不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


銀行による不動産業務への進出(政府答弁)

第208回国会(22年1月17日~6月15日)の衆議院の質問主意書を眺めていて、銀行による不動産業務への進出に係る質問主意書があることに気が付いた。

山本有二 衆議院議員(自民党)が6月1日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。


質疑応答のポイント

山本有二 衆議院議員
( 憲法審査会 22年3月3日動画より)

山本有二 衆議院議員(11期、自民党、早大法卒、70歳)

質問:銀行の不動産仲介業参入・保有不動産の賃貸自由化、認めるべきではない

銀行が不動産仲介業に参入したり、保有不動産の賃貸を自由化した場合、銀行にとって他業を営むことによるリスクが発生する懸念があるのみならず、過剰融資や抱き合わせ営業による利益相反やモラルハザードを発生させ、また、優越的地位の濫用につながるなど、消費者及び不動産市場全体に多大な不利益を生じさせる懸念があり、銀行の不動産仲介業参入及び保有不動産の賃貸自由化について認めるべきではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

回答:保有不動産の賃貸自由化、監督指針に則り判断してまいりたい

御指摘の「不動産仲介業」が宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第2号に規定する宅地建物取引業のことであるとすれば、銀行は、銀行法(昭和56年法律第59号)第12条の規定に基づき、その業務として、当該宅地建物取引業を営むことはできない

銀行が当該宅地建物取引業を営むことは、銀行の健全性の確保や利益相反が生じるおそれ等に十分留意する必要があるため、お尋ねの「不動産仲介業参入」については、関係者の意見を踏まえつつ、中長期的な検討を要するものであり、直ちにこれを認めることは困難であると考える。


また、お尋ねの「保有不動産の賃貸自由化」については、金融庁が定めた「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(以下これらを合わせて「監督指針」という。)に基づき、銀行の保有不動産の賃貸に係る業務が、銀行法第10条第2項に規定する「その他の銀行業に付随する業務」の範ちゅうにあるかどうかを判断することとしており、銀行が無制限に当該賃貸に係る業務を行えるものではなく、同庁としては引き続き、監督指針に則り、銀行の保有不動産の賃貸に係る業務の「その他の銀行業に付随する業務」への該当性について判断してまいりたい。

雑感

なぜ、当選11回の自民党議員がわざわざ質問主意書を出したのか

質問主意書とは質問時間を確保できない野党議員のためにあるものと思っていたら今回、当選11回の自民党山本有三議員からの質問主意書であったことに驚かされた。

過去に金融担当大臣(第1次安倍内閣)や農林大臣(第3次安倍第2次改造内閣)を歴任した大物議員なのだから、官僚を呼びつけて聞けばいいように思うのだが、なぜわざわざ質問主意書を出したのか。21年9月に弱小の石破派を退会し、もはや官僚を呼びつけるほどの力がないからなのか。まさかそのようなことはあるまい。

銀行による不動産業務への進出阻止は、不動産業界最大の関心事

銀行の不動産仲介業参入阻止は、不動産業界最大の関心事のひとつであって、2年前(20年5月27日)に全宅連の坂本会長が「銀行の不動産仲介業参入阻止に関する坂本会長コメント」を発表している。

最近ところでは衆議院国土交通委員会で22年4月1日、城井崇衆議院議員(立憲、4期)から「銀行の不動産仲介業参入及び保有不動産の賃貸の自由化について」問われた斉藤鉄夫国交大臣が、銀行による不動産業への参入は極めて慎重に検討されるべき課題として、「銀行法を所管する金融庁と実情を共有し、対応してまいります」と、今回の質問主意書と同様、曖昧に答えている

(斉藤国務大臣)

銀行は、他業を営むことによるリスクの遮断、優越的地位の濫用の防止、利益相反取引の防止等の観点から、銀行法上、他業禁止規制が導入されているものと承知しております。

これに加えて、不動産取引に関連する膨大な顧客情報を有している銀行が不動産業へ参入した場合、特に中小宅建業者と比較して極めて有利な立場に置かれるため、不動産業の健全な発達、改善が阻害されるおそれがあるものと考えられます。

したがって、不動産業を所管する立場としては、銀行による不動産業への参入は極めて慎重に検討されるべき課題と考えており、今後も、銀行法を所管する金融庁と実情を共有し、対応してまいります

衆議院 国土交通委員会22年年4月1日|国会会議録

銀行の不動産仲介業参入は現状阻止できているが、保有不動産の賃貸の自由化のほうはどうか。万が一国交省が金融庁との綱引きに負けるようなことがあれば、中小宅建業者は大打撃を受けるということになるのかもしれない。

あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.