マンションの管理費や修繕積立金は安ければいいのか。もちろんそんなことはない。
特に修繕積立金の月額が著しく低く設定されていると大規模修繕に必要な額が十分に積み立てられないから、将来困るのはマンションを購入した住民だ。マンションの売主が困ることはない。新築時の低い額を値上げしようと、マンション管理組合の理事たちが苦労している話はよく耳にする。
では、実際のところ、首都圏の中古マンションの管理費や修繕積立金はどのくらいなのか。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が毎年5月下旬に発表している「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」に1698年度から前年度までのデータが掲載されているので可視化してみた。
※投稿21年5月30日(更新23年8月19日:2022年度データを反映)
築浅マンションは管理費が高く、修繕積立金が安い
首都圏中古マンションのm2当たりの平均月額管理費・修繕積立金の推移を次図に示す。
00年以前に完成した築20年以上の首都圏中古マンションのm2当たり平均月額の管理費・修繕積立金は概ね150から200円の範囲で推移していた。
ところが、00年ころを境に状況が変わる。管理費は00年の177円から高騰し始めて21年には311円に達している。修繕積立金は、逆に00年の193円から下落し始めて110円前後まで下落した。
なぜ、築浅マンションの管理費は高く、修繕積立金は安いのか。
つまりこういうことではないか。
00年から12年にかけて新築マンションを売りやすくするために(販売価格を抑えるために)、売主の子会社の懐が痛まないよう管理費の高騰分を確保する一方で、売主の懐が痛まない修繕積立金を下げた。この状況はアベノミクスが始まった13年以降さらに加速する。中古マンションになっても管理費・修繕積立金の見直しが行われず新築時の売主本位の設定価格が残っている。
管理費が修繕積立金を侵食している
m2当たり金額ではピンとこないかもしれない。そこで専有面積65m2に換算した月額管理費・修繕積立金の推移を次図に示す。
管理費と修繕積立金を合計した月額は、概ね22,000円から25,000円の範囲で推移していて、管理費が修繕積立金を侵食している様子が見て取れる。
気になるのは、築20年以上の中古マンションの管理費が適切に確保されているかということと、築浅の中古マンションの修繕積立金が少な過ぎるのではないかということである。
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