50年ローンだと、仮に25歳で借りても、完済するのは75歳。サラリーマンであれば、定年をとっくに過ぎている。
金利が固定されているとはいえ、50年年間も安定的に返済し続けるだけの自分の行く末を見通せる人などいるのだろうか。
「フラット50」の融資実績の件数はどのくらいあるのか?
フラット50の融資実績を調べてみると――
50年住宅ローン(日経記事)
マンション価格の高騰で、返済期間が最長50年の住宅ローンが増えていることを伝える日経記事。
50年住宅ローン、総返済額増えるリスク 毎月負担は軽減
(前略)都市部では新築、中古ともにマンション価格は当面、高止まりが続くとみられ、住宅ローン返済の負担は家計に重くのしかかりそうだ。
このような状況で増えつつあるのが、返済期間が最長50年の住宅ローン。ネット専業の住信SBIネット銀行や、広島銀行など地方銀行が展開している。JAバンクやろうきんなど40年の住宅ローンを扱う金融機関もある。
長期の住宅ローンは、最長50年まで融資する「フラット50」(09年から発売)が先駆けといえる。フラットのシリーズは全期間の金利が固定の住宅ローンで、全国の金融機関が住宅金融支援機構と提携して提供している。よく利用されているのは返済期間が最長35年の「フラット35」だ。(中略)
返済期間が最長50年といっても完済時の年齢は決まっている。たとえば、完済時80歳未満の場合は29歳以下の人でないと50年のローンは組めない。年齢を重ねるほど、50年のローンを含め長期で組むのは難しくなるが、子どもが返済を受け継ぐ「親子リレー返済」を利用できるところも多い(要件あり)。(以下略)(日経新聞 23年12月8日)
日経記事では、「増えつつある」のが取り扱い銀行の数なのか、50年ローンの融資件数なのか曖昧だ。
それはともかく、50年ローンの融資がどの程度利用されているのかは、とても気なる。50年間も借金を負い続けることを良しとする人がどのくらいいるのか?
ネットでググると
50年ローンだと、仮に25歳で借りても、完済するのは75歳。サラリーマンであれば、定年をとっくに過ぎている。年金でローンを返せというのか!?
子どもが返済を受け継ぐ「親子リレー返済」を選択する親などいるのか。
金利が固定されているとはいえ、50年年間も安定的に返済し続けるだけの自分の行く末を見通せる人などいるのだろうか……。
フラット50の融資実績はどのくらいあるのか?
ネットをググってみると、日刊不動産経済通信が提供した記事がヒットした。
機構によると、フラット50の融資実行実績は17~22年度の合計で2,913件。
フラット50の融資実行実績は、6年間で2,913件。こんなに多いのか、というのが筆者の印象だ。
ここ数年の傾向はどうなのか? もう少し詳しいデータが見てみたい。
「フラット50」融資実績、住宅金融支援機構に聞いてみた
フラット50の元締めである住宅金融支援機構に情報開示請求をしようとしたら、その前に情報公開窓口で開示請求の対象となる法人文書名を特定する必要があるのだという(住宅金融支援機構における情報公開の手続について)。
そこで、情報公開窓口である「CS・事務管理部」のコールセンター(03-5800-8408)に電話してみた。
担当者からは、フラット50に係る年度別の融資実績をまとめたような「法人文書」はないので、情報開示請求しても「該当文書なし」の扱いになるとのこと。直近5年程度であれば、件数を集計して口頭で回答することは可能とのことだったので、それで了解した。
このようにして入手した直近5年(2019年度から2023年度11月末まで)のフラット50の融資実績件数を可視化したのが次図。
2020年度が最も多く914件。なぜ2019年度から急増したのか、担当者に聞いても「分析していないので、分からない」とのこと。
※上図件数にはマンションだけでなく戸建ても含まれている可能性がある。
さらに次のデータを加味してみる。
上述した日刊不動産経済通信が提供した記事により、フラット50の17~22年度の融資実績件数の合計が2,913件であることが分かっている。機構からヒアリングで得た19~22年度の件数(2,654件)を差し引くと、17~18年度は259件となる。
また、23年度は11月末までで316件だから、月数で比例配分した予想件数は474件(=316÷8×12)。
これらのデータも反映したのが次図。
フラット50の融資実績は20~22年度に大幅に増加したことが分かる。ただ、増加したのがコロナの影響によるものなのかどうかまでは分からない。
【参考1】「フラット50」特徴
「【フラット50】長期固定金利住宅ローン|住宅金融支援機構」より
- 対象
フラット50は、長期優良住宅に認定された新築・中古の戸建てだけでなく、マンションも対象(対象となる技術基準:新築・中古)。 - 年齢
- 借入期間は36年以上50年以内かつ、満80歳までに完済することが要件。
- そのため、申込時の年齢は44歳未満(80歳-36歳)となる。
- ただし、親子リレー返済を利用する場合には、子の年齢にあわせて返済期間を設定できるため、申込者が44歳以上でも借りられる。
- 借入額の上限
フラット35と同じ8,000万円。ただし、フラット35は建設費・購入費と同額まで借りられるが、フラット50は建設費・購入費の9割が上限。
※「フラット50」の詳細は、「フラット50|住宅金融支援機構」参照。
【参考2】「フラット35」融資実績
上述のようにフラット50の融資件数が増えたとはいえ、高々900件超。
フラット35とは桁が違う。新築マンションの融資件数は減少傾向にあるとはいえ、22年度は4,278件(次図)。
「フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)」データを元に作成
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