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「新築マンションは地震保険に加入する」が合理的判断になるのだが…

東日本大震災が発生してまもなく7年。

地震保険に加入している「加入世帯率」(=世帯数当たりの地震保険契約件数の割合)はどのくらい増えているのだろうか?


ざっくり言うと


地震保険の世帯加入率は大震災を契機に上昇

日本損害保険協会のホームページに掲載されている損害保険料率算出機構が算出した「地震保険の都道府県別の世帯加入率の推移」(地震保険統計速報|損害保険料率算出機構 )を可視化してみよう。

世帯加入率の全国平均値の推移を次図に示す。

95年1月17日に発生した阪神・淡路大震災や、11年3月11日に発生した東日本大震災など、大地震の発生が世帯加入率を引き上げていることが分かる。

16年度(12月末)、ようやく3割(30.5%)を突破した。

地震保険 世帯加入率の推移(全国平均)
(12年度以前は当該年度末数値。13年度以降は当該年度12月末の数値)

世帯加入率ランキング:1位宮城、2位愛知、3位東京、4位熊本

16年度の世帯加入率の都道府県ランキングを次表に示す。

  • 1位は、東日本大震災の被害が大きかった宮城県(51.8%)。5割を超えているのは宮城県のみ。
  • 2位は、70年代から東海地震の発生が予想されている愛知県(40.3%)
  • 3位は、切迫性の高い首都直下地震が想定されている東京都(36.7%)
  • 4位は、16年4月に発生した熊本地震で大きな被害を受けた熊本県(35.6%)

地震保険世帯加入率 都道府県ランキング

「新築マンションは地震保険に加入する」が合理的判断になるのだが…

都道府県別の世帯加入率の推移を次図に示す。

東日本大震災の被害が大きかった宮城県の加入率が11年度から13年度にかけて急増していることが分かる。ただ、その後は微増にとどまっている。 

地震保険 世帯加入率の推移(都道府県別)
(12年度以前は当該年度末数値。13年度以降は当該年度12月末の数値)


上図を見ていて何か気づかないか?

宮城県も熊本県も、大地震が発生した後に世帯加入率が急増していることだ。

そもそも地震保険とは、大地震が発生した際に建物や家財の損害額を補填するために加入するもの。大地震が発生した後に加入することに意味がないとは言わないが、再び同地域で大地震が発生する確率は下がるので経済合理的な行動とは言えないのではないか

首都直下地震の発生が予想されている東京都の世帯加入率は、もっと増加してもよさそうなものだが、そうなっていない。

首都直下地震は、30年以内に70%の確率で発生すると予想されている。新築マンションの寿命が30年以上あることを考えると、「23区で新築マンションを購入する人は地震保険に加入する」というのが合理的な判断なのだが……

「新築マンションを購入するときには、地震保険に必ず入りましょう!」なんて話は、マンションデベロッパーからは切り出しにくいのではないか。なぜならば同じデベロッパーが販売するすべての新築マンションの共用部に地震保険が付保されていなけば辻褄が合わないからだ。

マンションデベロッパーが「このタワーマンションは、長周期地震動への対応がシッカリできています」ということを喧伝できない状況に似ている。なぜなら、同じデベロッパーが販売済みのすべてのタワーマンションが長周期地震動への対応ができていないからだ。 

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