訪日外国人のオモテナシに資する「ホームステイ型民泊」の拡大とマンション住人の安全・安心の確保が求められている。
民泊新法に「6カ月以下の懲役または100万円以下」の罰則規定が盛り込まれても、現状のように違法民泊が放置されたままでは、何も変わらないのではないか。
住宅宿泊事業法(民泊新法)成立
住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月9日の参院本会議で可決、成立。
早ければ18年1月に施行される見通しとなった。
民泊「解禁」法が成立 届け出義務付け、18年1月にも施行
住宅の部屋に旅行者を有料で泊める民泊を全国で解禁する住宅宿泊事業法が9日午前の参院本会議で、与党と民進党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
家主に都道府県への届け出を、仲介業者に観光庁への登録を、それぞれ義務付けて誰でも民泊を営めるようにする。早ければ2018年1月にも施行する。
民泊事業者には衛生管理や宿泊者名簿の作成、民泊住宅とわかる標識の掲示などを義務づける。届け出を怠るなど法令に違反した場合、業務停止命令や事業廃止命令を受け、従わない場合は6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。年間営業日数の上限は180泊とし、地方自治体が条例で短縮できる規定も盛り込んだ。(以下略)
(日経新聞 6月9日)
業界が綱引きした結果
民泊の普及を警戒する旅館・ホテル業界と、空き物件の活用に前向きな不動産業界が綱引きを続けた結果はどうだったのか?
旅館・ホテル業界は、「年間営業日数の上限180泊」「地方自治体が条例で短縮可」の規定を盛り込むことができた。
不動産業界は、家主不在型民泊において住宅宿泊管理業者(宅建業者)への管理委託義務を盛り込むことができた。
ちなみに、住宅宿泊管理業者への管理委託料は、市場メカニズムによるとされている。ところが、住宅宿泊仲介業務に係る料金のほうは国土交通省令で定める基準に従うとされている(民泊新法閣議決定直前|規制改革会議の議事録をひも解く)。国交省もなんらかの権益を確保しておきたいということなのだろうか。
今後の課題は実効性の確保
「年間営業日数の上限180泊」ルールがあっても、その実効性は疑問視されている。
Airbnbは180日オーバー非表示機能を導入するとしているが、違法民泊ホストがAirbnb以外の民泊仲介サイトを併用すると、サイト横断的なチェックができないからだ(Airbnbが営業日数180日超を非表示にしても抜け穴が・・・)。
最近では、Airbnbの登録件数が伸び悩んでいる間に、中国版Airbnbの登録件数が増加し、大阪では対Airbnbの割合が3割に迫っている(次図)。
「対Airbnb、大阪で中国版Airbnb登録件数3割に迫る」より
日本全国でAirbnbに登録されている民泊物件のうち、5割は東京・大阪・京都といった都市部のマンション。
マンション住人の安心・安全を損ねながら、多くの「投資型民泊」が展開されている。一方、清く美しい「ホームステイ型民泊」は極めて少数派なのだ(次図)。
「マスコミ報道では分からない!全国4万6千件の民泊構造を可視化」より
訪日外国人のオモテナシに資する「ホームステイ型民泊」の拡大とマンション住人の安全・安心の確保が求められている。
民泊新法に「6カ月以下の懲役または100万円以下」の罰則規定が盛り込まれても、現状のように違法民泊が放置されたままでは、何も変わらないのではないか。