以前マスコミが盛んに取り上げていた「違法貸しルーム(あるいは脱法ハウス)」はその後どうなっているのか?
国交省が10月17日に公表した「違法貸しルームの是正指導等の状況について」をひも解いてみた。
その前に、そもそも違法貸しルームとは、どういうものなのか?
違法貸しルームとは
同発表資料に、「違法貸しルーム」の定義が次のように記されている。
「違法貸しルーム」とは、「事業者が入居者の募集を行い、自ら管理等する建築物の全部又は一部に複数の者を居住させる『貸しルーム』で、防火関係規定等の建築基準法に違反しているもの」をいう。
具体的には次図のようなイメージ。
多数の人が寝泊りなどをし実質的に居住していながら、各部屋の仕切りが燃えやすい材料でできている、窓がないなど建築基準法に違反している疑いのある建築物。
国土交通省HPより
是正指導により漸減中
国交省の発表資料には調査結果の概要として全国の集計表が掲載されているのだが(次表)、説明文章がないので、「引き続き通報物件の調査及び違反物件の是正指導を徹底するよう特定行政庁に要請しています」といわれても、「何のこっちゃ?」である。
そこで過去の公表資料もひも解き、違法貸しルームの是正指導等の推移をグラフにしてみた(次図)。
国交省や自治体への違法貸しルーム疑いの新たな通報は少なく、約2千件で頭打ちとなっている(世間の関心が薄れたのか?)。
是正指導により違法件数は漸減しているが、違法の疑いのある調査中物件を含めまだ1,500件近く存在している。
違法貸しルーム件数 1位新宿区、2位世田谷区
発表資料には特定行政庁ごとのデータも掲載されている。
全国の調査対象物2,004件(2016年8月末現在)のうち、東京都が1,527件(76%)と4分の3を占めていることが分かる。
23区に着目すると、違法貸しルームの件数(違法の疑いのある調査中を含む)は、新宿区、世田谷区、台東区、北区、板橋区の順に多いことが分かる(次図)。
新宿区が多いのは容易に想像がつくが、世田谷区が多いのは意外だ(通報が多いということなのか?)。
違反内容の内訳をみると、「非常用照明装置関係」と「窓先空地関係(建築基準法関係条例) 」が多い(次図)。
「その他」は、竪穴区画関係(施行令112 条)、排煙設備関係(施行令126 条の 2)、建築基準法関係条例等の違反。
国交省は、違法貸しルームに関する情報提供を求めている
違法貸しルームの通報窓口は次のとおり。
送付先:住宅局建築指導課
- e-mail:kenchiku-i2yy@mlit.go.jp
- TEL:03-5253-8933
- FAX:03-5253-1630
書式はPDF形式、ワード。
詳しくは、「違法貸しルーム)に関する情報を提供いただく際の情報提供様式について 」ご参照。
(違法貸しルームの通報の記入例)
違法貸しルームに関する情報提供を求めるのもよいが、1,500件近くもある違法物件(違法の疑いのある調査中を含む)の是正に期待したい。
ちなみに、東京都も違法貸しルームの通報窓口を開設している。
また、世田谷区でも2016年4月14日付で、建築基準法違反の疑いのある工事中の物件の情報提供を求めている。
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