厚生労働省は3月1日、「全国民泊実態調査の結果」を公表。
民泊新法の国会への提出時期が目前。取りまとめを急いだためのか、たった2枚のペーパー(PDF)である。
資料は薄ければ薄いほどいいとはいえ、内容もスカスカではないか。
簡単に整理しておこう。
「3割」が無許可営業!?
ネットニュースの見出の多くは、次のように3割が無許可営業であったことを伝えている。
- 民泊の3割が無許可営業 厚労省1万5000物件調査、罰則強化へ(日経 3月2日)
- 仲介サイト登録の「民泊」、3割が無許可営業(読売 3月2日)
- 民泊、無許可営業が3割と判明 厚労省が初めて調査(ハフィントンポスト 3月2日)
- 3割無許可営業 所在地不明53% 厚労省調査(毎日 3月2日)
- 民泊、3割が無許可=「不明」も5割超-厚労省調査(時事 3月1日)
3割が無許可営業というのは、チョット誤解を生みそうな表現である。
以下にその理由を説明する。
発表資料には、民泊仲介サイトに登録されている全国の物件の中から15,127件を抽出し、「許可取得の状況」として次のように記されている。
たしかに「無許可」として、「30.6%」という数字が掲載されている。
でも、調査した約1万5千件のうち、「物件特定不可・調査中等」が52.9%。つまり約半分の物件が特定できていないのである。
約半分もの物件が特定できていないのに、「無許可」が3割あったというのは、間違いではないが、あまり意味がないのでは。
特定できた物件のうち「65%」が無許可!
数字の羅列では分かりにくいので、可視化したのが次図。
「物件特定不可・調査中等」の物件のなかに「許可」物件が入っている可能性は低い。「許可」物件であれば、自治体が把握しているからだ。
だから、「無許可」物件は「3割」ではなく、「8割」(=30.6%+52.9%)といいたいところだが、確定まではできない。
どうしても数字を挙げたいというのであれば、「特定できた物件のうち65%が無許可」と表現したほうがいいのでは。
大都市の物件への切り込み不足
また、発表資料には、「地域別の許可取得状況」として、次のように、「大都市圏中心市」と「上記以外」に分けて記されている。
分かりやすく可視化したのが次図。
大都市圏中心市(=東京23区と政令指定市)の物件のなかで、「許可」を取得していることが確認できた物件は極めて少ないことが分かる。
そんなことは調査するまでもなく、分かっていたことであろう。
筆者が指摘したいのは、調査件数が「大都市圏中心市」とそれ以外(以下、「地方都市」と呼ぶ)でほぼ半々であること。
民泊仲介サイトAirbnbに登録されている全国の4万6千件の物件のうち、7割が1都2府に集中している(次図)。
民泊問題の多くは大都市のマンションで発生しているのだから、もっと「大都市圏中心市」に切り込んで調査すべきではないのか。
サンプリング数が地方都市に偏っているのではないかということだ。
「マスコミ報道では分からない!全国4万6千件の民泊構造を可視化」より
民泊物件が少ない「地方都市」も、「大都市圏中心市」と同じような扱いにしたのは、調査を実施した委託会社の問題ではなく、同調査を発注した厚労省の枠組みに問題があった。この点については昨年の9月のブログで指摘済みである(厚労省が民泊施設の初の全国調査をするのだが)。
今後、詳細な報告書は公表されるのだろうか・・・・・・。
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