週刊ダイヤモンド2015年4月18日号の爆弾記事「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」。
大手不動産仲介各社による宅地建物取引業法違反とみられる行為の数々が記録されたデータが、業界の一部で出回り始めている。
本誌では同データを独自に入手した。
今後、不正行為の実態が明るみに出れば、各社に厳しい処分が下される可能性もある。
「業界でまかり通る不動産取引の悪弊を憂いた有志関係者がまとめたとみられる」不動産仲介各社による物件の囲い込みと呼ばれる不正行為の実態を調査したレポートが出回っているらしい。
両手仲介自体は法定に問題ないことになっているのだが、そもそも両手仲介を許すから、物件の囲い込みをしようとするインセンティブが働く。
両手仲介について簡単に説明しておくとーー仲介手数料の上限「成約価格の3%+6万円(売買価格が400万円超の場合)」に対して、両手仲介だと、仲介手数料が売り主と買い主から得られるため、6%+12万円と倍増する。
主要各社の平均手数料(2013年度)
週刊ダイヤモンドの記事に「主要各社の平均手数料(2013年度)」として、10社の「取引件数」と「平均手数料率」が掲載されている(次表)。
(出所:週刊ダイヤモンド2015年4月18日号)
グラフ化したのが次図。
主要各社の平均手数料率は5%前後と高いことが分かる。
片手取引(3%)と両手取引(6%)の割合を推定してみた
上表のデータから、各社の片手取引(3%)と両手取引(6%)の割合を推定してみよう。
計算方法に興味がない人は、読み飛ばしてください。
---------ここから計算---------
手数料率は、3%(片手)と6%(両手)しかない(中間値はない)としてーー
- X+Y=A (1)
- (3X+6Y)/A=B (2)
ただし
- X:片手取引の件数
- Y:両手取引の件数
- A:片手と両手を合わせた取引件数
- B:平均手数料率
式(1)(2)から、XとYを求めると次式になる。
- X=[(6-B)×A]/(6-3)
- Y=A-X
---------ここまで計算---------
計算結果は次のとおりだ。
- 社名:合計取引件数(=片手件数+両手件数)
- 三井不動産リアルティ:42,550 件(=9,645 +32,905 )
- 住友不動産販売:35,455 件(=7,918 +27,537 )
- 東急リバブル:19,435 件(=10,430 +9,005 )
- 野村不動産グループ:7,437 件(=5,850 +1,587 )
- 三井住友トラスト不動産:7,043 件(=5,423 +1,620 )
- 大京グループ:6,840 件(=2,576 +4,264 )
- 三菱UFJ不動産販売:5,949 件(=5,156 +793 )
- 大成有楽不動産販売グルーブ:4,269 件(=2,291 +1,978 )
- みずほ信不動産販売:4,062 件(=2,600 +1,462 )
- 住友林業ホームサービス:4,007 件(=2,004 +2,004 )
分かりやすいようにグラフにしたのが次図。
さらに「片手取引」と「両手取引」の割合を可視化したのが次のグラフだ。
両手取引の割合が多いのは「住友不動産販売」と「三井不動産リアルティ」で8割近い。次に多いのは「大京グループ」の6割。
何とかならないのか、不動産の両手取引
不動産の両手取引は、一人の弁護士が被告と原告の両方の面倒みるようなヘンな話で、利益相反する可能性が高い。
かつてソフトバンクが通話料金の価格破壊を実現したように、不動産の流通革命に挑むソニー不動産の登場によって、不動産の両手取引という既得権益者の弊害がなくなるのか?
現在不動産業者間でのみ共有されているレインズ(不動産情報流通システム)が一般消費者にも開放されれば、情報の非対称性が劇的に変わり、ヘンな商習慣はなくなるのではないか――。
このようなことを言うと、「レインズの開発・運用資金を負担しているのは不動産業者だから、一般開放できない」と反論する人がいる。
ただ、不動産業者が負担しているという開発・運用資金は、回りまわって不動産を購入している消費者が負担しているのだ。
国が本気になって物件の囲い込み問題を改善するならば、レインズの一般消費者への開放の実現も可能であろう。
民主党政権時代に「不動産仲介業者の両手の禁止」や「消費者向けの成約情報の提供」が議論になったことがあるが、今回の統一地方選挙の結果を見る限り、実現は遠そうだ。
(本日、マンション広告なし)