不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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不動産の表示公正競争規約一部改正|強化・緩和規定、改正されなかった内容

不動産業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約」が一部改正され9月1日から適用されることをご存じだろうか。

新しい規約は「新 表示規約・同施行規則」として不動産公正取引協議会連合会のホームページに公開されている。

また、新旧対照表と「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」(PDF:1.5MB)も公開されている(次図)。

表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット
(表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット)

 

以下、主な改正点につき「強化された規定」と「緩和された規定」を整理する。あわせて今回改正されなかった内容につき私見を述べる。


主なポイント

強化された規定

交通の利便性・各種施設までの距離または所要時間

以下の改正によって、より実態に近い時間を表示することが求められるようになった。

(1)最も遠い住戸までの所要時間の表示

  • 改正前は最も近い住戸の徒歩所要時間等を表示することになっていたが、改正後は最も遠い住戸の所要時間等も表示するになった(規則第9条第8号)。
  • この改正によって、新築分譲マンションで複数棟販売する場合には、最も近い棟の出入り口だけでなく、最も遠い棟の出入り口からの徒歩所要時間等の表示も必要になった。

    て最も遠い住戸(区 画)の所要時間等も表示
    (最も近いD棟への住戸だけでなく、最も遠いA棟への住戸)

(2)朝の通勤ラッシュ時の所要時間の明示

  • 改正前は「通勤時の所要時間が平常時の所要時間を著しく超えるときは通勤時の所要時間を明示すること」と規定されていたが、改正後は「朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示し、平常時の所要時間をその旨を明示して併記できる」と変更された(規則第9条第4号ウ)。
  • この改正によって、朝のラッシュ時の通勤時間の表記が義務化された。

(3)所要時間に乗換えに概ね要する時間を含める

  • 改正前は「乗換えを要するときは、その旨を明示すること」と規定されていたが、改正後は「乗換えを要するときは、その旨を明示し、所要時間に乗換えに概ね要する時間を含めること。」に変更された(同号エ)。
  • この改正によって、バーチャルな所要時間は認められなくなった

(4)建物の出入り口を起点とすることを明文化

  • 物件の起点について、マンションやアパートについては、建物の出入り口を起点とすることが明文化された(規則第9条第7号)。

(5)「最寄駅等⇒物件」ではなく「物件⇒最寄駅等」に変更

  • 改正前は最寄駅等から物件までの徒歩所要時間を明示するよう規定されていたが、改正後は物件から最寄駅等までの徒歩所要時間を明示すること(バス便の物件も同じ。)に変更された(規則第9条第3号)。
  • 改正理由として、「朝の通勤時の交通の便(物件から最寄り駅へ向かうため)に修正」が掲げられている(新旧対照表P33)。※改正の必然性が低いのでは
特定事項の明示義務

擁壁に覆われていない崖下の建築、制約がある旨の表記義務化

  • 改正前は土地が擁壁によって覆われない崖の上または崖の下にあるときは、その旨を明示することになっていたが、改正後は建物を建築する場合に制限が加えられているときは、その内容も併せて明示することになった(規則第7条第11号)。
  • 表記例:「本物件は擁壁に覆われていない崖下にあるため、建築する際は建物の主要構造部を鉄筋コンクリート造にする必要があります」
必要な表示事項(別表)に新設(追加)された事項

引渡し可能年月」「取引条件の有効期限」追記

  • 別表4から別表9のインターネット広告の必要な表示事項に、「引渡し可能年月(賃貸物件においては、入居可能時期)」と「取引条件の有効期限」(分譲物件のみ)が追加された。

「管理員の勤務形態」追記

  • 別表6(新築分譲マンション・一棟リノベーションマンション(小規模団地を含み、販売戸数が1戸のものを除く。))に「管理員の勤務形態」が追加された。

別表6 新築分譲マンション

見やすい大きさの文字による表示

改正によって以下が削除され、改正後は「規約に規定する「見やすい大きさの文字」とは、原則として7ポイント以上の大きさの文字による表示をいう」だけが残された。

  • 7ポイント未満の大きさの文字による表示であっても、文字の大きさのほか、文字数、レイアウト、書体、文字色、文字間隔、行間隔等を勘案して総合的に判断し、見やすい大きさの文字であると認められる文字による表示を含む。)をいう。
  • 改正後は「総合的判断」による7ポイント未満の大きさの文字の使用はできなくなるはず……

緩和された規定

物件名称の使用基準

(1)直線300m以内の海(海岸)・湖沼・河川の名称使用

  • 物件が海(海岸)、湖沼、河川の岸若しくは堤防から直線で300m以内にあれば、これらの名称も使用できるようになった(規約第19条第1項第3号)。 

(2)50m以内の街道の名称

  • 改正前は街道の名称は、物件が面していないと使用できなかったが、改正後は直線で50m以内であれば使用できるようになった(同第4号)。
未完成の新築住宅等の外観写真

建物が未完成等の場合、他建物の外観写真使用可(条件付き)

  • 改正前は建物が未完成等の場合には、取引する建物と「規模、形質及び外観が同一の他の建物の外観写真」に限り表示が認めらえていたが、改正後は同一でなくても以下の条件に該当すれば、他の建物の外観写真を表示できるようになった(規則第9条第22号・下記参照)。

    他の建物の外観写真を使用できる条件

    •  取引する建物を施工する者が過去に施工した建物であること・ 構造、階数、仕様が同一であること
    •  規模、形状、色等が類似している
    なお、この場合において、当該写真を大きく掲載する等取引する建物であると誤認されるおそれのある表示をしてはなりません。
  • 表記例:「前回販売したA号棟の外観写真です。扉や窓の開口部の位置等のデザインが異なります」
学校等の公共施設やスーパー等の商業施設を表示する場合

駅だけでなく、学校・公共施設・スーパー等への徒歩時間表示が可能となった。

  • 改正前は「物件からの道路距離を記載すること」とされていたが、改正後は徒歩所要時間の表示も認められるようになった(規則第9条第29号、第31号)。
  • 表記例:小学校まで徒歩3分
二重価格表示

旧価格の公表期間の短縮

過去の販売価格を比較対象価格とする二重価格表示の規定(二重価格表示をするための要件)が以下のとおり変更された。(規則第12条)。

  • 過去の販売価格の公表日・値下げした日を明示すること。
    ※ 「公表時期」が「公表日」に、「値下げの時期」が「値下げの日」に変更された。
  • 比較対照価格に用いる過去の販売価格は、値下げの直前の価格であって、値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格であること。
    「3か月以上前に公表された」が「直前の」に、 「3か月」が「2か月」に変更された
  • 過去の販売価格の公表日から二重価格表示を実施する日まで物件の価値に同一性が認められるものであること。(新設)

改正理由として、「媒介契約(3か月間)中に二重価格表示を可能とするため旧価格の公表期間の短縮するとともに、規定を明確にした」が掲げられている(新旧対照表P44)。業者のための改正

今回改正されなかった内容(私見)

不動産の表示に関する公正競争規約を改正する際に、かつて「任意の意見募集」扱いではあったが、パブリック・コメントによって広く国民に変更案の是非を問う手順が踏まれた時期があった。

上記パブコメが実施された12年1月以降、同規約変更案に係るパブコメが実施されなくなったことと、第2次安倍政権が野党から政権を奪還した(12年12月26日)ことと関係があるのだろか……。

それはさておき、不動産事業者・事業団体が作成した変更案がパブコメで手順を踏まなことで今回、事業者寄りの緩和規定が盛り込まれた。

さらに言えば、マンションチラシを5千枚以上観測してきた筆者が以前から気になっていた内容が反映されていない。いずれも事業者が消費者には知らせたくない情報ばかりだろう。以下7件、解説する。

間取り図の表示ルール化

「別表6」(新築分譲マンション)をみると、「建物の配置図及び方位」が「パンフレット等」への掲載を義務付けられているだけ。そもそも「間取り図」の掲載義務など、どこにも記されていない

間取り図は、マンション選びをする人にとって最重要情報のひとつ。予定販売戸数の中から、どのタイプの間取り図をチラシに掲載すべきか、また選択したタイプの間取り図をどのように並べるべきなのかなど、具体的な方法を規定するのは難しいが、たとえば次のようなルールがあれば、間取り図に係る優良誤認を減らすことができるのではないか。

  • 予定販売住戸に中住戸タイプが含まれている場合には、必ず中住戸タイプの間取り図を掲載すること
  • チラシに複数の間取り図を掲載する場合には、住棟内の住戸の並びにそろえること
  • 間取り図は、チラシの上側を北方向として掲載すること
天井高・階高の表示義務化

分譲価格と関連性が高い専有面積に関心を示す人は多いが、天井高さ(または階高)に関心を持つ人はそれほど多くない。平面的な広がりだけでなく、高い天井といった3次元的な広がりがあって、はじめて室内の広さを実感することができる

高い天井(高い階高)を確保するには、太い柱や梁が必要であることから、専有面積と同様に分譲価格に影響する。分譲価格に敏感に反応する人は、専有面積だけでなく、天井高さ(または階高)についてもっと関心を持ってよい。

案内図の表示義務化

マンションを選ぶときには、買い物のできる店との距離、最寄りの公共施設の有無といった利便性に係わる情報や交通騒音・鉄道騒音の有無や公園緑地の多さといった周辺環境に係わる情報などが必要だ。
消費者は、住むための器としてのマンションを買うと同時に、利便性や周辺環境も含めた居住環境を買っているのだ

周辺騒音環境の表示義務化

客観性が担保された騒音データの表示は難しいことから、例えば、幹線道路・鉄道までの直線距離の表示を義務付けてはどうか。

「期分け」表示のルール化

売れ残りを避けるために、なるべく人気が均等化するように、マンション全体を小分けして時期を変えて販売するのが「期分け」。
ただ、「期」だけだと「2期」「3期」と数字が進むにつれて、売れ行き不振状況がバレバレ。そこで「期」をさらに細分化し「次」という表現が編み出された。「期」と「次」をうまく組み合わせることで、売れ行き不振状況をカムフラージュすることが可能となるというわけだ。

「期」と「次」を混在させるのは、まったくの売主都合の“販促ワザ”だ。どう考えても、消費者の利益にかなっていない。

「次」や「〇〇ステージ」といった紛らわし表現を使うことを禁止し、「期」に統一したらどうか。

発売済み戸数・契約済み戸数の表示義務化

売れ行き情報は、消費者にとって重要な判断材料のひとつ。

「ブランド地域名」+「方位」というネーミングの抜け穴防止

「当該物件の所在地において、慣例として用いられている地名又は歴史上の地名がある場合は、当該地名を用いることができる」(規約第19条第1項第1号)とされている。

今回の改正で海(300m以内)や街道(50m以内)と違って、「慣例として用いられている地名」の適用範囲に具体的な距離情報が追加されなかったことで、たとえば非銀座地区であっても「銀座」の名称を取り込んだマンションを明確に排除できない。「東銀座駅」から1km以上離れているマンションであっても、「〇〇銀座東〇〇」という名称が使われてしまうのである。

「ブランド地域名」+「方位」を組み合わせることで、非豊洲地区に建つマンションだって、「豊洲東タワー」とか、「豊洲南タワー」というようなネーミングが可能だ。

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2022年6月1日、このブログ開設から18周年を迎えました (^_^)/
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