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京都市議が3つの提案で紹介した、迷惑民泊の深刻な逸話

京都市の門川大作市長は8月31日の定例記者会見で、集合住宅の一室の民泊化は「認めない」と明言していることについては、このブログでも紹介した。

市の具体的な考え方は「『京都市宿泊施設拡充・誘致方針(仮称)』素案」に記されている。

同素案に係る論点はつぎの3つ。

  • 条件付きで住居専用地区での運営を許可する
  • 町屋や長屋の転用を許可する
  • 集合住宅やマンションでの1室貸しは禁止する 


この素案を踏まえ、中野洋一議員(民進、3期)は9月30日、本会議の代表質問で、あるべき民泊運営のルールとして、3つの提言をされている。

実際に約34件の民泊の現場に足を運んだという同議員。

3つの提案とともに紹介された迷惑民泊の逸話がとても深刻な状況を伝えていたので、会議映像をもとにテキスト化しておいた。


京都市議の提案

京都市議

先日の素案での民泊の取り扱いは、大きく3つあります。

  • 一つ目、条件付きで住居専用地区での運営を許可する。
  • 二つ目、町屋や長屋の転用を許可する。
  • そして三つ目、集合住宅やマンションでの1室貸しは禁止する、というものです。

この3点に対し、私が調査した3つのケースを紹介し、それぞれ具体的な提言を申し上げたいと思います。

提案1:住居専用地域では民泊は厳しく制限すべき

「鍵が開かなくて困っている」とか、朝7時に「お湯が出ないからなんとかならないか」といって見知らぬ人が訪ねてくる。

「屋外でかたまって夜中に大声で話しながらタバコ」など、民泊近隣の住民にとって迷惑千万な話が紹介されている。

生活者の暮らしの安心を確保するために、住居専用地域での民泊は厳しく制限すべきと提案している。

一つ目のケースは、住居専用地域での民泊運営のケースです。
ぜひ、チョット想像してみていただきたいんですけれども、狭い通りの奥まったところ、両サイドに家が6軒あります。そしてそこに住んでらっしゃるご家族がいて、ご相談をいただきました。

突然、見知らぬ人が訪ねてこられて、「来週から向かいの家で友人を泊めることになった」と説明がありました。2、3日おきにいろんな人が泊まるようになっていきます。

ある日お子さんと帰宅すると、自宅周辺に外国人が6名、「鍵が開かなくて困っているから荷物を預かってくれ」と言われました。

朝7時、「お湯が出ないからなんとかならないか」と訪ねてきます。
屋内禁煙だからか、屋外でかたまって夜中に大声で話しながらタバコをのむケースも多かったです。

周りはお年寄りが多く、お子さんを抱えたこの方は、経営者に改善を何度も訴えますけれども、連絡がつかず、忘れたころにかかってきますけれど、一向に宿泊者のマナーは改善しません。

私はお話をいただいて、東山区の保健センターに相談すると、さっそく対応してくれましたが残念ながら、指導権限にも強制力がありません

静かな住宅街に住む皆さんは、不安な毎日を送らなければならないのが現状です。
こういう例は特殊ではあらず、枚挙にいとまがありません。

今回の素案で、住居専用地域に条件付きで民泊は可能となっておりますけれど、本当に生活される方の暮らしに安心が確保できるのか疑問を抱かざるを得ません。
住居専用地域での民泊は厳しく制限すべきであると考えます。

 

提案2:路地での民泊は認めない

路地奥に増える民泊が京都の持ち味の路地文化を壊しつつある現状を紹介している。

夜遅くまで騒がれることで、周囲に物音が響き渡り、落ち着いて休めないことが日常茶飯事。経営者へ連絡はつかず、改善されることもなく。

写真を用いて袋地の説明をする中野議員
(写真を用いて袋地の説明をする中野議員)

そして二つ目のケース。これは東山区に多くある袋地でございます。
長屋が民泊に転用され、大切に守ってきた路地での生活が脅かされているというケースです。
現在、素案では、簡易宿泊所だけでなく、民泊も路地内で認める方向を打ち出しています。

(写真を用いて、袋地の説明)
これがその路地です。どこにでもあると思いますけれども、この奥が大きな通り。通りからずうっと入ってきて、そしてドン突き、向かって東側、お稲荷さんとお地蔵さんがある。
そして反対側、いい感じの、非常にいい雰囲気を醸し出している路地です。
こういった路地は京都市内に多数あると思います。


この路地には全部で10軒あります。この2軒は日中しか住んでおらず、2軒が民泊、2軒が空き家で、そして残り4軒の皆さんでこの路地を守っています。
しかし、次々と泊まりに来る観光客で路地での静かな生活が危機を迎えています。

長屋であるため、夜遅くまで騒がれることで、周囲に物音が響き渡り、落ち着いて休めないことが日常茶飯事になっています。
経営者へ連絡はつかず、改善されることもなく、住民の皆さんは深刻な状況に直面しています。
路地奥に増える民泊が京都の持ち味の路地文化を壊しつつあります

今回の素案では、町屋や長屋を民泊に転用可能とありますけれども、この現状を見れば、あり得ない話です。
町屋などを活用していくことは一定の理解をしておりますけれども、しかし大通りや目抜き通りに面しているものに限って転用許可していくなど、最低限のかたちにすべきではないでしょうか。

 

提案3:違反した経営者には莫大な罰金を科す

議員の友人家族がこの夏に民泊で体験した、消防設備が不備であるがゆえに不安にを感じたというエピソード。

住民はもちろん宿泊客を守るためにも、京都市で民泊をする際は旅館業法、消防法などを確実に守ってもらう。そのために、経営者が違反すれば莫大な罰金を科すことを提案している。

そして3つ目のケースは、集合住宅での民泊です。

今回の素案では集合住宅やマンションでの民泊は禁止とうたっています。ここは非常に評価するところです。

実はこの夏、私の友人が幼い子供を連れて、神戸に2泊3日で家族旅行に行かれました。ネットでホテルを探すと、普通のホテルに民泊が混在しており、民泊という表記もなく、一度予約すると返金不可能という強引なかたちで泊まらざるを得なくなってしまいました。

そして場所はビルの最上階の7階の1室。部屋は泊まることはできましたが、全く快適ではなかったと。

しかも一番不安を覚えたのは、どの部屋にも火災報知器が設置されておらず、消火器の設置もなく、非常時の説明書もなく、その不備にゾッとさせられたということでした。
外国人がよく泊まるという話でございますけれども、非常時の連絡先など外国語で書いてあるものは何一つなかったということでございます。

民泊について、私が最も不安に覚えるのは失火――失う火と書きますけれども――不注意による火でございます。

万一泊まっている民泊で火災が発生した場合、火を見て当惑している外国人宿泊客が果たして初期消火できるでしょうか。119番という番号すらご存知でしょうか。そして119番に通報できるでしょうか。

外に避難したとしても、助けに来られた住民の方に「まだ奥に息子がいるから助けてほしい」と助けを求める言葉が果たして通じるでしょうか。
そして残念ながら、隣近所への燃え拡がりは確実だと思います。

今回の素案に、京都市で民泊をする際は旅館業法、消防法などを確実に守ってもらうと明記されています。

住民はもちろん宿泊客を守るためにも、ここは絶対に譲れません。
経営者が違反すれば莫大な罰金を科す、といったルールにしていかなければ、暮らしに安心は享受できません。

 

住民の暮らしに安心を確保したうえで観光客との共存

民泊運営のルール作りでは、住民の暮らしに安心という点をまず確保し、そのうえで観光客との共存という観点で進めるべきという、至極まっとうな総括。

3つのケースから、横着な経営者により近隣の方ばかりか宿泊者も苦しんでいる実態が見えてきます。

だからこそ徹底して誰もが安心できるルールにしなければなりません。

いままで民泊で苦しむ方々の現場を約34件、私は足を運んできました

この課題は東山区など観光地に近い街だけではなく、いずれ京都市全体の課題として多くの住民を苦しませることになる深刻なものです。

外国人観光客が京都の良さを感じ、訪れ、感激して帰ってもらう。非常にありがたいことで、これは京都こそができる国際交流だと思っています。

しかし、それはこの街で暮らす私たちが安心して暮らせるという精神的なゆとりがなければ、成り立ちません。

民泊運営のルール作りでは、住民の暮らしに安心という点をまず確保し、そのうえで観光客との共存という観点で進めるべきです。

 

この3つの提言に対して、 門川大作市長は「国が検討中の民泊新法の審議の状況も踏まえ、住居専用地域など個々の取り扱いについて具体的に検討していく」と述べるにとどめている。

 

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