第201回 国会 衆議院「外務委員会」において4月3日、「羽田空港の新飛行ルートについて」阿久津幸彦議員(立憲民主党)の質疑応答があった。
ネット中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約3千文字)しておいた。
※以下超長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
- 阿久津:新飛行ルート、横田空域を通過する?
- 部長:飛行距離は20km程度、飛行時間は2、3分程度
- 阿久津:横田空域内、新飛行ルート民間機、国土交通省が制官?
- 部長:日本側が一元的に管制を行います
- 阿久津:米軍機が同じ空域内を飛ぶ場合に、管制は国交省がやる?
- 部長:羽田新経路の周辺空域では米軍機は飛行しない
- 阿久津:米軍機については、米軍が航空管制?
- 部長:米軍機が飛んでいる場合、航空管制は米軍が行う
- 阿久津:米軍機についても航空法第6章は適用?
- 部長:第6章、一部の規定については適用される
- 阿久津:外務大臣の横田空域縮小・撤廃への決意?
- 参事官:今後とも、米軍と調整してまいりたい
- 阿久津:(大臣、)一言何か?
- 大臣:我が国の空域を一元的に管制をしていくということが極めて重要だ
- 阿久津:横田空域返還という交渉に向けて、粘り強い努力を
- ★雑感★(残念な締めくくり)
阿久津:新飛行ルート、横田空域を通過する?
阿久津幸彦 衆議院議員(立憲民主党、4期、ジョージ・ワシントン大学院修了、63歳)
日米関係、日米同盟に関連して、「羽田空港新飛行ルートの運用開始に伴う横田空域の返還の必要性について」伺いたいと存じます。
羽田新飛行ルートの運用が3月29日から開始されました。新ルートでは原則、着陸角度を通常の3.0度から3.45度に引き上げました。
3月28日付の東京新聞によれば、2月に航空会社が実際に客を乗せて実施した「実機飛行確認」では、原則通りの急角度3.45度で着陸した旅客機は50%程度、50%台後半。半数近い機長が安全性の考慮などから降下途中で着陸角度を変更。急角度への機長からの警戒感が明らかになりました。
国交省は、ルート下の住民のための騒音軽減を急角度着陸の理由としていますが、同じ国交省の実態確認での騒音は、19か所の測定所の平均で0.1から1.1デシベル小さかっただけで、誤差の範囲と話す専門家もいます。やはり、横田空域での米軍機との接触を避けることが3.45度の急角度着陸に理由ではないのか。
そこで質問します。新飛行ルートは、横田空域を通過するのか。横田空域を通過する場合、どの地域上空で何キロ、何分にわたってか、お答えください。
部長:飛行距離は20km程度、飛行時間は2、3分程度
国土交通省 航空局 河原畑徹 交通管制部長(東大経済卒、90年運輸省入省)
お答え申し上げます。都心上空を飛行する羽田新経路は、いわゆる横田空域の一部を通過するものであります。
羽田新経路により羽田空港に到着する航空機は、横田空域の通過にあたりまして、埼玉県では、さいたま市、蕨市、戸田市、朝霞市、和光市、東京都では、板橋区、練馬区、中野区の上空を飛行いたします。
横田空域内の飛行距離および飛行時間につきましては、使用する経路により異なりますが、おおよそ飛行距離は20km程度、飛行時間は2、3分程度と見込んでおります。
阿久津:横田空域内、新飛行ルート民間機、国土交通省が制官?
続いて伺います。横田空域内での航空管制について、「米軍機については米軍が行い、羽田新飛行ルートを使う民間機については日本の国土交通省航空管制官が行う」という理解でよろしいんでしょうか。
部長:日本側が一元的に管制を行います
お答え申し上げます。羽田新経路により横田空域を通過する航空機につきましては、日本側が一元的に管制を行います。
阿久津:米軍機が同じ空域内を飛ぶ場合に、管制は国交省がやる?
今の(答弁)は、米軍機が同じ空域内を飛ぶ場合に、管制は国交省がやるということですか。
部長:羽田新経路の周辺空域では米軍機は飛行しない
お答え申し上げます。
羽田新経路の運用時におきまして、横田空域内を民間航空機が飛行している間は日本側が一元的に管制を行っておりますが、羽田新経路の周辺空域では米軍機は飛行しないこととなっております。
阿久津:米軍機については、米軍が航空管制?
ちょっとここのところが、私分からないんですけれども。周辺域と言いましても、横田空域はかなり広いわけですよね。それから非常時もある。そういう中で、できるだけ(空域を)分けたんだと思うんですね。
民間機については国交省の航空管制官がやるということになったと思うんですけども、一方で米軍機については国交省がやってるわけじゃないですよね。
近く、あるいは少し離れていたとしても、米軍機についてはもちろん米軍が航空管制を行ってるということをもう1回確認したい。
部長:米軍機が飛んでいる場合、航空管制は米軍が行う
お答え申し上げます。横田空域内で羽田新経路と離れたエリアで米軍機が飛んでいる場合には、その航空管制については、米軍が行うことになっています。
阿久津:米軍機についても航空法第6章は適用?
さらに伺いたいというふうに思います。
横田空域内で米軍機と日本の羽田を行き来する民間機がいわば共有する空域帯が私は存在しているんだと思うんですけれども、その法律適用について、民間機については航空機の安全運航を定めた航空法第6章(航空機の運航)が適用されると思いますが、米軍機についても航空法第6章(航空機の運航)は適用されるんでしょうか。
部長:第6章、一部の規定については適用される
お答え申し上げます。
米軍機につきましては、日米地位協定の実施に伴う航空法の特例法によりまして、航空法第6章の適用が除外されておりますが、公共交通の安全確保の観点から第6章の規定のうち第96条の航空交通の指示や第97条の飛行計画の承認等の一部の規定については適用されることとなっており。
阿久津:外務大臣の横田空域縮小・撤廃への決意?
大枠においては航空法特例法第3項、米軍機については航空法第6章の規定は適用しないということだったというふうに思うんですけども。
これらは日米地位協定に基づく日米合同委員会、すなわち外務省の北米局長と在日米軍の副司令官をトップとする枠組みで、地位協定の具体的な解釈や運用について協議する機関ですけれども、原則非公開なんですね。
そこで外務大臣にお尋ねしたいと思います。羽田新飛行ルートへの3.45度という急角度着陸が本当に100%安全なものなのか。ルート下の住民をはじめ、国民の不安が高まっています。
私は日本政府がこの横田空域の返還をもっと強く米国に迫るべき時だと考えております。
外務大臣の横田空域縮小・撤廃への決意を伺いたいと思います。
参事官:今後とも、米軍と調整してまいりたい
外務省 有馬裕 官房参事官(東大卒、ハーバードロースクール修士、91年外務省入省)
お答え申し上げます。
横田空域の問題につきましては、米軍のプレゼンスに伴う地元への影響を軽減するため、これまで計8回にわたり、いわゆる横田空域の返還を順次受けるなど、米軍の部隊運用上の所要を満たしつつ、国民生活の向上を図る努力を行ってきてはいました。
一方、横田飛行場は在日米軍司令部や第5空軍司令部が置かれており、また有事においては、極東地域全体の兵站基地となる在日米軍の中枢基地であります。
このため米側からは「今後ともこうした機能の維持が必要である」との説明を受けてきているところでございます。政府としては、日米安全保障条約に基づく米軍の存在と国民生活の調和を図る取り組みを行ってきております。
今後とも、いわゆる横田空域の返還については、わが国の空域を一元的に管制する観点から、関係省庁と協力しながら米軍と調整してまいりたいと考えております。
阿久津:(大臣、)一言何か?
私も別に米国と敵対せよというふうに言ってるつもりは全くありません。そうではなくて、大臣ね、日本の首都圏をすっぽり覆うように横田空域が広大な地域で存在していますよね。
この横田空域の存在は、日本と同じように第二次世界対戦で敗戦国となったドイツやイタリアと比較しても極めて異常で特別な存在であるということを常に忘れないでいただきたいというふうに考えておりますけれども、(大臣、)一言何かございますか。
大臣:我が国の空域を一元的に管制をしていくということが極めて重要だ
茂木敏充 外務大臣(自民党、9期、東大経済卒、ハーバード大修士、元マッキンゼー社員。64歳)
日米安保条約に基づきます米軍の存在、それと国民生活の調和をどう図っていくか、極めて重要であると考えておりまして、我が国の空域を一元的に管制をしていくということが極めて重要だと、こういう観点から取り組んで進めたいと思っております。
阿久津:横田空域返還という交渉に向けて、粘り強い努力を
今回、東京オリンピック・パラリンピックが行われるということで、世界が注目している中で、横田空域が日本の首都東京にはあるんだと。
また、米軍がコントロールしてるところがあるんだということを世界に知っていただく。世界の世論にも緩やかに訴えていくということは私は大事な、ある意味でビックチャンスなんだと考えております。
今回、私はこの航空路を通すために国交省も外務省も相当頑張られたと思うんですよ。
でも、是非、引き続きこの交渉に向けて、横田空域返還という交渉に向けて、粘り強い努力を続けていただきたいというふうに思います。
★雑感★(残念な締めくくり)
羽田新ルート問題については、国会の国土交通委員会で取り上げられることは多いが、外務委員会で取り上げられたのは珍しい。
ただ、国会会議録を検索してみると、阿久津議員が昨年10月23日の外務委員会でも羽田新ルートと横田空域の問題を取り上げていることが確認できる。
外務委員会ということもあり、前回同様、阿久津議員の切り口は、横田空域の管制制約を絡めた羽田新ルートの危険性の指摘となっている。
阿久津議員が羽田新ルートを取り上げたところまではよかったが、「私はこの航空路を通すために国交省も外務省も相当頑張られたと思うんです」とか、「引き続きこの交渉に向けて、横田空域返還という交渉に向けて、粘り強い努力を続けていただきたい」という締めくくりはいただけない。
立憲民主党が羽田新ルートへのスタンスを明確にしていないので、このような残念な締めくくりにするしかなかったのか……。
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