第213回国会(24年1月26日~6月23日)の衆議院の質問主意書206件のなかに、194番目として住宅価格高騰に係る次の質問主意書が埋もれている。
松原仁 衆議院議員が6月18日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
※読みやすいように、一問一答形式に再構成。
松原仁 衆議院議員(無所属)
(衆議院 予算委員会 24年2月28日 動画より)
松原仁 衆議院議員(8期、立憲民主党⇒無所属、早大商卒、67歳)
近年、マンション価格の高騰が続き、多くの一般国民の住宅購入に非常に大きな影響を与えるまでになっている。株式会社不動産経済研究所が公表している「首都圏/近畿圏新築分譲マンション市場動向2023年(年間のまとめ)」によると、東京23区の新築マンションの平均販売価格が1億円を超え1億1483万円となったとのことである。これは、対前年上昇率でみると39.4%と大幅な上昇となっていた。
「過去22年間の「首都圏新築マンション市場動向」を可視化(2023年版)」より
また、日本放送協会(NHK)の報道によると、東京オリンピックの選手村を改修したマンション群で、主にファミリー向けに17棟の分譲マンションで構成されている「晴海フラッグ」に関し、マンション全体の3割以上の部屋に住民票の登録がなく、居住実態が確認できなくなっているとのことである。
これは、投資目的で多数の部屋を所有している法人の存在が同報道で明らかにされているから、居住目的ではなく、投資目的による所有が原因の一端であることは明らかである。
現状の23区内のマンション価格は、一般国民が買えるレベルにあるとは認められない。投資目的の住居用不動産取得を抑制し、マンション価格を一般国民が買えるレベルに保つことは、首都圏に住み、働く、多くの人々が継続的に健全な生活を送るために不可欠と考える。そのためには、投資目的のみでの不動産所有を抑制することは避けられない。
真に住むための住宅を求める国民が手にすることができる程度にマンション価格を維持することが必要であり、そのためには、住民票の登録がなく、実際に居住実態が確認できないマンション所有者に対して課税することができる、新たな税制の導入も検討すべき状況にあると考える。これにより、ある程度、投資目的のみでの不動産所有を抑制することが期待される。
そこで、次のとおり質問する。
問1:現在の東京23区内のマンション価格、どのように考えている?
政府として、現在の東京23区内のマンション価格について、どのように考えているか。
答1:国交大臣「平均価格が上昇傾向にあると認識しております」
お尋ねの「現在の東京23区内のマンション」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、例えば、東京23区における新築分譲マンションの令和5年度の平均価格は、株式会社不動産経済研究所の調査によれば、1億464万円であり、前年度に比べて5.7%上昇したとされており、お尋ねについては、令和6年4月4日の参議院国土交通委員会において、斉藤国土交通大臣が「近年の新築マンション価格は、都市中心部への堅調な住宅需要が見込まれる中で、価格の高い物件や大型物件が多く供給されたことや建築コスト等の高騰を背景として、平均価格が上昇傾向にあると認識しております。」と答弁したとおりである。
問2:マンション価格の高騰抑制、新たに導入を検討しているもの?
政府として、マンション価格の高騰を抑制し、一般国民が住宅を購入しやすくするための施策として新たに導入を検討しているものがあれば明らかにされたい。
答2:現時点において、検討していない
現時点において、お尋ねの「マンション価格の高騰を抑制し、一般国民が住宅を購入しやすくするための施策」については検討していない。
問3:居住実態が確認できない場合に、課税する新たな税制の導入?
マンションの住戸で、住民票の登録がなく、居住実態が確認できない場合に、当該マンション所有者に課税する新たな税制の導入について、政府の見解如何。
答3:「新たな税制の導入」については検討していない
現時点において、お尋ねの「新たな税制の導入」については検討していない。
雑感(投資目的のマンション所有を抑制、政府は後ろ向き?)
「マンション価格の高騰を抑制し、一般国民が住宅を購入しやすくするための施策」について、政府は「検討していない」という。
また、晴海フラッグのように、住民票の登録がなく、居住実態が確認できない場合に、当該マンション所有者に課税する新たな税制の導入についても政府は「検討していない」という。
投資目的のマンション所有を抑制することに対して、政府は後ろ向きであるように見えるのだが……。
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