不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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(川口市)治安悪化や一部地域での外国人増加、中古マンション価格への影響は?

川口市の治安悪化や一部地域(西川口駅周辺と芝園町)での外国人人口の増加といったネガティブな情報は、不動産価格にどの程度影響しているのか、調べてみることにした。


もくじ

川口市で進む!?「ホワイト・フライト」

埼玉県警察が公表している刑法犯認知件数(市町村別)のうち、令和5年確定値によれば、全刑法犯の認知件数は川口市がダントツに多い(次図)。

刑法犯認知件数_埼玉県内の分布図
【データで見る】川口市の治安は悪いのか」より

 

また、川口市内では、3つの地区(横曽根・青木・芝)において、外国人人口の占める割合に増加傾向が見られ、特に、西川口駅周辺の一部の丁目と芝園町(UR賃貸のある芝園団地)では、「ホワイト・フライト」が発生している可能性がある(次図)。

※ホワイト・フライト(White Flight)とは、治安の悪化などにより、主に白人が人種や文化的な多様性が増加する地域から、より人種的に均質な郊外や農村部へ移転する現象を指す。

外国人人口の割合の分布図_川口市【データで見る】川口市で進む!?「ホワイト・フライト」」より

調査方法

どの不動産データを使えばいいのか?

川口市の治安の悪化や一部地域での外国人人口の増加といったネガティブな情報は、不動産価格にどの程度影響しているのか、調べてみることにした。

どの不動産データを使えばいいのか?

東日本不動産流通機構が毎月発表している「月例マーケットウォッチには、埼玉県中央地区(川口市、戸田市、蕨市、上尾市)として中古マンションの成約単価や件数などが公開されている(次表)。でも残念ながら、川口市・戸田市・蕨市といった隣接自治体だけでなく、遠く離れた上尾市のデータも含んだ平均値なので今回の分析には使えない

埼玉県中央地区(川口市、戸田市、蕨市、上尾市)中古マンション成約状況

さて、どうしたものか。

じつは国交省が運営しているサイト「不動産情報ライブラリ」のなかに、丁目単位の「中古マンション等」の取引実績データ(取引価格、取引時期、最寄駅、建築年等)が公開されている(次図)。

※「不動産情報ライブラリ」は、指定流通機構(レインズ)保有の不動産取引価格情報を、国土交通省が個別の不動産取引が特定できないよう加工した、消費者向け不動産取引情報サービス。

不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索

※上図では、「時期」は「2005年第3四半期~2024年第1四半期」と表示されているが、実際には2021年第1四半期以降のデータしか公開されていない(理由は不明)。

建築年2015年以降の物件(1,718件)を対象

埼玉県で「中古マンション等」(区分所有物件。住戸単位)として登録されているデータは13,391件(24年10月28日現在)。建築年(=竣工年)の内訳は、戦前(1件)、不明(201件)、1963年~2024年(13,189件)。

新しい物件ほど成約単価が上昇する傾向がある(次図)。

中古マンション、建築年と平均成約単価の関係

したがって、建築年の幅を広く取り過ぎると、成約時期別に地域ごとの平均単価を計算した結果のもつ意味合いを解釈することが難しくなってしまう。

そこで、以下の分析では、過去10年、すなわち建築年が2015年以降の物件(1,718件)を対象とすることにした(次図)。

建築年別の取引件数

調査対象物件の内訳

※西川口駅の調査対象件数が少ないことに要留意。

  • 埼玉県:1,718件
  • 川口市:203件
  • 西川口駅:39件

中古マンション価格への影響(調査結果)

まず、建築年2015年以降の物件につき、成約時期と平均成約単価の関係を可視化する(次図)。

ザックリ言うと、埼玉県の平均成約単価は10年間で上昇傾向が見られるのに対して、川口市のそれは上昇・維持・上昇、西川口駅のそれは上昇・維持・上下。

  • 埼玉県の平均成約単価緑色
    10年間で60万円から70万円に上昇している傾向が見られる。
  • 川口市の平均成約単価青色
    21年に60万円から70万円に上昇したあと、22年に65万円に下落。23年に80万円近くまで跳ね上がったあと70万円まで下落。
  • 西川口駅の平均成約単価ピンク色
    21年末に70万円まで上昇したあと、22年も70万円を維持。23年に80万円近くまで上昇したあと、65万円まで下落し、70までリバウンド。

中古マンション、成約時期と平均成約単価の関係

 

上図では、治安悪化や一部地域での外国人増加による価格への影響がよく分からない。そこで、埼玉県の平均成約単価を基準に、川口市、西川口駅それぞれの平均成約単価を指数化してみた(次図)。

データにバラツキがあるので、近似曲線(線形近似:矢印の付いた破線)に着目すると、川口市の平均成約単価【指数】が105程度で推移しているのに対して、西川口駅の平均成約単価【指数】は110から95に低下しているように見えなくもない。

言い換えると、埼玉県、川口市ともに平均成約単価が徐々に上昇しているのに対して、西川口駅の平均成約単価は下落しているのではないか、ということである。

※調査対象を建築年2015年以降の物件(1,718件)に絞り込んだことから、川口市(203件)と西川口駅(39件)の調査対象件数が少ない結果であることに要留意。

中古マンション、成約時期と平均成約単価【指数】の関係

  • 川口市の平均成約単価【指数】=川口市の平均成約単価÷同じ成約時期の埼玉県の平均成約単価×100
  • 西川口駅の平均成約単価【指数】=西川口駅の平均成約単価÷同じ成約時期の埼玉県の平均成約単価×100

まとめ

川口市の治安の悪化や一部地域(西川口駅周辺と芝園町)での外国人人口の増加といったネガティブな情報は、不動産価格にどの程度影響しているのか。

国交省が運営しているサイト「不動産情報ライブラリ」で公開されているデータを元に分析した結果、川口市の平均成約単価が徐々に上昇しているのに対して、西川口駅の平均成約単価は下落している可能性が見られた。

なお、調査対象を建築年2015年以降の物件(1,718件)に絞り込んだことから、川口市(203件)と西川口駅(39件)の調査対象件数が少ない結果であることに要留意。

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