向けたリスクを軽減する観点から重要だという。
ダメ首長のいる地域に住むリスク
(前略)実はどの地域に住むかという判断も、自分の収入を増やすという観点からは大事なのです。特に人口減少と高齢化が急速に進む日本では、ダメな首長のいる地域に住んでいると、イノベーションがあまり創出されないのでその地域の生産性も潜在成長率も高まらず、将来的にはその地域の経済が衰退して、そこで働く人の収入も繁栄している地域ほど増えないという点で、それ自体が将来に向けたリスクになりかねないのです。
(中略)
サービスをどのような水準にするかと言う政策判断には、当然ながら戦略性やイノベーションの要素が含まれますので、社会保障サービスが手厚い自治体に住むようにするという判断は、将来に向けたリスクを軽減する観点から重要ではないかと思います。(P104-105)
※東京23区であればどこでもいいというわけではなく、ダメ区長のいる〇〇区は……(データで分かる区の実力 | ダイヤモンド・オンライン)。
消費税は16%台半ば、社会保障支出14%近く削減
社会保障支出を16%は削減しないと財政再建はできないというフェルドマン氏(モルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザー)の試算。
フェルドマン氏の試算
(前略)消費税率を最終的に先進匡の標準に近い14%まで上げるとして、それで財政再建しようと思ったらどうなるでしょうか。政府の社会保障支出を16%は削減しないと財政再建はできないという結果になります。
ちなみに、消費税は現行の8%の水準を維持して、それで財政再建を達成しようと思ったら、社会保障支出を32%削減する必要があるという結果になります。
まとめると、財政再建の最終的な姿は、
- 消費税は約21%まで引き上げ、社会保障支出は削減しない
- 消費税は16%台半ばまで引き上げ、社会保障支出は14%近く削減
- 消費税は8%のままで社会保障支出は約30%以上削減
のどれかとなります。
(P131)
岸氏は、常識的には2.(社消費税は16%台半ばまで引き上げ、社会保障支出は14%近く削減)を選ぶことになるという。
※消費税を8%から10%に上げるだけで揉めているのに、「16%台半ば」まで引き上げることは可能なのか?
カジノミクス失敗後、日本国の破綻を回避すべく「歳出半減」に挑んだ江島新総理の奮闘を読んでおきたい⇒真山仁 (著)『オペレーションZ』
「一生賃貸で過ごす方が賢い」は本当か
将来的に財政再建の影響で物価上昇率が高くなったら、家賃も連動して上昇するから、固定金利ローンの持家のほうが安心できるという。
「一生賃貸で過ごす方が賢い」は本当か
(前略)よく言われるのは「日本は人口減少が続き空き家率も上昇しているので、地価はいずれ大きく下がるから、マンションや家を購入するのは愚かであり一生賃貸で過ごす方が賢い」といった意見ですが、本当に正しいのでしょうか。(中略)
一生賃貸がいいと主張する人は、試算で家賃は一定と考える場合が多いですが、将来的に財政再建の影響で物価上昇率が高くなったら、家賃も連動して上昇します。それに対して、持ち家の場合は固定金利なら毎年のローン支払額が固定されます。将来の支出に関する不確実性を減らす観点からは、持ち家の方が安心かもしれないのです。(P248-249)
※物価上昇で家賃が高騰するリスクがあるから持家のほうがいいという。首都直下地震や南海トラフ巨大地震による持家損壊リスクもバカにできないぞ。⇒「空き家増加!若い世代は急いでマンションを買う必要はないのでは…」
本書の構成
全6章、309頁。
- 第1章 日本経済の再生に残された時間はあと2年
- 第2章 日本経済の低迷の原因は政策だけではない
- 第3章 年金はもらえるのか、社会保障は大丈夫なのか
- 第4章 稼ぐ力を身につけよう
- 第5章 資産運用の力を身につけよう
- 第6章 スマホの使い過ぎは人間の能力を低下させる
『オリンピック恐慌』