観光庁は12月26日、民泊仲介サイト運営事業者宛に「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について(通知) 」という文書を発信。
日本の民泊に大きな影響を与える文書なのだが、まだマスメディアは報じていない。違法民泊の寿命が尽きるまであと5か月!?
観光庁、民泊仲介サイトへの違法物件掲載防止に向けて通知
お堅い通知文書だと分かりにくいのだが、ワンペーパーの要約(「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」 (民泊仲介サイト運営事業者あて通知)のポイント)を読むと、ずいぶんと乱暴なことが書かれているに気づく。
民泊仲介サイトへの違法な物件の掲載の防止に向けて、各事業者が講じるべき措置として10項目が住宅宿泊事業法の施行前と施行後に分けて記されている。
住宅宿泊事業法の施行前に講ずべき措置
旅館業の許可番号などにより適法性の確認ができない物件については、法の施行日(6月15日)までにサイトから削除しろという。
Ⅰ.住宅宿泊事業法の施行前又は登録申請までに講ずべき措置
- 1.民泊仲介サイト運営事業者は、既掲載物件について営業者からの申告に基づき旅館業の許可番号等を確認する等の方法により適法性の確認を行うこと。適法性の確認が出来ない物件については、法の施行日までにサイトから削除すること。
- 2.~5.(省略)
住宅宿泊事業法の施行後に講ずべき措置
住宅宿泊事業者から通知される届出番号の確認ができない物件については、民泊仲介サイトに掲載するなという。
Ⅱ.住宅宿泊事業法の施行後において講ずべき措置
- 6. 住宅宿泊事業法の届出物件を民泊仲介サイトに掲載するにあたっては、住宅宿泊事業者から通知される届出番号を確認すること。当該確認ができない物件については、民泊仲介サイトに掲載しないこと。
- 7. サイト利用者へ適法な物件であることを周知する等のため、民泊仲介サイトにおいて、届出番号等物件の適法性に関する情報を表示すること。
- 8. (省略)
- 9. 宿泊日数が 180 日を超えていないか等を補完的に確認するため、民泊仲介サイトに掲載の届出物件に係る宿泊実績等の情報について6ヶ月毎に観光庁へ報告すること。
- 10. 上記9.の報告等により、違法な物件が掲載されていることが確認された場合には、観光庁からの求めに応じ、速やかに当該物件を削除等すること。
観光庁の通知文書は違法民泊を撲滅できるか
現在国内でAirbnbに登録されている6万件近い民泊物件の大半は、旅館業法違反物件。通知文書通りにことが進めば、6月15日(住宅宿泊事業法の施行日)までに合法化できない物件はAirbnbサイトから消えることになるのだが……。
ホントにそのような事態は起きるのだろうか?
Airbnbは12月19日、「住宅宿泊事業法の施行に向けたAirbnbの取り組みについて」と題して、同法施行に向けて次のとおり法令遵守を宣誓している。
Airbnbは、住宅宿泊事業法の施行に向け、同法に従い観光庁へ登録し、法令遵守のために必要な対応を随時実施して参ります。
すべてのホストは、Airbnbに物件を掲載する手続の一貫として、関係法令の遵守を求める利用規約への同意が必要です。これに加え、該当するホストが住宅宿泊事業法を遵守するよう、観光庁のご指示のもと施策を展開いたします。
地域社会に配慮し、持続可能な形で、ホームシェアを含む住宅宿泊事業が日本全国で普及するよう、引き続き日本政府、自治体、業界関係者の皆様と協働させていただく所存です。
Airbnbの宣誓がフェイクでないとすれば、6月15日(住宅宿泊事業法の施行日)までに、大半の物件はAirbnbサイトから消えることになる。簡易宿所などの合法民泊しか表示されなくなるからだ。
さらに6月16日以降(住宅宿泊事業法の施行後)は、自治体への届出番号が確認できない物件は、Airbnbサイトに表示できない。
ちなみに、3月15日(同法施行3か月前)から6月15日にかけて、自治体への民泊の届出が集中することになるのだが、自治体では受け入れ準備ができているのか。
いまのところ、Airbnbの登録件数が激減するような動きはみられない、というか増えている(次図)。
「全国Airbnb登録件数 5.9万件(前月比8.2%増)」より
今回の通知文書に罰則規定はないし、仮に罰則規定が盛り込まれていたとしても、海外で運営されている民泊仲介サイトに対しては無力だ。
中国系民泊仲介サイトのうち、「自在客」の登録件数が急増しているのが気になるところである(次図)。ひょっとして、中国版Airbnbサイトが違法民泊の受け皿になるなんてことはないのか……。