タワーマンションは、建てる時代から「維持する時代」に入りつつある。
2026年4月15日の第221回国会・衆議院「国土交通委員会」では、タワーマンションの老朽化対策や修繕積立金をめぐる質疑が行われた。
興味深いのは、「問題がある」と断定したわけでも、「問題はない」と整理したわけでもない点である。むしろ浮かび上がったのは、制度設計が実態把握を追いかけている現状だ。
山田瑛理 衆議院議員(チームみらい)と住宅局長・政務官・大臣との質疑応答を、会議録をもとにテキスト化(約2000文字)した。
※時間のない読者は、「質疑応答のポイント」と末尾の「雑感」だけでも目を通していただきたい。今回の議論の本質は、そこに集約されている。
山田瑛理 衆議院議員(チームみらい)

(2026年4月15日 国土交通委員会より)
山田瑛理 衆議院議員(チームみらい、当選1回、元ソニー・ミュージックエンタテインメント社員、上智大学卒、43歳)
山田:タワマン特有の管理課題、ガイドライン整備を提起
次に、タワーマンションの老朽化対応について、20階建て以上の超高層マンション、いわゆるタワーマンションですが、築30年超えのマンションが全国で177棟、6万戸あると言われております。まだまだ、国も業界もタワーマンション管理の正解を持っていない状況なのではということで質問をいたします。
タワマンには、ヘリポート、高層化特有の整備など、一般のマンションとは異なる要素が多く、修繕積立金の算定も含めて、通常のガイドラインでは対応し切れない部分があります。タワマン専用の長期修繕計画ガイドラインを整備するとともに、国として現状の実態把握を早急に進める必要があると考えますが、見解をお伺いします。
住宅局長:実態把握を進め、必要な取組を検討

宿本尚吾 住宅局長(1993年建設省入省、京大院卒、58歳)
お答えをいたします。
マンションの長寿命化を図るためには、修繕積立金を確保し、適切な周期で修繕工事を計画的に実施をしていくことが重要であります。
国土交通省におきまして、令和5年度に実施をいたしましたマンション総合調査によりますと、既に大規模修繕工事を実施をしているタワーマンションの事例が一定数存在をしておりますが、こうしたタワーマンションと一般のマンションとでは、直近の大規模修繕工事に要した費用に大きな違いはございませんでした。
他方で、御指摘のとおり、タワーマンションは特有の設備を有しておりますので、現在、そうした設備の維持管理に関する更なる実態把握を進めているところでございます。
その結果も踏まえまして、長期修繕計画作成ガイドラインの見直しなど、必要な取組を行ってまいりたいと考えてございます。
山田 :管理計画認定制度の実効性を問う
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
新宿区タワーマンション実態調査報告書によりますと、区内タワーマンションの約48%が積立金不足と回答しているというデータがあります。タワマンの特性を踏まえれば、将来的な積立金不足を防ぐための積立金下限基準の設定など、より踏み込んだ対策が必要です。
現状、マンション管理計画認定制度の利用推進が主な対応策ですけれども、利用割合は、タワーマンション以外を含めた全体でも3%程度にとどまっております。制度の実効性には疑問符がありますので、今後、法改正も視野に入れた改善が必要と考えます。
マンション管理計画認定制度の利用割合の目標数値設定を含め、どのような対策を検討しているのか、お聞きいたします。
政務官:管理適正化支援制度の拡充を進める

上田英俊 国交大臣政務官(衆議院議員、自民、当選3回、元議員秘書、早大政経卒、61歳)
お答えを申し上げます。
令和5年度に実施したマンション総合調査の結果によれば、約3割を超える管理組合において、あらかじめ策定した長期修繕計画に対して、修繕積立金の残高が不足しているという状況になっています。
このため、国土交通省では、適切な修繕積立金の確保を含め、多くのマンションで適正な管理が行われるようにするため、マンションの管理計画を認定する制度を令和4年に開始するなど、管理組合の自主的な取組を促してまいりました。
また、昨年のマンション関係法の改正では、施行後5年間で管理計画認定の取得割合を20%まで増加させることを目指し、認定の対象に新築マンションを追加するとともに、認定取得の働きかけや普及啓発を行うマンション管理適正化支援法人の制度を創設するなどの措置を講じたところでございます。
国土交通省といたしましては、こうした制度の施行状況等を踏まえつつ、タワーマンションを含めた、マンションにおける適切な修繕積立金の確保に向けて、更なる方策の検討を進めてまいります。
以上でございます。
山田:タワマンの将来リスクへの対応を求める
ありがとうございます。
最後に、大臣にお聞きさせてください。
区分所有法改正によって建て替えの決議要件は緩和されましたが、タワーマンションの建て替えが完了した国内事例はまだゼロであると思われます。修繕に関するガイドラインも未整備のまま、それでも2025年以降270棟、約9万7,000戸のタワーマンションが新たに供給をされる予定です。
住民のみならず、周辺住民にも大きな影響を及ぼしかねないこの現状に対しまして、国として早急に対策を打ち出すべきではないでしょうか。大臣の認識と今後の方針をお聞かせください。
大臣:適正な維持管理と再生を進める

金子恭之 国土交通大臣(自民、当選10回、元議員秘書、早大卒、65歳)
マンションの建設、供給は民間の経済活動そのものであり、これを一律に制限することは、慎重な検討が必要であると考えております。
他方で、マンションは所有財産であり、タワーマンションに限らず、所有者において適切に維持管理や再生を行っていただくことが重要であります。
令和7年のマンション関係法の改正では、マンションの新築時から適切な維持管理を促すため、分譲事業者において管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みを導入したところであり、タワーマンションも含めたマンションの適正な維持管理や円滑な再生に向け、引き続きしっかりと取り組んでまいります。
山田:終わります
御答弁いただき、ありがとうございました。終わります。
雑感
興味深かったのは、答弁が二層構造になっていた点である。
修繕費については、既存調査では一般マンションとの大きな差は確認されていないと説明する一方、高層特有設備の維持管理については「更なる実態把握を進めている」としていた。
前者は現時点で確認できているデータの話であり、後者はまだ十分に把握できていない領域の話である。つまり今回の質疑から見えてきたのは、「タワマン固有のリスクがどこにあるのか」を、国側もなお整理している段階にあるという点だ。
ただ、その間にも供給は続く。実態把握がなお途上にある一方で、新たなストックは増え続ける。
問題が今すぐ顕在化するとは限らない。しかし、将来の管理負担の大枠は、新築時の設計や長期修繕計画、積立金の考え方によって大きく左右される。
建てる時代から維持する時代へ移る中で、「将来の管理負担を誰がどのように担うのか」という問題は、タワマンだけではなく、マンション全体に共通する課題として浮上しつつある。
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