不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


過去10年間のマンションチラシのトレンドを振り返る


このブログを開設して来月で10年。
この間に“観測”してきたチラシは4,700枚を超える。
マンションチラシは手に取ってもらってナンボ。モデルルームに集客することが主目的。
だから、売主本位のチラシが横行する。


日本一マンションチラシを読んでいる(たぶん)筆者が、この10年間のマンションチラシのトレンドを振り返る。


もくじ



芸能人を起用したチラシ

今から7年前(2007年2月17日)、新聞全紙大の広告オモテ面の下半分に、目元を拡大したマドンナの白黒写真が掲載されたのには驚いた。
ずいぶんとおカネをかけたチラシを作ったものだ。
マドンナのチラシ
好感度抜群の芸能人が起用されたマンション広告を見て、マンションの品質・周辺環境などを実態以上に素晴らしいものと誤認してしまう恐れはないか。
広告に起用された芸能人の好感度とマンションの品質・周辺環境の良さとは、まったく関係がないことを常に意識しておく必要がある。


有名芸能人に高額なギャラを支払うくらいなら、マンションの中身(建物性能や好条件の用地確保)にお金をかけてほしいところだ。
これまでに登場した大物芸能人、というよりハリウッドスターは、次の3人。

  • マドンナ:総戸数1,081戸、33階建て、2009年3月竣工
  • 渡辺謙:総戸数733戸、19階建て、2008年1月竣工
  • ディカプリオ:総戸数300戸、10階建て、2006年1月竣工

総戸数300戸で、ディカプリオの広告費負担は重かったのではないだろうか。


変形チラシの数々

過去10年間に“観測”されたマンションチラシの形は、次のとおりだ。

B4サイズのチラシ

B4サイズのチラシ
最も多く観測されているのが、B4サイズのチラシ。
ここ数年、新築マンション市場が縮小するのと相まって、このB4サイズのチラシの割合が増えてきた(B3サイズのチラシの割合が減ってきた)印象がある。

B3サイズ(≒新聞半紙大)のチラシ

B3サイズ
B4サイズの次に多いのが、B3サイズ(≒新聞半紙大)のチラシ。

B2サイズ(≒新聞全紙大)のチラシ

B2サイズ
100戸超の大規模マンションなど、広告宣伝費に余裕がある物件に多く“観測”される。

B4サイズを横長に2枚連結(変形チラシ)

B4サイズを横長に2枚連結
中規模マンションや大規模マンションで、たま〜に見かける変形チラシ。
手に取った瞬間、「あれっ珍しいな」と思わせる効果はある。

B4サイズを縦長に2枚連結(変形チラシ)

B4サイズを縦長に2枚連結
超高層マンションのチラシで、たま〜に見かける変形チラシ。
超高層マンションの高さを強調するために、生み出された変形チラシだ。
横長2連結の変形チラシと同様、手に取った瞬間、「あれっ珍しいな」と思わせる効果はある。

3つ折り(変形チラシ)

3つ折り
6年前に一度だけ“観測”された、とってもレアな3つ折りチラシ
チラシの形状が長細いので、他のチラシに紛れることなく手に取ってもらえる確率が高そうだ。ただ、その後、類似のチラシは“観測”されていない。

B4サイズを横長に2枚連結・2枚組(変形チラシ)

B4サイズを横長に2枚連結・2枚組
超大規模なマンションのチラシで、何度か“観測”されているが、それほど多くはない。

異業種とコラボしたチラシ

セレクトショップとのコラボレーションによって「収納に特化した部屋のインテリアオプションを展開」を謳ったチラシとか、学研ネクストが推奨する子育ての推奨基準を満たしたプランを謳ったチラシなど、異業種とのサービス提携によるコラボレーション効果を謳ったチラシはたまに“観測”される。
内容的なコラボではなく、形態的なコラボで度肝を抜かれたのは、今から4年前(2010年3月19日)に“観測”されたスーパーの特売チラシと一体化したマンションチラシだ。
スーパーの特売チラシと一体化したマンションチラシ
B4サイズに折りたたまれた、4ページからなるマンション・チラシの、いちばん最後の裏のページに、イトーヨーカドー○○店の安売りチラシが掲載されているのだ。


新聞に折り込まれた多数のチラシをザット見ているぶんには、表も裏もない。
イトーヨーカドーの特売チラシを手に取ったと思ったら、実はマンション・チラシだったというサプライズ。
マンション・チラシの作製・折り込み費用の節減効果の有無はともかく、生鮮食品の価格に敏感な主婦の手にとってもらえる効果はありそうだ。

豪華な共有施設を喧伝するチラシ

かつて、大浴場や温水プール、挙句の果ては岩盤浴なんていうとんでもない共用施設を売りにした数々のマンション広告があった。
見栄えのする共用施設は、いかにも販売促進効果がありそうだ。
ただ、死亡事故につながるレジオネラ菌が発生しないように、シッカリ水質管理を行おうとすると、それなりに維持管理費がかかることは知らされることはない。
決して安くない水道光熱費を、将来にわたって利用者負担で賄えるかどうかも疑問だ。最初のうちは物珍しさで大勢が利用するかもしれないが、いつまで続くか。
利用者数が減少に転じた暁には、維持管理費が利用者負担ではなく、マンション管理費に組み入れられることになる、あるいは最初からそのような会計区分になっているのかもしれない。いずれにしても、この手の豪華な共有施設は遠からず不良資産化するだろう。


この2、3年下火になっていた豪華な共用施設を喧伝するチラシがチラホラ。
豪華な共用施設で販促し、あとのツケは住民に回すというビジネスモデルの復活だ。

3.11後に増えた、防災設備をPRするチラシ

3.11後に増えたのは、防災設備をPRするマンションチラシだ。
「緊急地震速報システム」は普及途上。「各階防災備蓄倉庫」は、震災以前からときどき見かけられていた共用施設だ。
「各階防災備蓄倉庫」や「共用防災倉庫」という立派なハードは備わっていても、販売価格に大きな差がある大規模マンションで、将来、住民の間で「共助」が働くのか、気になるところだ。

バイオメトリクス認証システム

指紋と同じように声(声紋)も個人特有のもの。
声と事前に登録したあなただけのキーワードを認識して、ドアを開錠する声紋認証ドア開閉システム。両手に荷物を持っているときやお子様を抱いているときも安心。


この声紋認証オートロックシステム(開けドアシステム)は、風邪や花粉症などで声が変わっても、認証しやすくなっているという。
では、声変わり中の男の子はどうか? その都度、声紋登録し直すのか?
しゃべれない人(ハンディキャップ)には、もちろん使えない。
声紋の認証精度は高いというが、隠しマイクを仕掛けられて自分のキーワードを録音されてしまったら誰でも侵入できてしまうのではないか――。


共用エントランスのバイオメトリクス認証システムとして、声紋以外に、次のような様々な商品が宣伝されていた時期があった。

  • 虹彩認証
    • 目の虹彩で識別。虹彩データは2歳以降変化しない。荷物を持ったままで開錠できるメリットあり。
  • 血流認証
    • 静脈の血管形状パターンで本人を識別。専用端末に指を入れて認証。
  • 指紋認証
    • 照合装置で指紋を照合させ、事前に登録した指紋と一致すると開錠される。
  • 顔(フェイス)認証
    • 顔のデータを登録。学習機能付きで経年変化にも対応。メガネの有無や髪型の変化にも対応可能。来訪者の顔データを履歴として残し、不正の抑止・追跡が可能。



誰が触れたかわからない指紋認証センサーに指を押し当てるなどというのは、綺麗好きの人には耐えられないであろう。
そもそも、隣の人の顔も知らない都会の大所帯のマンションでは、住人にまぎれて侵入する(住人の後について入る)ことはいとも簡単だ。
そんなこんなで、最近はこの手のバイオメトリクス認証システムを宣伝するマンションチラシを見かけなくなった。

(本日、マンション広告なし)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.