航空騒音軽減のためとして、国交省が打ち出した降下角を3.45度に引き上げる追加対策。尻餅事故やハードランディングのリスクが指摘されているなかで、3月29日から羽田新ルートの本格運用が始まった。
都心上空を通過して羽田空港に到着するルートが運用されるのは、南風時の15時から19時の時間帯に限られる。その南風が最初に吹いたのは4月3日(金)だった。
騒音軽減のための降下角3.45度、有名無実化か
航空各社が2月に実施した「実機飛行確認」で、原則通りの急角度(3.45度)で着陸した旅客機の比率は50%台後半程度にとどまったことを東京新聞が報じている。
羽田新ルート、急角度着陸5割台止まり 2月実機飛行 機長らに警戒感
通常より急角度着陸の羽田空港新飛行ルートの運用が29日から始まるのを前に、航空各社が2月に実施した「実機飛行確認」で、原則通りの急角度で着陸した旅客機の比率は50%台後半程度にとどまったことが分かった。
半数近い機長が安全性への考慮などから降下途中に着陸角度を変更。急角度への機長らの警戒感が浮き彫りになった。
(中略)計7日あった実機確認で412機が原則通りの3.45度の急角度で着陸体勢に入った。
しかし、国交省がこれらの旅客機を8カ所から測定したところ、急角度着陸を原則通り維持した旅客機は8カ所からの測定で50%台にとどまっていた。残りの旅客機は着陸途中でより緩やかな3.0度に切り替えていた。最も多い363機を調査できた東京都品川区地点からの測定では急角度を維持していたのは約56%だった。
日本航空と全日本空輸は今月上旬の記者会見で、実機確認した機長へのアンケートを公表。
日航は回答者53人のうち3.45度のまま着陸したのは約2割と説明した。松並(まつなみ)孝次機長は「より慎重な判断で(多くの機長が途中で)3.0度に変えたと認識している」と語った。全日空は回答者中「3.45度で降りた」と答えた機長は51人中2人。その2人も3.0度に切り替えた可能性があるとした。(以下略)
(東京新聞 3月28日)
そもそも降下角を3.45度に引き上げたのは、騒音軽減は方便で、「横田空域」を避けるためだった疑惑が指摘されている。
米軍には「降下角3.45度の引き上げで、横田空域内のトラフィックと垂直間隔を確保しています」と説明する一方で、実際には3.45度で入ったあと途中で3.0度に下げることを容認するという、玉虫色の運用をしているということではないのか(次図)。
FAQ冊子6.2_P73に筆者がピンクを追記
玉虫色の運用の結果、降下角3.45度で入ったあと途中で3.0度に下げるという降下ルートが主になり、降下角3.45度を維持するルートは有名無実化するのではないのか。
南風時到着ルートの降下角を可視化
航空騒音軽減のためとして、国交省が打ち出した降下角を3.45度に引き上げる追加対策。尻餅事故や、ハードランディングのリスクが指摘されているなかで、3月29日から羽田新ルートの本格運用が始まった。
都心上空を通過して羽田空港に到着するルートが運用されるのは、南風時の15時から19時の時間帯に限られる。
その南風が最初に吹いたのは4月3日(金)だった。15時から18時にかけて、「A滑走路到着ルート(西側)」17機、「C滑走路到着ルート(東側)」51機の計68機が通過。
※詳しくは、「南風、都心低空飛行初日(4月3日)」参照。
さて、これら68機の降下角はどうだったのか?
Flightradar24のデータをもとに、都心低空飛行初日(4月3日)の68機(A滑走路到着ルート17機、C滑走路到着ルート51機)の飛行高度を可視化することにする。
「FAQ冊子v6.2」P43。ピンク文字は筆者加筆。
A滑走路到着ルート(17機)
17機の飛行高度を可視化した結果を下図に示す。
中野駅上空付近で原則通りの3.45度の急角度で着陸体勢に入ったあと、渋谷駅上空の手前から、より緩やかな3.0度に切り替えた航跡が何機も確認できる。
※国交省の想定高度(青色数字)は、「FAQ冊子v6.2」に掲載されている新飛行経路図中の数字による。
C滑走路到着ルート(51機)
51機の飛行高度を可視化した結果を下図に示す。
新宿駅上空付近で原則通りの3.45度の急角度で着陸体勢に入ったあと、品川駅上空の手前から、より緩やかな3.0度に切り替えた航跡が何機も確認できる。
※国交省の想定高度(青色数字)は、「FAQ冊子v6.2」に掲載されている新飛行経路図中の数字による。
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