渋谷区議会の「23年第1回定例会」本会議の代表質問(2月22~24日)で、羽田新ルートに関して2人の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約2千200文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
※投稿23年3月2日(追記同日:鈴木建邦 議員分)
田中正也 議員(共産)
田中正也議員(共産、区議3期、中央大学法学部卒、61歳)
田中:政府に正面から運用停止を求めるべき
羽田空港新飛行ルートの運用が始まって3年ですが、騒音と落下物への不安は広がるばかりです。日本共産党区議団のアンケートでは「直ちに撤回すべき」は54%に達しています。
特に、昨年3月に本町に氷塊が落下して以来、「私の住む地域でもいつ落ちてくるか不安」「騒音だけでも我慢できないのに、命まで危険にさらして飛ばす必要があるのか」と怒りの声が広がっています。
住民の生活と命を脅かす羽田空港新飛行ルートについて、政府に正面から運用停止を求めるべきです。所見を伺います。
区長:現時点で特に国に求める考えはありません
長谷部健 渋谷区長(無所属、2期、元渋谷区議会議員3期、専修大学商卒、50歳)
次に、羽田空港新飛行ルートについてのお尋ねです。
羽田空港の機能強化は、国の責任において行われています。
引き続き、羽田空港新飛行ルートに関わる騒音対策・安全対策等について、国にさらなる取り組みを図るよう求めていきますが、新飛行ルートの運用停止については、これまで貴会派のご質問に繰り返しお答えしてきた通り、現時点で特に国に求める考えはありません。
治田学 議員(立憲)
治田学議員(立憲民主、区議3期、長妻昭元秘書、専修大卒、52歳)
治田:アンケートを行い、区民の声を聞く姿勢を持っていただきたい
次に、羽田低空飛行問題についてお伺いいたします。環境問題について、羽田低空飛行問題についてお伺いいたします。
渋谷区の上空を飛行機が飛び始めてから、この3月で3年目に入ります。この間、渋谷区議会からは国に対し、令和3年10月に「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」を、令和4年6月に「羽田空港新飛行ルート運用に対する地域住民の不安を解消する策を講じることを求める意見書」を送っています。
一方、渋谷区としては、区長は「国の責任で説明や情報提供すべき。また、安全対策等を図るよう必要に応じて求めていく」と、これまで答弁での積極的な姿勢は見られませんでした。
一方で、昨年末に品川区の区長になった森澤恭子氏は、来年度予算に計上される区民アンケートに羽田新飛行ルートについての設問も盛り込むとのことです。是非、渋谷区においてもアンケートを行い、この問題について区民の声を聞く姿勢を持っていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。区長の答弁を求めます。
区長:アンケートを実施する考えはありません
長谷部健 渋谷区長
次に、環境について2点のお尋ねです。初めに、羽田空港新飛行ルートについてのお尋ねです。
私は、羽田空港の機能強化に関してお寄せいただいた区民の声をお聞きし、国に伝えています。これまで再三お答えしていますが、騒音対策、安全対策等については機会をとらえて国にさらなる取り組みを図るよう求めています。
国から聞いたところでは、「国に直接寄せられる苦情等は年々減少してきている」とのことであり、このことは区民の皆様の声が国に届き、様々な対策が講じられた結果ではないかと思います。
区民の声を国にお伝えする姿勢は今後も同様ですが、国の事業である羽田空港の機能強化に関しては、区の限られた経営資源を通じてアンケートを実施する考えはありません。
治田:LINEでは(アンケートを)行なっていただきたい
次に、羽田空港の問題についてなんですけれども、これについて「苦情は減っている」ということなんですけれども。お金かけなくてもLINEで他のことは色々アンケートを行うのに、こういったことは積極的にLINEでも行わないと。
LINEだけが、私はアンケートが適切かどうかということはふうには思いませんが、LINEではできるので、LINEでは(アンケートを)行なっていただきたいと思います。
これについて、LINEでやっていただけるかどうか、区長の答弁を求めます。
区長:アンケート、実施する考えはありません
羽田についてはもう再三申し上げておりますが、アンケートについては実施する考えはありません。
先ほど申し上げましたけども、これ国において議論されるべき話です。
是非、国政政党であられる御党も、しっかりとここをやっていただきたいなっていうふうに私は願っております。
鈴木建邦 議員(無所属)
※本人から3月2日午後0:05、羽田新ルートを取り上げた旨のツイートを頂戴したので、以下追記。
鈴木 建邦 議員(17年民進党⇒無所属、区議5期、長妻昭元秘書、東大経済卒、48歳)
鈴木:区民生活を守る観点から改めて負担軽減を求めていくべき
次、羽田新ルートですね。利用される機会も年々増えています。区民生活を守る観点から改めて負担軽減を求めていくべきです。区長の見解を伺います。
区長:状況に応じて対策の強化を求めていきます
長谷部健 渋谷区長
次に、羽田空港新飛行ルートに伴う区民負担の軽減についてのお尋ねです。
国は飛行機の着陸時における降下角の変更など、経路下の騒音軽減に繋がる様々な方策を航空会社と連携して講じてきており、国に直接寄せられる苦情が減ってきていることなどからも、対策の効果に一定の手応えを感じているようです。
引き続き、新飛行経路下の住民にかかる負担に関し、国は騒音軽減対策等を継続していくと思われますが、国の取り組みを見守りつつ、状況に応じて対策の強化を求めていきます。
雑感
羽田新ルートの本格運用が20年3月に始まって、20年6月の第2回定例会以降、羽田新ルート問題に係る文字数(≒質疑応答時間)に減少傾向が見られる。
22年第2回(6月)に増加したのは、3月13日に渋谷区内で発生した氷塊落下の影響による一時的な現象だったようだ。
19年以降の各会派の登壇状況を可視化したのが次表。
※事前質問項目に「羽田」の文言が含まれていないと、羽田新ルート取り上げ議員として認識されていない場合がある。
- 共産党
21年第3回定例会以前は毎回羽田新ルート問題を取り上げていたのに、その後は取り上げる機会が減少。22年第2回の代表質問に立った牛尾 議員は取り上げたものの質問項目6つのうちの最後という扱い。
また、今回の田中議員は質問項目7つのうちの1-(3)番目に取り上げたものの、内容はあまりにも薄い(文字数にして228文字)。一応質問しておきました、みたいな。 - 立憲民主党
立憲民主党渋谷(3人)のなかでは、少なくとも羽田新ルート問題については治田議員の質問が最も切れがいい(羽田新ルート以外についてはウォッチしていない)。
治田議員は今回もまた区長に執拗に迫ったが、「LINEを利用したアンケート」というテーマはイマイチ(ネタ切れか?)。あと、質問項目6つのうちの5番目、「環境について」のなかで、「笹塚3丁目の公道カート問題」と一緒に取り上げたのはいただけない(次図)。これではつぶさに動画を視聴しないと羽田新ルートを取り上げていることに気づくことができない。
- れいわ渋谷
2人(堀切・金子議員)は、長谷部区長の答弁に押し切られながらも創意工夫を凝らした質問を何回も粘り強く投げかけてきた。
堀切議員が今回羽田新ルートを取り上げなかったのは、22年10月24日にれいわ新撰組に入党したことの影響か……。
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