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震災15年、なぜマンションの水は止まったのか ── 停電が引き起こしたマンション生活の盲点

東日本大震災から15年。
当時、首都圏の多くのマンションは倒壊などの深刻な被害を免れた。しかし、住民の生活を直撃した別の問題があった。建物は無事なのに、水が出ない。

実は震災時、建物被害とは別の理由でマンションの断水が各地で起きていた。その原因はどこにあったのか。マンションの給水・排水設備の仕組みから、当時のマンション生活で何が起きていたのかを整理してみたい。


もくじ

断水の原因は「停電」

震災当日、東京電力管内では約405万戸が停電した(東京電力発表)。
さらにその後、電力不足に対応するため計画停電が実施された。

ここにマンション特有の事情がある。

多くのマンションでは、次の仕組みで水を各住戸に送っている。

  • 水道本管 → 受水槽
  • 受水槽 → 加圧ポンプ
  • ポンプ → 各住戸

つまり、ポンプが止まれば水は出ない

ポンプは電気で動く。
停電すると停止し、蛇口をひねっても水は出ない。

マンション給水の基本構造(受水槽方式)

停電すると止まる設備

停電の影響は給水だけではない。
マンションでは、次のような設備が停止する。

  • 給水ポンプ(断水)
  • エレベーター(移動困難)
  • 機械式駐車場(車の出し入れ不可)
  • 排水ポンプ(地下排水が停止)
  • オートロック(停電時に解錠状態となる機種が多い)

建物が無事でも、設備が止まれば生活は大きく制約される。

停電時に停止するマンション設備

設備 主な影響
給水ポンプ 断水
排水ポンプ 排水停止
エレベーター 移動困難
機械式駐車場 車の出し入れ不可
オートロック 解錠状態になる機種が多い

「流せない」というもう一つの問題

水の問題は、供給だけではない。
排水も重要だ。

地下に汚水槽を持つマンションでは、排水ポンプで汚水を下水へ送り出している。停電すると、このポンプも止まる。

この状態で水を使うとどうなるか。
上階で使った水が流れず、下層階で汚水が溢れる事故が震災時に報告されている。

そのため管理組合がトイレ使用を制限した例もあった。
マンションの水問題は「出ない」だけでなく、「流せない」問題でもある。

震災後の設備見直し

こうした経験を受け、マンション設備の見直しの機運は高まった。

例えば

  • 非常用発電機の設置
  • 受水槽の非常用活用
  • 直結給水方式(一部)
  • 防災備蓄の整備

ただし、対応状況は建物ごとに異なる。
既存マンションでは設備更新に費用や合意形成の課題があり、一様ではない。

震災15年、もう一つの問題

ここで新しい課題も浮かんでいる。

震災後に導入された防災設備の多くが、更新時期を迎え始めていることだ。

非常用バッテリーや備蓄品には寿命がある。
設備は設置すれば終わりではない。

震災が浮かび上がらせたマンション生活の特徴

東日本大震災では、首都圏の多くのマンションが倒壊などの重大な被害を免れた。日本の耐震技術の成果と言えるだろう。

しかし同時に、もう一つの事実も明らかになった。
建物が無事でも、停電すれば生活設備は止まるということである。

給水ポンプが止まれば水は出ない。排水ポンプが止まれば水は流せない。エレベーターも動かない。

震災は、都市のマンション生活が電力に大きく依存していることを改めて示した出来事でもあった。

都市のマンションは、「壊れない」だけでは生活が続くとは限らない。

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