今の時代を予想していたような、1970年に出版された星新一『声の網』。
12階建ての「メロン・マンション」で、1階から12階に住む人に、電話を通して次々と異様なことが起きる連作で構成されている。
登場人物は少年から老人まで年齢は幅広いが、多くは男性(次表)。2階と5階の女性がともに専業主婦なのは、当時の社会を反映しているのでは。
47年も前にネットワーク(網)による管理・監視社会の訪れを予想していた星新一の想像力もスゴイが、32年前に同書を解説した小説家恩田陸氏の洞察力も鋭い。
しかし、今回読み直してみて、その印象である「漠然とした不安」、それこそがこの作品の通奏低音であって、「見えないところで何か恐ろしいことが進められてしるような気がする世界への不安、偽りの平穏だがそれにすがり現実を見ない人々、じわじわと強められる管理社会・監視社会」そのものの雰囲気がこの作品のイメージを形作っているのだと気づく。
(解説 1970年の衝撃|恩田陸)