最近、きな臭くなってきたので、資産のポートフォリオに金(ゴールド)を加えるかどうか判断すべく、金(gold)関係の本を読んでいる。
- ジェームズ・リカーズ 『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』朝日新聞出版 2016/12/7
- 博学こだわり倶楽部 『金GOLD 知っておきたい大切な知識』KAWADE夢文庫 2012/11/16
いまさらながら気になったのは、資産としての金(ゴールド)と土地に対する消費税の扱いの違い。
マンションの購入価格には建物部分には消費税がかかっているのに、土地部分のは消費税がかかっていないことについては、少なからずの人はご存じであろう。
でも、土地の部分には消費税が課税されていない理由となると、正確には理解されていないのではないか。
ネットで調べると、「土地は消費されて無くなるようなるものではないから」といった類の説明で終わっている。
では、消費されて無くなるようなるものではない金(ゴールド)には、なぜ消費税がかかるのか?
そのあたりを調べたので、以下に整理しておいた。
なぜ土地売買の消費税は非課税なのか?
国税庁のタックスアンサーによれば、土地が消費税非課税なのは「課税の対象としてなじまないもの」や「社会政策的配慮」からとされている。
1 概要
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引を課税の対象としています。
しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。2 主な非課税取引
(1) 土地の譲渡及び貸付け
- 土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。
- ただし、1か月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。
(2) 有価証券等の譲渡
(以下省略)
- 国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡
- ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。
土地は、「課税の対象としてなじまないもの」か「社会政策的配慮」のどちらなのか?
国税庁のパンフ「消費税のあらまし」によれば、「課税の対象としてなじまないもの」に区分されていることが分かる(次図)。
「消費税のあらまし(国税庁 平成28年6月)P9」より
土地が「課税の対象としてなじまないもの」とは、どういう意味なのか?
ネット情報の多くは、土地は「課税の対象としてなじまないもの」との説明で終わっている。それ以上の説明がされていない。
時間をかけてググって、ようやく見つけたのが「調査と情報」第790号に掲載された財政金融課 加藤慶一氏の論文「消費税の複数税率をめぐる論点」。
同論文には、「個々の対象ごとの非課税の理由について、政府の公式資料はあまり見当たらない」としている。
そのうえで、土地の譲渡の消費税が非課税である理由を、税制調査会『一般消費税特別部会報告』(昭和 53 年 9 月)の議論を根拠に「単なる資本の移転であるから」としている。
土地の譲渡及び貸付け (消費税法別表第 1 の第 1 号:以下、単に号数のみを記す)、有価証券、支払手段の譲渡 (第 2 号) は、消費税が非課税である。その理由は、これらの取引が消費の対象となるものではなく、単なる資本の移転であるからとされている。
なぜ金地金の売買では消費税が課税されるのか?
「単なる資本の移転であること」が土地が消費税非課税の理由であるならば、なぜ金地金も非課税にならかったのか?
残念ながら、このことの経緯は調べきれなかった。
だた、次のような理由が推測できる。
マンションや戸建ての購入は、”一生に一度の買い物”と言われるように、転売する頻度が少ない。よって、土地に消費税が課税されると購入者にとって税負担の影響が大きい。
一方、金地金のほうは、売買の頻度が高い。購入時の消費税課税ぶんは売却時に回収できるから、消費税課税の影響は大きくないというのが金地金に消費税が課税されている理由なのではないか。
あるいは、貴金属業界よりも不動産業界のほうが政治力が強かったということがあるのかも。
ちなみに、有価証券に分類されている投資信託のうち、金ETF(上場投資信託)のほうは、土地と同様、消費税が非課税である。
消費税アップでゴールドラッシュ!?
金地金が消費税の対象であることから、消費税アップに乗じて儲ける方法が話題になったことがある。
金地金を購入する際に生じる消費税は購入者の負担になる。だから消費税8%のときに金地金を購入し、10%にアップした段階で売却すれば2%分が儲かるというのだ。
たとえば、金地金1kgが400万円のときに消費税8%(32万円)を支払う。消費税が10%にアップした段階で売却すると10%分の消費税40万円を受け取れるので、その差8万円が儲けとなる。
もちろん、売却時に手数料がかかるし、そのときに金価格が下落していれば、当然儲けは吹っ飛ぶことになる。
まあ、金地金を購入するにしても長期保有が基本だろう。長期的にはドルの価値が下落していく可能性が高いことを冒頭で紹介した本『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』は教えている。
ひょっとすると、「(国際通貨制度の)崩壊のあとには、金本位制もしくは金を裏付けとする修正SDRが採用されるかもしれない」(同書 P171)。
まとめ
- 土地売買の消費税は非課税である理由は、「課税の対象としてなじまないもの」に区分されていて、「土地の取引が消費の対象となるものではなく、単なる資本の移転であるから」(税制調査会『一般消費税特別部会報告』)とされている。
- 「単なる資本の移転であること」が土地が消費税非課税の理由であるが、金地金には消費税が課税される。その理由は不明。貴金属業界よりも不動産業界のほうが政治力が強かったということなのではないか。
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