安倍首相が石井啓一国土交通相に対して3世代の近居や同居の推進を指示したのを受け、国交省がUR賃貸の割引拡充の検討を始めたことを報じる産経ニュース。
「近くに住めばお得です」 UR賃貸住宅の3世代近居割引を拡充 政府、補正予算で計上へ
政府は5日、独立行政法人、都市再生機構が管理している「UR賃貸住宅」に近居する子育て世帯と親世帯を対象にした家賃割引制度を拡充する方向で検討に入った。
平成27年度補正予算案に計上する方針だ。
安倍晋三首相は「新三本の矢」の第2の矢として「夢をつむぐ子育て支援」を掲げており、家賃を抑えることで子育て世代を支援する狙いがある。
現在の制度は、子育て世帯と親世帯が約2キロ以内のUR賃貸住宅に住む場合、新たに入居する世帯の家賃を5年間にわたって5%割引する内容。(以下、省略)
(産経ニュース 12月6日)
なぜ政府はUR都市機構の経営に口出しできるのか?
「具体的な引き上げ幅は、補正予算の配分も加味して調整」されるというのだが、なぜ政府は同機構の経営に係ることに口出しできるのか?
UR都市機構(正式名称は「独立行政法人都市再生機構」)は、国土交通省所管の「中期目標管理法人」。
独立行政法人には、「中期目標管理法人」「国立研究開発法人「行政執行法人」の3種類がある。
中期目標管理法人は、独立行政法人通則法の第2条第2項により、次のように定義されている。
公共上の事務等のうち、その特性に照らし、一定の自主性及び自律性を発揮しつつ、中期的な視点に立って執行することが求められるもの(国立研究開発法人が行うものを除く。)を国が中期的な期間について定める業務運営に関する目標を達成するための計画に基づき行うことにより、国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進することを目的とする独立行政法人として、個別法で定めるものをいう。
さらに、独立行政法人都市再生機構法の第3条には、同機構の目的が規定されている。
第3条(機構の目的)
独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、機能的な都市活動及び豊かな都市生活を営む基盤の整備が社会経済情勢の変化に対応して十分に行われていない大都市及び地域社会の中心となる都市において、市街地の整備改善及び賃貸住宅の供給の支援に関する業務を行うことにより、社会経済情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び居住環境の向上を通じてこれらの都市の再生を図るとともに、都市基盤整備公団(以下「都市公団」という。)から承継した賃貸住宅等の管理等に関する業務を行うことにより、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、もって都市の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。
以上、長々と同機構の目的(=存在意義)の法的根拠を確認してみた。
簡単に言えば、UR都市機構は、国民の需要に的確に対応したサービスの提供により、公共の利益の増進を推進することを目的に設立された半官半民組織だ。
だから、政府は同機構の経営に係ることに口出しできるのである。
URの主な資金の源泉(財投債)の一部は国民の預金
同機構の資本金1兆611億円(平成27年3月末現在)のうち、99.8%(1兆591億円)を政府が出資している(残りの0.2%は地方公共団体が出資)。
投資家等説明会資料_PDF:2,3KB(平成27年7月29日)によれば、平成27年度予算として、「都市再生勘定」の収入合計は1兆5,792億円。
その内訳をグラフ化してみた。
賃貸住宅からの収入がメインとなる「業務収入」の割合が52%で最も多い。
次に多いのが30%を占める「財政融資資金」。
「財政融資資金」の源泉は、財投債(国債)の発行などによって国が調達した資金を財源として、URに低利で融資された資金。
日銀が保有している国債の購入資金も、民間銀行が保有している国債の購入資金も、元はといえば企業や国民の預金(「国債リスク 金利が上昇するとき」森田 長太郎 著)。
だから「財政融資資金(≒企業や国民の預金)」という低利な融資を受けて賃貸住宅事業を営んでいるUR都市機構は、国民に対して、無駄な運営が行われていないかどうかキチンと管理する義務があると言える。
湾岸エリアのUR賃貸は少なくとも9棟がAirbnbに”感染”
筆者の独自調査(湾岸エリアのAirbnbマンション実態調査結果)により、湾岸エリアにあるUR賃貸物件のうち、少なくとも9棟(17戸)がAirbnbに”感染”していることが判明している。
Airbnb感染住戸のホスト(貸し手)は、日本人よりも外国人のほうが多い。
17戸のうち、日本人ホストは6名、外国人ホストは10名、国籍不明が1名。
URの賃貸借契約書によれば、住宅の全部又は一部を転貸したり、賃借権を譲渡することは禁止されている。
「財政融資資金(≒企業や国民の預金)」という低利な融資を受けて賃貸住宅事業を営んでいるUR都市機構は、転貸(又貸し)で利益を上げている住人を排除しなければならないのだが、どうなっているのか?
テロの温床にならないうちに、キチンと管理する体制を整える必要があろう。
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(本日、マンション広告なし)
【追記(2015年12月9日)】
12月8日にUR都市機構からメールを頂戴しました。
UR都市機構のAirbnb対策については、12月9日に投稿したブログ記事「これがUR都市機構のAirbnb対策なのか?」をご参照ください。