東京都は2月8日、「良質なマンションストックの形成促進計画(案)」のパブコメの募集を開始した(締め切り2月22日)。
計画案は次の5章から構成される全102頁。
- 第1章 計画策定に当たって
- 第2章 東京が目指すマンション居住の将来像
- 第3章 施策展開に当たっての基本方針
- 第4章 マンション施策の目標と具体的な施策展開
- 第5章 計画の推進に向けて
興味深いのは、「第5章 計画の推進に向けて」のなかの「4 今後の検討課題と対応」。
昨年の9月3日に公表された東京都住宅政策審議会の答申「東京におけるマンション施策の新たな展開について」にはなかった項目だ。
筆者がブログで答申に欠けていると指摘した次の3つの項目(答申案は問題を先送り?超高層マンション施策や外国人によるマンション購入問題)が今回の計画案では触れられているのだ(都の関係者でこのブログを読んでいる方がおられるのだろうか・・・・・・)。
- むやみやたらと新築マンションを建設させないための抑制策
- 中国人によるマンションの「爆買い」対策
- Airbnbに代表される都心マンションの「ホテル化」対策
少々長いが「超高層マンションの増加」と「居住以外の目的でのマンションの所有・利用」について、抜粋しておこう。
超高層マンションの増加
- 東京では、バブル経済崩壊後の地価の下落と企業所有地の放出等によりまとまった規模の用地の供給が進んだことや、都心居住の推進を目的として住宅に対する建築規制の緩和が図られたことなどにより、1990 年代後半から都心部や臨海部を中心に、超高層マンションの供給が活発化した。
- 現在、東京には、分譲・賃貸合わせて約 550 棟もの超高層マンション(高さはおおむね 60m以上、階数はおおむね 20 階以上のマンション)が存在しており、職住近接の利便性の高い住生活を支える重要な基盤として、都心部の人口増加をけん引してきた。
一方で、既に住宅が量的に充足し、将来的には、人口・世帯数とも減少に向かう中にあって、今後の供給や維持管理の在り方が問われている。- 新たに大量の住宅を生み出し、都市の景観や地域の生活環境等にも大きな影響を与える超高層マンションの新規開発については、都市づくりの観点も含め、規制・誘導の在り方等について検討を進めていく必要がある。
- 超高層マンションでは、維持管理に係るコストの高さや技術的な難しさなどに加え、区分所有者の多さ、区分所有者間の価値観や経済状況の相違、再開発の場合などに見られる権利関係の複雑さや多様な用途の混在等から、一般的なマンション以上に管理組合の運営や大規模修繕等の実施が難しいといった問題が指摘されている。
- 東日本大震災では、長周期地震動により超高層マンションが大きく揺れ、家具の移動・転倒等の被害が発生した。建物自体の被害は免れたとしても、エレベーターやライフラインの停止により、居住継続が困難になることも想定されるなど、地震に対する脆弱性も指摘されている。
- 今後、超高層マンションの居住者や管理の実態、防災対策への取組状況等を調査し、適正な管理・防災対策等の促進に向けた課題や具体的な方策について検討していく。
居住以外の目的でのマンションの所有・利用
- 東京では、以前から、単身者向けのワンルームマンションを中心に、投資用マンションの供給が行われてきたが、近年は、外国人が投資目的で、立地条件が良く、資産価値の高いマンションを購入するケースが増えていると指摘がなされている。
- また、富裕層を中心に、相続税対策として超高層マンションを購入する動きが見られる。
- 東京を訪れる外国人旅行者が増加する中、所有するマンションの住戸を、旅行者にホテル代わりに提供する「民泊」も広がりを見せている。
- さらに、介護や子育て支援などの目的で使用されているケースも見られる。
- これらの区分所有者は、自らマンションに居住していないため、管理に対する関心や責任感が希薄になりやすい。また、外国人所有者は、マンション管理に関する日本の一般的なルールに対する知識・理解が不足している場合がある。このため、管理費や修繕積立金の滞納・未払い、合意形成の困難化等、管理上の問題を生じる懸念が高いと考えられる。
- 民泊利用のケースでは、宿泊利用者のマナー等をめぐって、マンション居住者との間でトラブルも生じている。
- こうしたマンションにおける区分所有者の実態や利用の状況、管理組合の運営状況、管理規約上の使用目的などについて調査し、適正な管理に向けた課題や具体的な方策について検討していく。
「超高層マンションの増加問題」についても、「民泊問題」についても、現在問題となっている事項がほとんど網羅されているといっていいだろう。
ただ、どちらも「・・・向けた課題や具体的な方策について検討していく」で締めくくられている。
「検討」するばかりではなく、速やかな具体策の立案・実施を期待したい。
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