マンション市場分析/管理コストのゆがみ/見えにくい将来リスク
マンションの管理費と修繕積立金――そのバランスは取れているか。
毎月当たり前に払っているからこそ、意外と中身を見ない項目である。だが、ここに今、深刻なひずみが生じている。
管理費がじわじわと膨らむ一方で、修繕積立金が削られ続けている。
これを「将来に備える貯金が、日々の支出に食われている」と表現したら、少しは危機感が伝わるだろうか。
※初出:2021年5月30日(更新:2025年5月27日)
築年別の異変──管理費が上がり、修繕積立金が下がる
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が毎年5月下旬に発表する「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」データを用いて、建築年別に平均値の推移を可視化した(次図)。
注目すべきは、2012年を境に発生した”ワニの口現象”である。管理費と修繕積立金の差がワニの口のように大きく開いたのだ。
それ以前、築13年以上の中古マンションでは、1㎡あたり月額150~200円で、管理費と修繕積立金はおおむね拮抗している。
だが、2012年以降は様相が一変する。
管理費は2012年の210円から右肩上がりに上昇し、2023年には309円に。逆に修繕積立金は、200円から129円まで減少しているのだ。

勘違いしやすいのは、横軸が建築年であることに起因する。上図は当該年の管理費・修繕積立金の水準を示しているのではない。現時点における、築年数に応じた管理費・修繕積立金の水準を示しているのである。
そのことを理解したうえで、次のような意見をどう理解すればいいのか?
「建築年が新しいと修繕積立金が安く、築10年を超えると(古くなると)、値上げによって修繕積立金が高くなるのは当たり前ではないのか」
いや、そうではない。この不健全な初期設定(管理費は高く、修繕積立金は安い)は、年数が経過しても引き継がれてしまう可能性が高いのだ。
つまり、築浅物件ほど「将来に備える力」が削られているというのが正しい現状認識だ。
なぜ、管理費ばかりが膨らむのか?
この歪みの背景には、新築販売の戦略的価格設定があると見てよい。
2013年、アベノミクスの追い風で新築マンション販売が活況を呈する中、売主は価格競争に晒された。そこで用いられた手法が「修繕積立金の初期設定を不自然なほど低く抑えること」である。こうすることで、物件の販売価格を安く見せかけられる。
一方、管理費については、売主の関連会社が管理業務を受託することが多く、高めに設定されても売主の懐が痛むことはない。
つまり、見せかけの安さと、自社利益の両立を狙った結果、修繕積立金は削られ、管理費は維持・上昇という構図が生まれた。
そして厄介なのは、この不健全な初期設定が、中古になっても引き継がれてしまう点である。
「合計額は変わらない」でも中身が問題
㎡単価では実感しにくいかもしれないので、標準的な65㎡の住戸で試算してみよう。
月額合計は25,000〜30,000円程度で推移している。だがその内訳を見れば、管理費が増え、修繕積立金が減っている。明らかにバランスが崩れているのだ。

つまりこういうことだ。
「払っている総額は変わらないのだから問題ない」という認識こそが、最大の問題である。
マンションは買って終わりではない。
日々の支出の中に、未来への備えが織り込まれているかどうか――この視点を持つか否かで、10年後の暮らしが決まる。
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