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「首都圏白書」における羽田新ルートに係る記載内容の変遷

首都圏整備計画の策定と実施状況が記された「首都圏白書(首都圏整備に関する年次報告)」には羽田新ルートに係る内容も記載されている。
そこで羽田新ルートに係る記載内容の変遷を整理しておいた。

※時間のない方は、「要点」と「雑感」をお読みいただければと。


要点

「首都圏白書」における羽田新ルートに係る記載内容の変遷

のちに羽田新ルート運用開始へとつながっていく羽田空港の機能強化については、平成23年版(平成22年度)より以前には記述が見られない。

以下、平成22年版から古い順に、該当か所を引用していく。

平成22年版:(なし)

平成22年の首都圏空港(東京国際空港、成田国際空港)の容量拡大に併せ、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)については12の国・地域と、成田国際空港(以下「成田空港」という。)については22の国・地域と、それぞれ新規路線の開設や増便について合意している。また、羽田空港について24時間国際拠点空港化を進めるとともに、成田空港については更なる国際航空ネットワークの拡大によるアジア有数のハブ空港としての地位確立を目指すなどにより、オープン・スカイを推進する。

平成23年版:より一層の機能強化を図るべきである

羽田・成田の両空港は、我が国の産業・経済活動の基盤としての役割を担っているところであるが、我が国のさらなる成長のためにも、より一層の機能強化を図るべきである。両空港については、昨年5月の国土交通省成長戦略において示されたように、容量拡大、抜本的な機能強化、徹底的なオープンスカイの推進等の施策を着実に実行することとし、首都圏の都市間競争力の強化を図る。

平成24年版:より一層の機能強化を図るべきである

羽田・成田の両空港は、我が国の産業・経済活動の基盤としての役割を担っているところであるが、我が国のさらなる成長のためにも、より一層の機能強化を図るべきである。両空港については、平成22年5月の国土交通省成長戦略において示されたように、容量拡大、抜本的な機能強化、徹底的なオープンスカイの推進等の施策を着実に実行することとし、首都圏の都市間競争力の強化を図る。

平成25年版:より一層の機能強化を図るべきである

羽田・成田の両空港は、我が国の産業・経済活動の基盤としての役割を担っているところであるが、我が国のさらなる成長のためにも、より一層の機能強化を図るべきである。両空港については、平成22年5月の国土交通省成長戦略において示されたように、容量拡大、抜本的な機能強化、徹底的なオープンスカイの推進等の施策を着実に実行することとし、首都圏の都市間競争力の強化を図る。

平成26年版:機能強化方策の具体化について検討・協議を進める

2020年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにはその先を見すえ、首都圏空港の年間合計発着枠75万回化達成以降の首都圏空港の更なる機能強化に向けた具体的な方策の検討を進めているところ。具体的には、平成25年11月から交通政策審議会航空分科会基本政策部会の下に開催している首都圏空港機能強化技術検討小委員会において技術的な選択肢をとりまとめた後、関係自治体や航空会社なども参画した新たな場を設置し、機能強化方策の具体化について検討・協議を進める

平成27年版:機能強化方策の具体化について検討・協議を進めている

2020年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにはその先を見据え、首都圏空港の年間合計発着枠75万回化達成以降の首都圏空港の更なる機能強化に向けた具体的な方策の検討を進めているところ。具体的には、平成25年11月から交通政策審議会航空分科会基本政策部会の下に開催している首都圏空港機能強化技術検討小委員会において技術的な選択肢をとりまとめた後、関係自治体や航空会社等の関係者が参画した新たな場を設置し、機能強化方策の具体化について検討・協議を進めている

平成28年版:住民の幅広い理解を得るため、説明会の開催を行った

2020年の東京オリンピック・パラリンピック、さらにはその先を見据え、首都圏空港の年間合計発着枠75万回化達成以降の首都圏空港の更なる機能強化に向けた方策の検討を進めているところであり、具体的には、羽田空港における飛行経路の見直し等による機能強化方策の具体化に向けて、平成27年8月に関係自治体や航空会社等の関係者が参画した協議会を設置し、協議を進めているところである。
 特に、羽田空港については、住民の幅広い理解を得るため、説明会の開催を行ったところであり、平成28年夏までに環境影響に配慮した方策を策定する予定である。

平成29年版:丁寧な情報提供を行う

特に、羽田空港については、平成28年7月に、環境影響等に配慮した方策を策定し、羽田空港の機能強化に必要となる施設整備に係る工事費、環境対策費を国が予算措置することについて、関係自治体から理解を得た。今後は羽田空港の飛行経路の見直しに必要となる施設整備、環境対策を着実に進めるとともに、引き続き説明会を開催するなど、丁寧な情報提供を行う

平成30年版:住民の方々に理解を得られるよう努めていく

現在、飛行経路の見直し等により、平成32(2020)年までに発着容量を約4万回拡大する機能強化に取り組んでおり、必要となる航空保安施設や誘導路等の施設整備、騒音・落下物対策等を進めるとともに、4巡目となる住民説明会を開催するなど、丁寧な情報提供に努めているところである。引き続き、こうした対策や情報提供に着実に取り組み、住民の方々に理解を得られるよう努めていくこととしている。また、拡大される発着容量は、訪日外国人旅行者数の目標達成を戦略的に進めるために重要な路線や国際競争力の強化に資する日本発の直行需要が高い路線への活用を主眼とし、路線の選定作業に着手する。

令和元年版:住民の方々に理解を得られるよう努めていく

羽田空港においては、現在、訪日外国人旅行者の受入拡大や我が国の国際競争力の強化を主眼として、飛行経路の見直し等により、令和2(2020)年までに発着容量を約4万回拡大する機能強化に取り組んでおり、必要となる航空保安施設や誘導路等の施設整備、騒音・落下物対策等を進めるとともに、5巡目となる住民説明会を開催する等、丁寧な情報提供に努めているところである。引き続き、こうした対策や情報提供に着実に取り組み、住民の方々に理解を得られるよう努めていくこととしている。

令和2年版:引き続き丁寧な情報提供に努めていく

羽田空港においては、訪日外国人旅行者の受入拡大や我が国の国際競争力の強化を主眼として、令和2(2020)年3月29日から新飛行経路の運用を開始し、国際線の年間発着容量を約4万回拡大した。新飛行経路の運用にあたっては、騒音・落下物対策を着実に実施するとともに引き続き丁寧な情報提供に努めていくこととしている。

令和3年版:丁寧な情報提供が行われている

羽田空港においては、我が国の国際競争力の強化を主眼として、令和2(2020)年3月29日から新飛行経路の運用が開始され、国際線の年間発着容量が約4万回拡大された。新飛行経路の運用開始後は、騒音対策・安全対策や、丁寧な情報提供が行われているほか、関係自治体等から騒音軽減や新飛行経路の固定化回避に関する要望があることを踏まえ、令和2(2020)年6月に「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」が設置されている。検討会では、現在の滑走路の使い方を前提とした上で、騒音軽減等の観点から見直しが可能な方策がないかについて、最近の航空管制や航空機器の技術革新を踏まえ、技術的観点から検討が行われている。

令和4年版:丁寧な情報提供が行われている

新飛行経路の運用開始後は、騒音対策・安全対策や、丁寧な情報提供が行われているほか、関係自治体等から騒音軽減や新飛行経路の固定化回避に関する要望があることを踏まえ、国土交通省において「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」が開催されている。令和3(2021)年8月の検討会では、近年の航空管制や航空機の技術革新を踏まえ、安全性や騒音軽減効果等の観点から飛行方式の絞り込みが進められ、導入可能性のある2方式で検討が進められている。

令和5年版:丁寧な情報提供が行われている

新飛行経路の運用開始後は、騒音対策・落下物対策や、丁寧な情報提供が行われているほか、関係自治体等から騒音軽減や新飛行経路の固定化回避に関する要望があることを踏まえ、国土交通省において「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」が開催されている。令和4(2022)年8月の検討会では、飛行方式に関する技術的検証の進捗状況や今後のスケジュール等について報告がなされており、引き続き、安全性評価等の必要な取組が進められている。

雑感

平成22年版(2009年度)には、羽田新ルートにつながるような記載は見られないが、平成23年版(2010年度)からは以下に示すような具体的な表現が出てくる。

  • 平成23年版(2010年度)~平成25年版(2012年度)
    「より一層の機能強化を図るべきである」との表現が登場。
  • 平成26年版(2013年度)~平成27年版(2015年度)
    「機能強化方策の具体化について検討・協議を進める(進めている)」と羽田新ルートへの具体化検討が進む。
  • 平成28年版(2016年度)~令和元年版(2019年度)
    羽田新ルートの運用開始に向けて、丁寧な情報提供、住民の理解が得られるよう努める、といった表現が続く。
  • 令和2年版(2019年度)
    羽田新ルート運用開始(19年3月)によって、「引き続き丁寧な情報提供に努めていく」に表現が変化。
  • 令和3年版(2020年度)~令和5年版(2022年度)
    「丁寧な情報提供が行われている」と国交省が自己認定している。

羽田新ルート運用開始(19年3月)後の首都圏白書には、3年続けて「丁寧な情報提供が行われている」と国が断定している。事実認定するのは国ではなく国民であろう。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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