4月14日に発刊された『マンションは日本人を幸せにするか(集英社新書)』
榊淳司先生のご著書をアマゾンで購入。税込み821円。
「幸せ」というキーワードに沿った内容が展開されているのは、主に第1章。
全体を占めるのは、マンション管理の問題(第2章、第3章、第8章)やマンション業界の問題(第4章、第5章)、マンションという居住形態の問題(第6章、第7章)。
マンション購入検討者だけでなく、幅広い読者層を意識した構成となっている。
- 第1章 マンションは日本人を幸せに導いてきたか?
- 第2章 マンションの黎明期
- 第3章 管理組合と民主主義
- 第4章 儲けるためのマンション
- 第5章 繰り返される不動産バブル
- 第6章 マンション、この不完全な住まい
- 第7章 マンションは日本人の健康を損なうか?
- 第8章 マンションの未来を拓くために
ちょっとだけ抜粋しておこう。
理事長が組合を私物化してやりたい放題
著者が相談を受けた、都心にある約100戸の分譲マンションの事例。
そのマンションは築10年。東日本大震災で多少の傷みは生じたが、軽微な補修工事で済む程度。ところが、6年前から理事長を務めるS氏は大規模修繕を決議するための臨時総会を招集したというのである。
しかも、発注先はS氏が理事長になってからリプレース(変更)された現在の管理会社。金額は約一億円。管理組合に積み立てられた修繕積立金では足りないので、金融機関から3000万円の借り入れをするのだという。(「第2章 マンションの黎明期」P46)
「買わせる」「ハメ込む」「殺す」
消費者軽視の業界用語に驚かされる。
各企業の事業姿勢の中で驚くほど共通しているところがある。それは「消費者軽視」。
不動産業界に生息する人々の感覚は、エンドユーザーにマンションなどを「買っていただく」というよりも「買わせる」というものに近い。
販売センター内でのスタッフ間のやり取りを聞いていると、如実にその意識が感じ取れる。
「この最上階の高いところは、あの医者に買わせよう」
「この安いところは、年収の低いあのOOさんをハメるしかないな」「××さんは予算〇〇〇〇万円とか言っているけど、自己資金をため込んでいるからもっと高いのを買わせよう」
こういう会話が日々交わされている。「買わせる」、「ハメ込む」なのである。ひどいのになると、案内した物件の契約にこぎつけることを「殺す」という。
そこには「買っていただく」という謙虚な意識はほとんど感じられない。(「第4章 儲けるためのマンション」P117-118)
マンションは日本人を幸せにするか?
幸せにするというのが著者の結論となっている。
ただし、「分譲マンションなら各区分所有者、賃貸マンションならオーナーが、相応に労力と財力を負担しなければならない」(P249)という。
消費者視点で、とっても読みやすい本である。
マンションの購入を検討している初心者にとって、読んでおいて損はないだろう。
『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)