一般の人にも分かりやすいマンションの耐震性能の指標のひとつとして、国土交通大臣が定めた日本住宅性能表示基準のなかに「構造の安定に関すること」がある。
「倒壊防止」と「損傷防止」
住宅性能表示基準では、「構造の安定に関すること」として、地震・暴風・積雪(多雪区域のみ)について、それぞれ「倒壊防止」と「損傷防止」の2つの観点から評価した結果が等級で表されている。
倒壊防止(建物の倒壊、崩壊のしにくさ)については、極めてまれに(=数百年に一度程度)発生する地震に対して等級3〜1の3段階評価。
また、損傷防止(建物の損傷の生じにくさ)については、まれに(=数十年に一度程度)発生する地震に対して等級3〜1の3段階評価。
等級1(1.0倍)に対して、等級2(1.25倍)、等級3(1.50倍)と数値が大きくなるほど、建物が頑丈になるということ。
震災時の重要拠点となるような学校や病院は、一般的に等級2相当以上の耐震性能をもっている。だから、等級2レベルのマンションの耐震性能は高いといえる。
キッチン設備のグレードアップよりも耐震性能アップを!
建物の耐震性能を高めるには、柱を太くしたり、壁の量を増やしたりしなければならないので、工事費は確実にアップするが、ビルドイン浄水器、食器洗い乾燥機、ハンド式シャワーヘッド付き蛇口など、キッチン設備などの小手先のグレードアップに比べると、はるかにマンションとしての資産価値は高い。
大震災時のことを考えると低層階住戸のほうが安心できる
マンションの構造物としての耐震性能が高いことは安心材料のひとつではあるが、震災時に電気や給水設備などのライフラインも確保できなければ十分とはいえない。
「首都直下地震対策専門調査会(第15回)平成17年2月25日」の「被害想定結果について」によれば、東京湾北部地震(M7.3)が発生した場合、上水道は4日目までに復旧するが、電力は1週間以内で復旧、ガスは復旧に2カ月以上要することが想定されている。
ということは、たとえ上水道が4日で復旧しても、電気がこなければ、給水ポンプが動かないということだ。風呂に入れないのは我慢するとしても、トイレを我慢することはできないだろう。公園や学校の防災用簡易トイレで済ますにしても、高層階の住戸よりも低層階の住戸のほうが、地上へのアクセスはよい。
また、エレベーターは、都内の住宅内だけで約12万基が停止し、閉じ込め事故の発生が約600基、「救助や復旧の遅れにより、閉じ込めが長時間に及ぶ可能性がある」とされている。
大震災時のことだけを考えれば、マンションは低層階の住戸に住んだほうが安心できそうだ。
停電すると機能を喪失する設備一覧
停電時に機能を喪失する設備を念のために確認しておくと次のとおりだ。
- 照明(全館フロア、各住戸)
- エレベーター
- インターフォン(共用玄関・各住戸)
- 共用玄関の自動ドア
- 給水設備(トイレ、台所、浴室、洗面)
- 機械式駐車場
- 給湯器
- 各種電化製品(テレビ、冷蔵庫、エアコン、パソコン、コードレス電話)
- 感知器
だから、震災時にマイカーで田舎に疎開しようとしても、機械式駐車場のマンションでは、車を出すことはできない。