第201回 国会衆議院「予算委員会第八分科会」において2月25日、松原仁 議員(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)により「羽田新ルート」関連の質疑があった。
ネット中継録画をもとに、テキスト化(約7千文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
実機飛行確認における騒音データについて
松原:騒音想定値の最大値を上回ったのは?
松原仁 衆議院議員(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、7期、 早大商学部卒、63歳)
私が住んでおります東京都の品川・大田区の上空で、この間、試験飛行で実機訓練といいますか、実機飛行が行われました。多くの住民の方々は想像よりも強い衝撃を覚えたというのが率直なところであります。
そのうえで、この羽田空港新飛行ルートに関して、ご質問したいと思います。
実機試験、実機飛行試験確認における騒音データに関してでありますが、離発着の双方について、大型飛行機に関してですが、当初から政府が示してきた測定地点の騒音想定値の最大値を上回ったもので、大型機ですね、その差が最大のもの、2番目に大きかったものはどの地点のデータか。その差をdB換算で教えていただきたいと思います。
局長:着陸機、9dB上回った地点2か所
和田航空局長(東大法学部卒、87年運輸省入省、56歳)
お答えいたします。これまでの説明会等では、各地区での音の聞こえ方のご参考になるように、最大騒音レベルをお示ししてまいりました。この最大騒音レベルは標準的な数値をお示ししておりますけれども、運航条件でありますとか、また気象条件によって、上下にバラツキが生じるのである点、ご説明させていただいておりました。
その前提をご理解いただいたうえで、いまお尋ねがありました騒音実測値が最大騒音レベルの標準値を大きく上回った騒音測定局を申し上げます。
まず、離陸機のほうでございますけれども、3dB上回った地点が3か所ございました。江東区の東京都交通局大島総合庁舎、大田区立羽田小学校、川崎市の国立医薬品食品衛生研究所でありました。
それから、着陸機のほうでございますけれども、9dB上回った地点が2か所ございました。北区立袋小学校、新宿区立落合小学校でした。なお、着陸機の、これら2つの地点につきましては数秒間だけ測定値が突出している波形となっていまして、現在精査を行っているところでございます。
松原:実測値は想定値の何倍?
9dBということであります。9dBということは、次の質問にもなるわけでもありますが、この想定値の最大値、実測値の差はdBでありますが、音の強さ、耳で聞こえる大きさではなくて、音の強さとしては、実測値は想定値の何倍ぐらいになるのか、ということをお伺いいたします。
局長:9dBの差は、音の強さで約8倍
お答えいたします。一般的に音の強さと音の感じ方は、比例するものではございませんけれども、3dBの差は音の強さで申し上げますと約2倍、そして9dBの差は音の強さで申し上げると約8倍になります。
松原:住民としては、ちょっと合点がいかない
つまりですね、耳は(騒音レベルが)大きくなった場合は、そこまでは感じないように仕組みがなっているそうでありますが、8倍の、想定の音の8倍の音が響いたと。
よく議論があるんですが、なべて(均して)いきゃあいいやというんですが、一瞬の爆音というものは赤ちゃんが泣いたり、衝撃を与えたりというのがあって、じつは私が様々なところで聞くと、「こんな風になると思わなかった。涙が出るくらいひどいものがあった」というふうに言う女性の声もあったりして、これはやはり9倍。8倍、9倍ですよね。
いってみれば800%ということですよね。パーセントでいえば。凄まじいことになると思うんですが、こういった8倍もの値が検出されたということは、最初ご説明をいただいたときの住民としては、ちょっと合点がいかないということになると思うんですが、不信感を強めるということになったのではないか、という声があるんですが、これどう思います。
局長:現在精査を行っております
お答え申し上げます。騒音実測値が最大騒音レベルの標準値を上回った地点があったことは事実でございます。現在精査を行っておりますので、精査の上で結果を公表させていただきたいと思います。
松原:どのような精査をするんですか
精査。どのような精査をするんですか。ちょっと確認したい。
局長:音の干渉など、解析したうえで結果を公表
お答えをいたします。実際の実測値がどのような音なのか、そして、いろいろ音の干渉などもございますので、そのへんを解析したうえで結果を公表させていただきたいと考えております。
「想定外の騒音とはならない」という判断について
松原:想定外の騒音とはならない?
当然これは防音のことの議論もそのうち出てくるんだろうと思っておりますが、次の質問に入りますが、「個別の飛行機の騒音がどれほど大きな騒音であっても、想定外の騒音とはならない」というふうな判断があるというふうに聞いておりますが、そうした理解でよろしいか。
局長:どこで線を引くか、客観的に申し上げるのは難しい
お答え申し上げます。実際の測定値がこれまでお示ししてきた最大騒音レベルの標準値と大きく乖離をしていれば、想定内とは言えないと思います。
ただ、どこで線を引くか、客観的に申し上げるのは難しいと思いますけれども、いずれにしても精査を行ったうえで、その結果を公表させていただきたいと思います。
松原:8倍の音量、大臣の所見?
「大きく違っていればそれは想定内とは言えないが、そのものを決めるのは非常に難しい」ということを仰るということは、平たく言えば、「どんな大きな音が出ても想定外だという必要はない」ということになってしまうんだと思うんですよ。
いまの8倍の音量というのは、これはやはり、ここは赤羽大臣に聞くつもりじゃなかったんですが、衝撃的な800%ですから。大臣、良い悪いじゃなくて、このことについての所見をちょっとお伺いしたい。
大臣:慎重に検討しなければいけない
赤羽一嘉 国土交通大臣(公明党、8期、 慶応法学部卒、61歳)
たまたまなんでしょうけれど、着陸機の9dBもあった地点の1つの、2つあるうちの1つ、新宿区立落合第二小学校というのは、私の卒業した学校でしてですね、実家がありまして、姉からも騒音の話も聞きましたが、ちょっと見た目、うちの姉は音というより圧迫感というか、それのことについて言われておりました。
それは別として、この数字がかなり大きく出ておりますので、これはちょっと、すいません、にわかにいま良い答えが出せないけれども、これちょっと、このこと全体が、なんというか、3月29日にということで、私も引き継いだわけでありますけれど、いろいろな初めてやることですので、慎重に検討しなければいけないと思っておりますので、しっかりと航空局とまた関係者とも打ち合わせを行っていきたいというふうに思っております。
急角度の着陸方式について
松原:実務者側から国際的な客観的な懸念
誠意あるご答弁ありがとうございます。
次に、急角度の着陸方式に関してお伺いいたします。3.5度という急角度の着陸方式。これは騒音を低減するために、ちょっと100メートルくらい上に上がって降りてくるものですから、こうなる。
航空機パイロットの世界的連合体である国際定期航空操縦士協会連合会、IFALPAといいますが、その広報のなかにおいて、羽田空港新飛行ルートについてconcern ――英語でいうと「懸念」でありますが―― 懸念があると。この急勾配の角度。それでも最大9dBというのがあったりするんですが、このconcernということが言われておりまして、わが国が最も重視する安全性に対して、実務者側から国際的な客観的な懸念が示されておりますが、これについての大臣のご見解を伺いいたします。
大臣:改めて運航上の留意点について内外の航空会社に周知
この文書については、まず日本文にしっかり訳してちゃんと用意しろということで、読ましていただきましたが、南風好天時の新経路で運航する際に、これまでの角度と異なった角度で降下することとなるため、パイロット同士の手順確認の重要性ですとか、操縦する際の考慮事項など、パイロットとしての運航上の留意点を共有するための文書であるというふうに報告も受けております。
国土交通省といたしましては、この新しい飛行経路の運航方式につきましては、まず、すべての航空会社に対しまして、国際的なルールに基づいて必要な周知期間を確保したうえで、情報提供や説明会を開催するとともに、また、実機飛行の開始直前には外国航空会社に対しまして、この新しい飛行経路の注意事項の周知を行ってきたところでございます。
ご指摘の文書に記載されている内容も含めて、もう一度、私も最近いろんな出版物を見ておりますので、目を通しておりますので、改めて運航上の留意点について内外の航空会社に周知してまいりたいと、こう思っています。
松原:日本乗員組合連絡会議、懸念の声
ありがとうございます。同様の質問で恐縮なんですが、日本乗員組合連絡会議、ALPA Japanニュースにおいても、羽田空港新方式を一般的な進入方式に比べ角度が0.45ほど大きくなることから、パイロットにかかる負担が大きくなることが予想されると。航空局から公示された3.45度のRNAV進入方式を実施することに対する懸念の声が上がっているという話があります。
ほんとにしつこくて恐縮なんですが、大臣、もう1回このことでご答弁お願いいたします。
大臣:安全を期してまいりたい
これは安全に関わることなので、ほんとに慎重な対応が必要だと私も思っております。
3.5度の降下角。これは羽田が初めてではございませんで、稚内ですとか広島空港、またアメリカでもサンディエゴとか、運用される例もあるということをまず1つ。
今回の降下角3.45度への引き上げの検討にあたりましては、航空会社の、まず協力をお願いしまして、航空機の性能別、気象など様々な条件を設定して、当然ではありますがシミュレータによる安全性の確認を行いました。その結果を踏まえて、まず1つ目には最終降下開始地点に目安速度を設定する。
2つ目には3.45度超で進入後、3.00度で着陸することも可能とし、こうしたことについて航空会社に対して周知を行っているところでございます。
この3.45度への引き上げにつきましては、航空機の運航に関する専門家にもご確認をいただいておりまして、「当該運航方式は好天時のみ使用されることから、安全性に問題はない」との見解もいただいてところでございますが、引き続きパイロットの皆さんの声も聞きながら安全の確保、これ最優先でありますので、安全を期してまいりたいと、こう考えております。
松原:エア・カナダが、羽田空港に着陸するのを止めて成田に引き返した
確かに「(3.)5度のところもロンドンのところにある」っていう話がありますが、その場合の飛行場というのは、極めて飛行機が限定的にしか着陸しない。デカいのが来るとかという話ではなくて、やはりそれぞれの特性があるんで、羽田のように大量に飛行機が間断なく来る場合というのは、ちょっとまた議論が必要なのかな、と私は思っておりますので、よくご検討いただきたいと思っております。
ついてはエア・カナダが、羽田空港に着陸するのを止めて成田に引き返した、というのが今回の実機訓練でありました。極めてはっきり言って問題があると思うんですね。
事前に情報がきちっと行ってなかったのか、技術的にできないと思ったのか。どういう理由にしても、戻ったということは、私は航空局の対応で極めて反省点がある話だと思っております。ご答弁をお願いします。
局長:運航上の留意点、改めて周知
お答えをいたします。ご指摘の通り2月2日の実機飛行確認中に、エア・カナダ機のパイロットから管制官に対しまして、新経路への進入ができない旨の通報がございました。そして、成田空港に目的地を変更したということでございます。
エア・カナダに確認をいたしましたところ、南風好天時、良い天気の時において、新経路を運航する際に求められるRNAV進入という航行方式について、羽田空港での着陸に採用するための社内準備が整っていなかったということでございました。
実機飛行確認のタイミングでこのような事例が発行発生したことにつきましては、国交省といたしましても準備状況の確認が十分でなかったというふうに考えております。
3月29日からの本運用開始に向けまして、引き続き各航空会社に対しまして、新飛行経路の運航に関する準備状況について確認を進めるとともに、運航上の留意点、先ほどご指摘がありましたものも含めて、改めて周知をしてまいります。
松原:安全神話というのが崩れたら困るなぁ
元パイロットの杉江さんが、海外の航空パイロットともいろいろ人間関係があって、聞くと、「十分にこういった情報は、ほとんど来てない」というふうな。
そりゃ全てとは言いません。彼がたまたま知っているパイロットが、という話なんです。
ということは、極めてそれで329(3月29日)で間に合うんですかと。こういうことも含めて私はちょっと安全神話というのが崩れたら困るなぁと思っております。
デルタ航空が羽田に着陸しなかった件
松原:デルタ航空が羽田に着陸しなかった理由?
次に、デルタ航空が羽田に着陸しなかった。
これはいろんな理由を国交省の方は仰っているわけでありますが、東京新聞の報道によると、その理由を、着陸しなかった、安全性が社内で確認できてないからだという報道でした。
この報道が間違いであったかどうかということの確認よりは、デルタ航空が羽田に着陸しなかった理由、どんなことをサウンドしてますか。
局長:引き続き準備状況の確認を進めてまいりたい
お答え申し上げます。デルタ航空につきましては、ダイヤ上、15時20分の到着の便がございます。実機飛行確認中は新経路の運用時間前の到着、それから新経路でありましたけれども、ILS方による到着ということでございまして、新経路をRNAV方式で着陸する状況にはなりませんでした。
国土交通省では羽田空港に乗り入れるすべての外国航空会社に対しまして、準備状況を確認を行っております。
現時点では、デルタ航空からは新飛行経路の運用に際して、社内で内部的な準備を進めており、3月29日からの新飛行経路の運用開始までには必要な準備を終える旨回答がございました。引き続き準備状況の確認を進めてまいりたいと考えております。
松原:(延期が)難しいのは分かるけれども、禍根を残す
非常に私は心配をいたしております。
各航空会社のパイロットに、どこまでそれが周知徹底されたRNAVの角度が高いやつが理解されているのかということは、その航空会社任せになっているわけであって、私は非常に危惧をしている。現実にこうやってエア・カナダは戻ってしまった。成田へ行ってしまった。
デルタはILSで入ってきたということは、私は、結論的には少なくとも実機試験までの準備が十分でなかったということでありますから、くれぐれも反省をしてもらって、私はもうちょっと、これは本当は時間を間延びしたほうがいいくらいで、国としての方針がありますから、難しいのは分かるけれども、そうしないと、禍根を残すと思っております。
「地元の理解」について
松原:いつ、何の根拠を元に、誰の理解を得たと判断?
次に、政府が新ルート採用の前提として、「地元の理解を得る」としてきました。
3月29日の運用開始予定を前に、いつ、何の根拠を元に、誰の理解を得たと判断したのか。地元の理解を示す定性的および定量的な根拠を示していただきたい。
局長:関係自治体等から、丁寧に対応していくことを前提に
お答え申し上げます。羽田空港の機能強化につきましては、昨年まで5年間にわたりまして経路下を5巡にわたって説明会を開催するなど、様々な場で2020年までに新経路を運用し、増便を実現させていただきたいと申し上げてまいりました。
そして、昨年8月7日に「首都圏空港の機能強化の具体化に向けた協議会」におきまして、関係自体等から総括的にご意見を伺いました。関係自治体からは、概ね国による丁寧な情報提供、騒音や落下物対策、新たにお示しした追加対策についてご評価をいただくとともに、引き続き国に対ししっかりとした対策を講じるというようにというご要望をいただきました。
具体的に申し上げますと、東京都のほうからは「国が示したスケジュールに基づいて羽田空港の機能強化実現に向けて手続きを着実に進めていただきたい」というご要望いただき、また、特別区長会会長からは「羽田空港の機能強化の必要性は理解しており、国の事業として国の責任のもとで進めるものと理解しているが、区民に対して万全の騒音対策等をお願いしたい」と発言がありました。また、さらに千葉県千葉市からは「これまで羽田空港の航空機騒音を千葉県民が一手に引き受けてきたが、新飛行経路の運用は首都圏全体での騒音共有の実現の第一歩として評価する」旨のご発言をいただきました。
これらのご発言等を踏まえまして、国土交通省といたしましては、関係自治体等からいただいた騒音や落下物対策や、また引き続きの情報提供に関するご意見・ご要望をしっかりと受け止めて、丁寧に対応していくことを前提に、地元の理解が得られたものと判断したところでございます。
松原:地元は必ずしも納得をしてない
時間がないので、この羽田のことはここまでにしますが、いま言ったことを含めて、定量的、定性的な議論には率直にいってなっていないと思っております。
なんとなくモアモアとした感じで、そう持って行っていますが、地元は必ずしも納得をしてないし、今回の実機飛行で、試験飛行で、極めてこれに関しては様々な疑念が出ているということであります。
雑感
松原仁衆議院議員は、数多いる国会議員のなかで、羽田新ルートに最も関心を寄せている議員といってもいいだろう。その証拠に、松原議員がこれまで提出した羽田新ルートに係る質問主意書は15件にのぼる(3月2日現在)。
満を持して臨んだ予算委員会第八分科会での鋭い質問からは、日ごろから松原議員がこの件について精力的にフォローしていることが推察される。
今回の一連の質疑応答で明らかになったことは、主に次の3点。
- 実機飛行確認で測定された最大騒音レベルが、国交省が当初説明してきた騒音レベル(推定値)を大きく上回った地点があったこと
- エア・カナダが羽田空港に着陸するのを止めて成田に引き返したのは、国交省によるエア・カナダへの準備状況の事前確認が十分にできていなかったこと
- デルタ航空が羽田に着陸しなかった理由について、国交省が明確に答えていないこと
和田航空局長も赤羽大臣も誠実に答えているようには見えるが、肝心の中身のほうはといば、心もとない。
和田航空局長は、今回の実機飛行確認で明らかになった騒音問題については、「現在精査を行っている」と問題を先送り。
赤羽大臣は、「慎重に検討しなければいけない」とか「安全を期してまいりたい」とか、精神論で応じている。
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