首都圏の分譲マンションの価格が高騰していることはメディアでよく報道されている。最近はマンションの賃料も上昇傾向にあるという報道もチラホラ。
マンションの賃料は契約更新のタイミングなどもあるので、分譲マンション価格よりも遅れて上昇する「粘着性」「遅効性」がある。いずれにしても、賃料が大幅に上昇すると持ち家でない世帯は困ってしまう。UR賃貸や住宅供給公社、低所得者を対象とした都営住宅といった公営住宅に頼れる人はいいが、それも難しいようであれば、最終的にはボロアパート……。
実際のところはどうなのか。
長期変動(1970年~)
まずは、東京23区の民営家賃、公営家賃の長期変動を可視化する。
具体的には、総務省統計局が毎月公表している「小売物価統計調査」のうち、次のデータを用いる。
※( )内の数字は、統計のコード(銘柄符号)。
- (3001)民営借家の家賃
※マンションだけでなく、アパート、戸建てなども含まれている。 - 公営家賃
- (3011)都道府県営住宅家賃(⇒都営住宅)
- (3013)都市再生機構住宅家賃(⇒UR賃貸)
- (3014)都道府県住宅供給公社住宅家賃(⇒JKK東京)
物価補正なし
まずは物価補正なしの家賃の長期変動(次図)。
民営家賃は、バブル期(87~90年)に大幅に上昇しているが、03年で頭打ち。リーマンショック以降下落傾向を見せている。
公営家賃のほうは、安価な居住環境を提供するという使命を担っていることもあり、上昇はなだらかだ。特に、都営住宅は低い家賃を維持し続けている。
物価補正あり
さらに、上図を2020年基準消費者物価指数の「総合」で補正してみた(次図)。
民営家賃がバブル期(87~90年)に大幅に上昇したことがよく分かる。
短期変動(2018年~)
上記に示した総務省統計局の「民営家賃」データには、マンションだけでなく、アパート、戸建てなども含まれている。
そこで、東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)が四半期ごとに発表している「首都圏賃貸取引動向」のうち、「マンション」と「アパート」のm2あたりの賃料データをもとに、18年以降の家賃(70m2換算)の推移と比較してみた(次図)。
マンション、アパートともに家賃は増加傾向にあるが、マンションのほうが上昇の幅は大きい。一方、民間家賃のほうは19年1月以降ほとんど変わっていない。
アパートは毎年度末に上昇し、年度初めに下落する傾向が見られる。新入生や新入社員による年度末需要の影響だろうか……。
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