小池百合子氏は、政界の荒波を乗り越えるのは得意だが、肝心の公約実行力には疑問符が付く。「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」「都電中ゼロ」など7つのゼロ公約で達成できたのは「ペット殺処分ゼロ」のみ。
昨年まで小池氏はマスメディアにほとんど取り上げられなかった。ところが、新型コロナの感染拡大が始まって以来、連日マスメディアに露出。それまで50%前後だった支持率が5月に69.8%へと跳ね上がった(JX通信社 東京都内世論調査)。
コロナ禍における小池劇場
マスメディアを巧妙に利用して、有利な選挙戦に持ち込もうとする流れは、都民の声総合窓口に寄せられた「知事への声」の件数からも観測できる(次図)。
小池都知事が誕生して3か月ほどは多かったのだが、その後激減。再び増加したのは、希望の党が結成された17年9月と翌月の衆議院議員総選挙(投開票日10月22日)。希望の党が不発に終わって以降、メディアの露出の低下と共に「知事への声」も減少。
その後、「学歴詐称疑惑(18年6月文藝春秋)」「二階俊博幹事長による再選支持(19年3月)」「五輪マラソン札幌市へ(19年10月)」といったイベントが発生するたびに件数が増加。そして現在のコロナ禍である。
「都民の声」激増、ルーチン処理が追い付かず
上図を見て「あれっ?」と思われた方は鋭い。
じつは「知事への声」の棒グラフが2月分までしか描かれていない。毎月末、都HPで公表されてる「『都への提言、要望等の状況』月例報告」のうち3月・4月分が未公表なのである。
なぜ公表しないのか、「生活文化局広報広聴部都民の声課」に電話照会した内容を以下に記す。
一言でいえば、件数が急増して処理が追い付かないということのようだ。
- 当方:「都への提言、要望等の状況」が3月分以降公表されていないのはなぜですか?
- 相手:急激に件数が増えて処理できていない状態にあります。
- 当方:コロナの関係でリモート業務になって処理が遅れているということでしょうか?
- 相手:それはありません。むしろ人を増やして対応しようとしています。
- 当方:件数が多いとは、何万件くらいなのですか?
- 相手:そっ、そのくらいです。
- 当方:えつ、そのくらいって、何にもいっていないんですが……。10万件とか20万件とかですか?
- 相手:分からないんです。
- 当方:概数でいいんですけど、分かりませんか?
- 相手:未だ処理しているところなので分からないんです。
- 当方:では、公表予定はいつ頃ですか?
- 相手:3月分だけでもなんとか。
- 当方:いつ頃ですか?
- 相手:6月中は難しいです。
- 当方:7月以降ですね?
- 相手:はい。
コロナ対応で小池都知事がマスメディアに露出すればするほど、「都民の声総合窓口」への件数が増えるのであろう。
都民の声総合窓口
現在、都民の声総合窓口に、極めて多数の御意見等が寄せられており、お寄せいただいた提言・意見等を所管する各局等に伝達するまでに、相当の日数を要しております。
大変申し訳ございません。
順次受付処理をしておりますので、何とぞ御理解いただきますよう、お願いいたします。(以下略)
都知事選挙(投票日7月5日)に向かって、小池劇場開催中……。
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