タワーマンションが林立する東京。もし火災が起きたとき、はしご車の台数は足りているのか? そもそもはしご車は届くのか。
都内の消防力は、23区だけでなく多摩地域も含めて10の方面に分かれて配置されている。区市境界をまたいで展開するその体制を、地図に色分けすると一目で見えてくる。防災の最前線を知ることは、住まいを選ぶうえでの安全度を測る物差しにもなるのである。
タワーマンションに”はしご車が届かない問題”
マンション火災のニュースは、黒煙と火柱が立ち上がる映像とともに報じられる。幸い、建物全体への延焼は少なく、防火対策の成果が見て取れる。しかし、隣接住戸が受ける放水による水害は深刻であろう。
注目すべきは、たった一件の火災に多数の消防車が集結する光景である。もし大震災で複数のマンションが同時に火を噴いたら、消防力が到底足りないことは素人でも想像できる。そして、その不安をさらに増幅させるのが「はしご車が届かない問題」である。
タワマンには消防設備が義務づけられている。非常用エレベーター、連結送水管、スプリンクラー、さらにはヘリポート。総合的な対応で大丈夫ということなのだろう。
だが、現場の住民心理としては――いざというとき、はしご車に来てほしい。それが本音ではないか。
では実際に、はしご車はどれだけ用意されているのか。
【独自取材】都内には、はしご車は何台あるのか
東京消防庁によれば、2025年4月1日現在86台である。
同庁は10の消防方面本部を抱え(次図)、81の消防署、208の出張所を展開しているが、はしご車の配置までは公表していない。そこで筆者は消防庁装備部を独自取材し、方面本部別の内訳を入手した。

東京消防庁「管轄区域」より
結果は、東京の現実と大きな乖離を示すものであった。
東京消防庁が所有しているはしご車86台を種類別(30m級、40m級、先端屈折型、車いす対応型、空中作業車)、管轄区域別に整理したのが次表。

まず、主力は30m級はしご車で、全体の約8割を占める。到達できる高さはせいぜい10階前後に過ぎない。40階建て、50階建てのタワマンが林立する東京で、これは“届かないはしご”にほかならない。
40m級や先端屈折型といった特殊車両は数えるほどしかない。40m級はわずか8台、先端屈折型も3台である。20階以上の住戸火災で、これらが迅速に現場へ到着できる保証はない。
配置の偏りも深刻である。新宿・渋谷・池袋といった高層ビル密集地を抱える第三・第四・第五方面に、40m級は各1台程度。しかも1台では同時多発火災に対応できない。タワマンが並ぶ湾岸エリアを抱える第一・第七方面でも、40m級は各2台にとどまる。
つまり「数が少ないうえに偏っている」のである。
車いす対応型や空中作業車といった特殊車両も存在するが、数はごく少数。配備の意義はあっても、実戦力としては心許ない。
雑感
結局のところ、タワーマンション火災の主戦力は“自力避難”である。消防のはしご車に頼って高層階から救出してもらえると考えるのは幻想に近い。住民がどうやって避難経路を確保するか、管理組合がどう防火管理を徹底するかが生死を分ける。
数字を並べれば並べるほど見えてくるのは、「東京消防庁のはしご車86台」は決して心強い数ではないという現実である。タワーマンションの林立する都市において、消防力不足は深刻であり、大震災時に露呈してからでは遅い。
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