第201回 国会衆議院「予算委員会第六分科会」において、「農林水産省及び環境省所管」につき2月25日、畑野君枝議員(共産党)により「羽田新ルート」関連の質疑があった。
ネット中継録画をもとに、テキスト化(約5千800文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
- 飛行騒音について
- 航空機事故について
- 畑野委員:1970年通知、川崎石油コンビナート地域上空を避け
- 航空局・・部長:通知の背景、立て続けに航空機事故が発生
- 畑野委員:なぜ羽田が(落下物)ゼロなのか?
- 航空局・・部長:羽田空港周辺の落下物、報告された実績はございません
- 畑野委員:羽田についてはどうですか?
- 航空局・・部長:部品欠落の件数、154件
- 畑野委員:なぜ羽田空港周辺での落下物はゼロなのか?
- 航空局・・部長:羽田空港周辺において・・・
- 畑野委員:なぜですか。その理由。海があるからでしょう
- 航空局・・部長:海があるからとは限りません
- 畑野委員:離陸直後、石油コンビナート上空を飛行するルートは諸外国では?
- 航空局・・部長:ロッテルダム空港があるということを確認しております
- 畑野委員:ロッテルダム空港とコンビナートの距離?
- 航空局・・部長:手元に資料がございません
- 畑野委員:私が目測したところでは、10キロはある
- 航空局・・部長:必ずしも(離陸)直後ということではございません
- 畑野委員:69年通知の概略?
- 国民保護防災部長:石油コンビナート地帯における航空機事故による産業災害の防止を図る
- 畑野委員:防災基本計画の一部修正、石油コンビナートへの航空機の墜落、落下物の落下による災害の発生を想定?
- 大臣官房審議官:航空機の墜落等大規模な事故を原因とするものも含み得る
- 畑野委員:小泉大臣、ぜひ地元に行って声を聞いてほしいんです
- 小泉環境大臣:厚労省にはしっかりやっていただきたい
- 畑野委員:環境大臣としての責任もぜひ果たしていただきたい
- 雑感(畑野議員vs小泉進次郎大臣)
飛行騒音について
畑野委員:小泉進次郎環境大臣に、現場の声をぜひ届けたい
畑野君枝 衆議院議員(共産党、2期、 横国教育学部卒、63歳)
おはようございます。日本共産党の畑野君枝です。
安倍政権が進める羽田空港の増便のための新ルート問題について、まず伺います。国土交通省が1月から2月にかけて、実機飛行による確認を行いましたが、都心上空を通過した航空機は7日間で計520便に上りました。これは東京、神奈川、埼玉へまで及ぶルートです。
騒音の最大値は、川崎市で94デシベルにも達しました。94デシベルといえば、もう本当にうるさい。極めてうるさい騒音です。私もその現場で航空機の騒音を聞きました。その後、御近所の保育園にも伺いまして、先生にもそのときの子供たちの様子を伺ってまいりました。
そのとき子供たちは本当に怖がって、遊んでいるのを中断して、そして、先生が子供たちを怖がらせないようにということで何と言ったかというと、「鬼じゃないのよ。雷様じゃないのよ」と言って、そうやって声を掛けたというんです。テレビは全く聞こえなかったということです。
また、都心の中でも、視覚障害者の方からは、「音響つき信号機はもちろん、通行の際に頼りにしている町の様々な音が聞こえなくて、怖くて外を歩けない」という声も伺っております。
私、環境を担当する、騒音、これはあってはならないということで、いつも担当しておられる小泉進次郎環境大臣に。国土交通省は聞かないものですから。こういう子供たちの実態、現場の声をぜひ届けたい。そして聞いていただきたいんです。
3月29日から始めようというんですけれども、これは止めてほしいんだけれども、もしそういう実際に飛ぶ現場があったら、ぜひ川崎にも聞きに行っていただきたいと思います。いかがでしょうか。
小泉環境大臣:静かな環境というのは私も大切だと思います
小泉進次郎 衆議院議員(自民党、4期、関東学院大学卒、コロンビア大学大学院修了、38歳)
子供の育ちの中で、静かな環境というのは私も大切だと思います。
特に飛行機に限らず、私も今でも家に帰ってチャイムを押すこともやめていますし、起きちゃうから。そしてくしゃみも、それで起きちゃいますから。いかに静かな環境というのが大変大切なものか、それは痛感をしています。
環境省は、平成18年の東京国際空港の環境影響評価において、今後、飛行経路等の変更があった場合に騒音を予測し、それに基づき所要の措置を講じるよう国交大臣に意見を提出しています。
そして現在国交省では、実機飛行確認で測定した騒音について、予測の検証を含め分析していると聞いています。本格運用後も騒音測定を行い、必要に応じ障害防止工事等を行うと認識しています。
国交省には、新飛行ルートに伴う騒音測定を踏まえ、引き続き適切な対策の実施に努めていただきたいと考えています。
畑野委員:これ以上の騒音を出してはいけない
世界の問題を大臣も論じられておりますけれども、世界では旅客機を人口密集地の大都市上空に飛ばさないということが当たり前になっているんです。
是非そういうふうに進めていただきたいというふうに思います。
対策を強く、政府として、求めていきたいと思います。
これ以上の騒音を出してはいけないという、そういう規制値も是非つくっていただきたいというふうに思います。
航空機事故について
畑野委員:1970年通知、川崎石油コンビナート地域上空を避け
次に、航空機事故について。
川崎市でいえば、離陸直後に石油コンビナート上空を飛行するという重大な危険性があります。ひとたび墜落事故が起きれば大惨事です。
国は1970年、東京国際空港長に対し、東京国際空港に離着陸する航空機について、川崎石油コンビナート地域上空を避け、適切なコースをとらせることと通知いたしました。国がこの通知を出したのは、そもそもなぜですか。
航空局・・部長:通知の背景、立て続けに航空機事故が発生
平岡成哲 航空局・・部長(東大法、89年運輸省)
お答えをいたします。
昭和45年に東京航空局長から川崎市長に宛てまして、川崎石油コンビナート地域上空の飛行制限を設定し、通知をしたということでございますが、この主な背景といたしましては、昭和41年に東京国際空港周辺におきまして立て続けに航空機事故が発生したということであります。
具体的には、昭和41年2月4日に全日空の千歳発東京便が東京湾に墜落した事故。
さらに同年3月4日にカナダ太平洋航空の香港発東京経由バンクーバー便が東京国際空港に着陸進入中に滑走路末端手前の護岸に衝突し、大破炎上した事故が発生いたしました。
こうした事故によりまして、地域から御心配の声が上がった、というふうに承知しております。こうした事情を踏まえまして、川崎市長から当時の運輸大臣宛てに、要望が行われました結果、羽田空港に離着陸する航空機は、原則としてコンビナート上空を避け、それ以外の航空機は3000フィート以上で飛行することについて、昭和45年に東京航空局長から川崎市長に通知がなされたものと理解しております。
畑野委員:なぜ羽田が(落下物)ゼロなのか?
おっしゃったように、その年の3月の本会議、1966年3月の本会議、川崎の市議会の本会議で、臨海工業地帯の飛行禁止に関する意見書が採択され、同月、同じ趣旨の請願も全会一致で採択されました。
飛行禁止は議会を含め、地元挙げての運動になり、当時の市長が国に要望してこの通知に至ったという経過があるんです。つまり地元ぐるみの運動だったんです。
それを国土交通省、何ですか、局長は。市からの要望で出したこの通知を昨年12月16日に廃止した。市民の願いと市民の運動の歴史を踏みにじるような、本当に許せないものだと申し上げます。
飛行ルートの下には事業所約2300人、従業員約5万9000人が集中している石油コンビナートがあります。大量の高圧ガス、毒ガスなどのパイプラインがあり、原油やナフサ、液化天然ガスなど可燃性の液体やガスを扱う工場が密集していて、万が一、航空機の墜落事故や落下物などがあれば想像を絶する大火災となると。だから、今も皆さん心配されています。
伺いますけれども、国交省は2017年11月から羽田成田などの7空港で外国の航空会社も含め、部品欠落が確認された場合の報告制度を設けています。
2018年11月から2019年10月までの直近の1年間で欠落した部品の個数は728に上ると伺っておりますが、羽田では幾つか、分かったら教えてください。
また、航空機からの落下物は、国交省の資料によると2008年度から2018年度の発生件数は23件となっています。そのうち羽田空港周辺での落下物はゼロだと言っておりますが、なぜ羽田がゼロなのか、お答えください。
航空局・・部長:羽田空港周辺の落下物、報告された実績はございません
お答えをいたします。
羽田空港周辺における固定翼の民間航空機からの落下物につきましては、平成20年から平成30年までの期間において報告された実績はございません。これは報告されたものを集計するという形になっているものでございます。
一方で空港到着後の機体チェックなどで部品がなくなっていることが確認されました部品欠落につきましては、部品欠落が発生した場所は特定できませんので、個別空港ごとに集計する性質ではございませんけれども、国際線が多く就航する主要7空港におきまして点検した結果、平成30年度に報告された欠落部品の総計は488件となっております。その半数以上は10グラム未満の軽いものとなっているところでございます。
畑野委員:羽田についてはどうですか?
航空局・・部長:部品欠落の件数、154件
お答えをいたします。
平成30年度に羽田空港において報告された件数、部品欠落の件数でございますけれども、154件となっているところでございます。
畑野委員:なぜ羽田空港周辺での落下物はゼロなのか?
なぜ羽田空港周辺での落下物はゼロなのか。なぜですか。
航空局・・部長:羽田空港周辺において・・・
お答えをいたします。
落下物の件数につきましては、報告されたものを集計するという形になっておりまして、羽田空港周辺において固定翼の民間航空機からの落下物については・・・
畑野委員:なぜですか。その理由。海があるからでしょう
航空局・・部長:海があるからとは限りません
海があるからとは限りません。
羽田空港につきましても、千葉県上空を飛んで着陸するというふうに、陸上のルートを経由して、その後、海を通って着陸するという経路を通っておりますので、海があるからということではなく、陸上経路も通って、含めて、羽田空港の周辺において報告された件数はございません。
畑野委員:離陸直後、石油コンビナート上空を飛行するルートは諸外国では?
海を通ってということですから、海があるんですっ!
それで、例えば原発の上空については、原発付近をできる限り避けるよう当時の運輸省が通達を1969年に出しています。米軍も岩国基地で離陸の際、コンビナート上空を避けるという運用がされてまいりました。
ちょっと確認なんですけれど、国交省に。離陸直後に石油コンビナートの上空を飛行するルートは諸外国でありますか。離陸直後です。
航空局・・部長:ロッテルダム空港があるということを確認しております
お答えをいたします。
網羅的に調べたわけではございませんけれども、ロッテルダム空港があるということを確認しております。
畑野委員:ロッテルダム空港とコンビナートの距離?
ロッテルダム空港とコンビナートの距離は何キロありますか。
航空局・・部長:手元に資料がございません
手元に資料がございませんので確認の上、御報告させていただきたいと思います。
畑野委員:私が目測したところでは、10キロはある
私が目測したところでは、10キロはあると見ました。
そういうのもちゃんと調べて言っているんですか。分からなかったら分からないと言っていただければいいんです。これはひとり歩きしますからね。
ちゃんと確認しているんだったら、そういうふうに責任ある答弁をしてください。いま分からなかったら、「ロッテルダム空港、離陸直後のルートがあるんですか」と聞いていますから、分からないんだったら分からないと、訂正していただけますか。
航空局・・部長:必ずしも(離陸)直後ということではございません
お答えをいたします。
議員御指摘のとおり、ロッテルダム空港から離陸してその経路下にはございますけれども、その直後という、必ずしも直後ということではございません。
畑野委員:69年通知の概略?
離陸直後じゃないと。そういう不正確なことを言っちゃだめですよ。ないんですよ。世界でもね。
川崎コンビナートは多摩川を渡ったらすぐコンビナートですよ。
羽田からそんな無謀なことをやろうとしているんですよ。その具体的な数字もきちんと調べないでやろうとしている。
消防庁に聞きますが、1969年に「石油コンビナート地帯における航空事故による産業災害の防止について」という通知を当時の運輸省に宛てておられます。概略、簡単にお答えください。
国民保護防災部長:石油コンビナート地帯における航空機事故による産業災害の防止を図る
小宮大一郎 国民保護防災部長(東大法、88年自治省)
石油コンビナート地帯における航空機事故による産業災害の防止を図るため、消防庁次長から当時の運輸省航空局長に対し、全国の石油コンビナート地帯の上空における最低安全高度以下の飛行の禁止及び離着陸時における同地帯上空の飛行の回避などの災害防止のための必要な措置をお願いしております。
畑野委員:防災基本計画の一部修正、石油コンビナートへの航空機の墜落、落下物の落下による災害の発生を想定?
つまり、コンビナートの上は飛ばないことが最大の安全策だということで、取り組んでこられたと思います。
川崎市議会史によれば、さきに述べた1970年通知のもとになった川崎市長の運輸省への陳情は、災害対策基本法第3条に基づいて、石油センター地域を飛行禁止区域にするよう求めるものだったと記されております。
災害対策基本法第3条の国の責務は、「国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することに鑑み、組織及び機能の全てを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する」と規定されております。
内閣府に伺いますが、災害対策基本法に基づく防災基本計画は、1971年5月に一部修正が行われ、石油コンビナート対策等が明記されました。これは石油コンビナートへの航空機の墜落、落下物の落下による災害の発生を想定しているのでしょうか。
大臣官房審議官:航空機の墜落等大規模な事故を原因とするものも含み得る
村手聡 大臣官房審議官(東大法、88年自治省)
お答え申し上げます。
現在、防災基本計画において、石油コンビナートについては危険物等災害対策編の中で、災害予防対策や大規模な事故・災害が発生した場合の連絡・活動体制等を規定してございます。
この記載については、原因が何かを特定しているものではなく、航空機の墜落等大規模な事故を原因とするものも含み得ると考えてございます。
畑野委員:小泉大臣、ぜひ地元に行って声を聞いてほしいんです
しかし、それに対して、国土交通省に聞いても経済産業省に聞いても、具体的な対策はないというのがこの間のお答えだったんですね。ですから、その安全対策、誰が責任を持ってやるのかということなんです。
こんなことでは3月29日から本格飛行などは、やることは許されませんよ。人命軽視も甚だしいと言わなくてはなりません。
この根本になったのがインバウンド。2013年安倍政権の成長戦略です。首都圏空港の機能強化と離発着の増便が決められました。これまでの航空行政とも矛盾する場当たり的なやり方で、万が一事故が起きたら一体誰が責任をとるんですか。小泉大臣ですか。
きょうこの問題を取り上げていますから、内閣でもぜひ問題にしてほしいと思うんです。
そして今、あわせて新型コロナウイルス感染症対策で大変な事態になっています。航空機でいえば、実際、各航空会社は運休、減便、小型化と。こういう事態になっているんです。
私はこの新ルートの飛行はきっぱり止めるべきだというふうに思います。
大臣、小泉大臣に聞いていただきたいのは、ぜひ地元に行って声を聞いてほしいんです。
環境大臣としてどうですか。先ほど最初に申し上げました。
小泉環境大臣:厚労省にはしっかりやっていただきたい
畑野先生が冒頭おっしゃった静かな環境。こういったことが子供のみならず、多くの方にとって重要だという御指摘はそのとおりだと思います。
その上で、今まさに国交省が答弁をしていますが、担当しているところですから、私としては、担当の部分で厚労省にはしっかりやっていただきたいというふうに思います。
畑野委員:環境大臣としての責任もぜひ果たしていただきたい
環境大臣としての責任もぜひ果たしていただきたいと重ねて申し上げておきます。
雑感(畑野議員vs小泉進次郎大臣)
せっかく衆議院の「予算委員会第六分科会」で羽田新ルートに係る質疑が行われても、NHKや民放、新聞などのマスメディアが取り上げなければ国民には届かない。国会議事録の肥しとなるだけだ。
その点、畑野君枝議員が小泉大臣に直接答弁させたのは、羽田新ルート問題に世間の注目を集めるという多少の効果があったのかもしれない。
ただ、残念ながら、赤ん坊を起こさないための「家に帰ってチャイム」や「くしゃみ」をしないといったエピソードは、「30年後の自分は何歳か」級の迷言にはなっていない。
特に飛行機に限らず、私も今でも家に帰ってチャイムを押すこともやめていますし、起きちゃうから。そしてくしゃみも、それで起きちゃいますから。いかに静かな環境というのが大変大切なものか、それは痛感をしています。
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