今朝(3月10日)新聞を読んでいたら、若干の目まいを感じた。
健康に気をつけないといけないなと思って、新聞から目を上げると、天井の照明器具から垂れ下がっている紐が揺れているのに気がついた。
NHKニュースで、三陸沖を震源とするマグニチュード6.6の地震の影響であること、昨日(3月9日)午前に発生した三陸沖を震源とする地震の余震であることを知る。
三陸沖で発生した地震が、筆者の住む都内にゆらゆら感を及ぼすのは「長周期地震動」の影響。
長周期地震動といえば――、日本建築学会が先週の金曜日(3月4日)、4年にわたる調査研究結果を報告したばかりだった。
この調査研究の結果は、「長周期地震動対策に関する日本建築学会の取り組み」として、1枚の要約と8枚の詳細文書が日本建築学会のホームページに公開されている。
この調査研究結果文書の中から、超高層マンションに住んでみたいという方や、すでに住んでいる方に代わって、関心がありそうな点をピックアップしてみた。
主な知見
- 首都圏、名古屋圏、大阪圏に建つ既存超高層建物は、これまで検討した最大の地震である東海・東南海・南海地震の三連動地震によって、当初設計時に想定した地震動よりも相当長い時間にわたって大きく揺れる可能性が高い。しかし、三連動地震に対しても、これら都心部に林立する超高層建物群がもろくも崩壊する可能性はほとんどない。
- 超高層建物において、非構造部材の損傷や家具什器類の移動・転倒が起こる可能性は極めて高い。一方で、家具什器類の移動や転倒は、適切な固定対策によって確実に防げる。
予想や予測の検証(確認できたこと)
- 長周期地震動は特定の固有周期をもつ超高層建物に対して大きな揺れを長時間もたらす。
- その周期は、南海地震による大阪では約4〜6秒、東海・東南海地震による名古屋では約2〜4秒、東京では約5〜8秒に現れる。大きな揺れは繰り返し加わり5〜10分間も続く。
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- 最上階では、高さの1/100程度の揺れ幅(50階建であれば約±2m)が数分間にわたって継続するが、これはかつて誰も経験したことのない揺れで、人間の心理、生理に与える影響は計り知れない。
- 多くの超高層建物では、非構造部材の損傷、家具や什器類の移動・転倒が起こる可能性が極めて高い。一方で、家具什器類の移動や転倒は適切な固定対策によって確実に防げる。
- 特に、キャスター付き家具や機器類は、長周期の揺れによって大きな速度で移動するため、機器類の衝突による負傷者の発生やガラス窓の破損等の可能性も高くなる。
対策への提案
- 長周期地震動を受ける超高層建物にどのような事象が発生し、どのような被害を受けるかは未経験であるので、それを補うために想定シナリオを描いて、現状の課題を洗い出すとともに事前の対策を練っておくべきである。
- 超高層建物の管理者は、多人数かつ多様な利用者や居住者が大地震時にどのように行動すればよいかを示す震災時行動マニュアルを整備して、そのマニュアルの徹底を図るための防災訓練を定期的に実施することが有効である。
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- 分譲集合住宅のような所有者が多数にわたる建物の場合には、長期修繕計画と同様に、耐震診断、耐震改修、被災後補修計画等に対する所有者間の情報共有と事前の合意形成を促すことが望まれる。
今後の課題
- 長周期地震を受ける超高層建物では、大きな振幅の揺れ(2〜4m)が5分間以上も続くが、それが建物所有者や使用者、居住者に与える心理的不安や生理への影響に対して、信頼すべきデータは皆無に等しい。人間の生理・心理と建物の揺れの関係を定量化するための研究を開始しなければならない。