不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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耐震偽装事件で生まれた、建築士の定期講習市場は10億円?


姉歯建築設計事務所がマンション、ホテルの構造計算書を偽造したと国土交通省が発表したのが5年前の2005年11月17日。


耐震強度偽装事件を受けて、建築士法が改正され、「構造設計一級建築士」や「設備設計一級建築士」、「構造計算適合性判定員」という、より専門性の高い資格が創設された。また、建築士事務所に属する建築士には3年ごとの定期講習が義務付けられた。


こういった新たな資格制度が、耐震偽装事件の再発防止にどれほど寄与するのかという議論はさておき――
新たな資格制度によって創出された資格講習市場の一端をのぞいてみよう。


建築士の定期講習を実施できる登録講習機関
建築士の定期講習を実施できるのは、下記に示す国交省の登録を受けた登録講習7機関(H22.11.15現在)。
※カッコ内金額は、テキスト代を含む受講料。

  • (財)建築技術教育普及センター(1級:15700円、2級:15700円
  • (株)日建学院・NPO法人 建築家教育推進機構(1級:12000円、2級:10000円)
  • (株)総合資格学院法定講習センター(1級:12000円、2級:10000円)
  • NPO法人 住宅福祉サービス(1級:12000円、2級:10000円)
  • ビューローベリタスジャパン株式会社(1級:12000円、2級:12000円)
  • NPO法人 東京土建ATEC(1級:10000円、2級:10000円)
  • NPO法人 埼玉土建建築支援センター(1級:10000円、2級:10000円)
  • (株)ERIアカデミー(1級:14000円、2級:14000円)
  • (株)確認サービス(1級:12000円、2級:10000円)



受講者数が圧倒的に多いのは築技術教育普及センター
定期講習修了者数(H22年度上期)
各機関のホームページをひも解くと、受講者数が圧倒的に多いのは建築技術教育普及センター。
受講料のほうも圧倒的に高い(15,700円)にも係らず、(財)建築技術教育普及センターの受講者数が多いのは、年配の建築士の多くが資格関係の講習会は同財団に限ると頭から思い込んでいるからではないか。
日建学院などは、各種の資格取得講座のノウハウもあり、生講義ではないものの、通信衛星システムという全国同一レベル、動画あり、長時間の座学でも疲れにくいなど、さまざまな工夫がなされているので検討の余地ありだと思う。
※日建学院から宣伝費を頂いているわけではありません。念のため。


定期講習修了者数の推移(建築技術教育普及センター)
定期講習修了者数の年度の変化を確認するために、比較的詳細なデータが開示されている(財)建築技術教育普及センターの修了者数をグラフ化してみた。
定期講習修了者数の推移
定期講習がスタートとしたH20年度の受講者数が少ないこと、平成22年度の受講者数が上半期であることを考慮すると、(財)建築技術教育普及センターの年間の平均的な受講者数は、ザックリといえば1級建築士が2万2千人、2級建築士が1万6千人といったところ。


定期講習の市場規模(想定)
大手3社(建築技術教育普及センター、日建学院、総合資格学院)のH22年度上期の修了者数実績をもとに、各社の年間の売上高を試算すると次のグラフのようになる。
※修了者数に対して、各社の修了率(建築技術教育普及センター99.5%、日建学院99.7%、総合資格学院98.0%)で割り戻した人数を2倍(下期分を見込む)にし、各社の受講料を乗じた。
定期講習の市場規模(想定)
3社の合計額は約8.2億円となった。
これに、残りの登録講習機関が4機関であることと、木造建築士についても定期講習が義務付けられていることを考慮すると、10億円近い市場が生まれたといえそうだ。


それにしても、100%近い修了率(修了考査ではねられる人は極めてマレ)の定期講習の意義っていったい・・・・・・。

(本日、マンション広告なし)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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